62.盗賊
家族とゆったり朝食を食べている。
「今日出発よね?」
「そうだな、帰るのは6日後か7日後になる」
「母さん。なんかあったらアカ・アオ・キー・ドリーに伝えてくれたら、ゴーレ経由で俺らにも伝わるから。あとシモン隊とキリー隊は留守番だから構ってあげてほしい」
「分かったわ。お母さんに任せなさい」
「お母様、アカ・アオ・キー・ドリーをよろしくお願い致します」
「はい。任せて!」
▽ ▽ ▽
学び舎に着くと、みんな揃っていた。
カリムさんと奥さんのマールさん、ブライズさんと奥さんのマリーさんが見送りに来ていた。
カリムさんとブライズさんが父さんの方へ来た。
「カイン、ライルくん、カシムをよろしく頼む」
「ニーナをよろしくね」
「任せてください」
「大丈夫。ヒューズさん達もいるんだから」
みんなの準備ができた。
フリードは馬車を引き、御者はゴーレ。
俺・ニーナ・カシム・父さん・リリアンさん・シモン・キリーは馬車の中。
ヒューズさん・クララさん・ノコ・グーちゃんは並走することに。
「では!出発!!」
「「行ってきます!」」
「「いってらっしゃい!」」
馬車は村を出発した。
▽ ▽ ▽
旅路は問題が起きなさすぎた。
ゴブリンが何回か出てきたが、ノコが一瞬で倒してしまった。
フリードもノコが倒すのを分かっているのか、ヒューズさんが「ゴブリン!一旦止まろう!」と言っても止まることがない。ノコは倒すと魔石をしっかり持ってきてくれた。
現在の成果
ゴブリンの魔石7個
馬車の中は暇なので、父さんは完全に寝ている。
カシムは一点集中の練習。
ニーナはリリアンさんから魔法の話を聞いている。
俺は暇すぎて、御者台に移動して風景を楽しんでいる。
みんなを馬車に乗せてスピードアップも考えてはいたが、さすがにグーちゃんは馬車に乗れない。
なのでゆっくり予定通りのスピードで進んでいる。
▽ ▽ ▽
順調に進み、夕方になった。
「もうちょっと進んでから野営するから、そのつもりでいてくれ」
「初めての野営は楽しみだ」
ヒューズさんから野営と言われワクワクしていると、
ジジジジジジジジジジジジ!!!
ノコが鳴き始めた。
「ヒューズさん。ノコが警告してるのでモンスターが出ると思います」
「さっきまでモンスター倒しまくってたのに報告するってことは大物ってことか。フリード止まってくれ。みんな警戒!」
俺らが周囲警戒をしていると、草むらから10人ほどの武器を持った人間が出てきた。
「とりあえず、全員馬車から降りてこい!女とガキと馬車の積荷を大人しく渡したら、命は助けてやる!ついでにそこの馬のモンスターも渡してもらおう」
武器を持った人間達は声を荒げていた。
「ヒューズさん、これって」
「盗賊だな、災難だな」
「災難ってどっちが?」
「ん?あっちが」
「ですよね。気をつけることは?」
「殺さないで捕まえる。カラッカの街に連れていけば金になる。後ろにいるグーちゃんと飛んでるノコに気づかないレベルだから弱いぞ。絶対に殺すな」
「了解。ゴーレはカシムとニーナに伝えて。初の人間との戦闘だよ自由にやっていいよって。ノコ虫軍には殺さないようにって伝えて」
俺がゴーレに指示を出していると、盗賊の1人が絡んできた
「おい!何喋ってんだガキ。お前はこっちこい!」
「はい」
盗賊のリーダーみたいなやつの元に向かう。
「きましたけど」
「生意気なやつだな、お前はこれから奴隷としデェェェェェー!」
喋ってる途中に、カシムの矢が盗賊のリーダーの脚に刺さった。
「カシムナイス」
「グーちゃんお願い。やりすぎないように」
グォォォォ!!!
遅れてやってきたグーちゃんは盗賊を薙ぎ倒していく。剣や斧で攻撃されるが、全く効いていない。
シュッ
シュッ
カシムも脚や腕を狙って矢を放っていく。
弓は賭博師の弓ではなく、クララから借りている弓を使っている。
「アクアボール!グーちゃん!?頭齧っちゃダメ!」
ニーナは自分の魔法では無力化することができないことがわかっているのか、足止めや目眩しにアクアボールを使っている。
「ふざけるな!!」
最初に矢が刺さったリーダー的なやつが俺に剣を振りかぶった。
「エアアーム!これ以外殺しちゃいそうな魔法しかないのは困っちゃうな」
エアアームで盗賊リーダーを掴み、木に投げ飛ばした。
木にぶつかり盗賊のリーダーは気絶した。
盗賊10人を無力化した。
7人気絶3人は脚に矢が刺さり痛みで動けなくなってる。
ジジジジジジ!
チチチチ!
シャシャシャシャ!
ノコ虫軍が10人の盗賊を糸で縛って引きずってきた。
「後ろに回り込まれてたの?」
ジジジジジジ!
「ヒューズさん、気づいてたでしょ?」
「当然だな。盗賊に襲われた場合、すでに挟まれてる可能性はあるのを覚えておけよ。なんかあったら、すぐ助けられるようにしてたが、まさかこれだけの盗賊を子供3人とテイムモンスターで倒すとはな」
「こいつらはどうすれば?」
「うーん。馬車につないで引きずっていくか!」
「それなら、俺に任せて」
盗賊の20名を1つの場所にまとめた。
「ニーナ、矢が刺った奴らを回復させて」
「はい。メディックツリー!」
地面から木が出てきて、大きな葉で怪我した盗賊を包む。
「シモン。全員の手と身体をキツく縛って」
チチ!
シモンは素早く20人を縛り上げた。
「グーちゃん。こっちおいで」
「ひぃーー!」
グーちゃんに襲われた盗賊は恐怖が染み付いているみたいだ。
「子供にやられたリーダーさん。貴方達の運命は僕が握ってます。とりあえずアジトの場所とそこに何人残っているか教えてもらえるかな?教えなくてもいいし嘘をついてもいいけど、グーちゃん!」
グォーーーー!!
グーちゃんは威嚇する。
「どうするか5秒で決めてね」
グーちゃんの圧にやられたのか、盗賊は全て話した。
リーダーだと思ってたやつはリーダーではなく、アジトにお頭と呼ばれる人物と数名が残っているようだ。
「正直に話してくれてありがとう。シモン、全員をまとめてグーちゃんに繋いで」
「「「「「「え?」」」」」」
チチチ!
「正直に話してくれたお礼です。逃げてもいいし、暴れてもいいよ。勇気があるならね」
グォーーー!!
▽ ▽ ▽
俺とヒューズさんとノコとシモンはアジトに向かっていた。
野営の準備はみんなに任せ、残りの盗賊を殲滅するつもりだ。
「ヒューズさん。盗賊にエアショットを打ちたいんですけど、ダメですかね?」
「うーん、威力は?」
「ゴブリンナイトには弾かれました。それからレベルは上がって、デビルホーンラビットの頭くらいなら飛ばせます。
身体がぐちゃぐちゃになるのでやりませんでしたが」
「なら、人に使うときは威力を弱める練習しろ。そうじゃないと毎回殺すことになるぞ?」
「それは嫌ですね。やってみます」
盗賊がアジトにしている小屋が見えてきた。
小屋の外には見張りが3人。
「ヒューズさんは危なくなるまで手を出さないでください。シモン、見張りを縛り上げて。口もね」
チチチチ!
シモンは素早く見張りを縛り上げた。
「じゃあやるか。エアショット!!」
エアショットは小屋の壁に当たり、壁を吹き飛ばした。
「ノコ!逃げ出すやつがいたら倒して!ヒューズさん!中に入りますよ」
「おまえ、あの威力は高ランク冒険者じゃないと対応できないから人に撃つなよ」
「わかりましたから、いきますよ」
空いた壁から小屋に入ると、1人以外気絶していた。
「あ?やりすぎた?」
「てめぇなにもんだ!アジトに何してくれてんだ!」
唯一気絶しなかった男が叫んだ。
「あんたがこの盗賊のお頭?さっきお仲間に襲われたから殲滅しにきたんだけど、あんた1人しかいないけど戦う?降伏する?」
「ガキが何いってんだよ!死ねぇ!!ストーンランス!!」
石の槍が現れ、飛んできた。
ギリギリ避けたが、危なかった。
「ねぇー!やるなら外でやろう。いいの?小屋壊しても?」
「ストーンランス!」
「エアショット!」
ストーンランスをエアショットが破壊した。
「話聞く気ある?よくそんなんでお頭やってられるね。ヒューズさん、こいつにエアショット撃っていい?」
「威力は押さえろよ」
「何喋ってんだ!!!ストーンランス!」
「まだ話してんだろ。エアショット!エアショット!」
1つ目がストーンランスを破壊し、2つ目が盗賊の腹部に当たる。
「やば!弱くしすぎた?」
「充分だ」
「え?」
バタン
盗賊は気絶して倒れていた。
「とりあえずやりましたね。ヒューズさん」
「俺は何もやってない。というかお前はやりすぎ!」
「ありがとうございます。小屋にあるものってどうします?」
「褒めてない。盗賊が盗んだものは、討伐者や発見者のものになる」
「じゃあ回収しますね」
小屋にあったものは
金貨40枚
大銀貨52枚
銀貨15枚
鉄の剣(低級)×5
鉄の大剣(低級)×3
鉄の槍(低級)×5
木の杖(低級)×1
鉄の鎧(低級)×2
食い散らかされた大量の食べ物
飲み散らかされた大量の酒
「ヒューズさん。盗んだものが少ない割に金持ちじゃないですか?」
「そうだな、食べ物と酒を運んでた商人が金を持ってたってことなのか?にしても儲かりすぎだな」
ジジジジジジ!
ノコの声が小屋の外から聞こえ、向かった。
そこには盗賊が1人焦げていた。
逃げた盗賊を捕まえたようだ。
「雷魔法使ったのか。あ?こいつなんか持ってる」
焦げた盗賊が持ってる袋を見ると、
そこには黄色の謎の卵が入っていた。
「ヒューズさんこれって」
「うわーめんどいことになりそうだなー」
とりあえず小屋でお金と卵と入るだけ武器と防具をマジックバッグにいれ、入らなかった分はエアアームで持とうとすると。
「ライル。まだ暗くはならないから少し周りを探索しよう。あれだけの量を運んでたんだ、商人から奪った馬車とかがあるはずだ」
ジジジジジジ!
「ノコが見つけたかもです。ノコについていきましょう」
ノコについていくと、洞窟があった。
その横に馬4匹が繋がれていて、馬車2台が置いてあった。
 




