50.新しい生活
新しい部屋で目覚めた。
カスタマイズで設置したベッドは使い心地最高だった。
窓から外を見ると、部屋の前の綺麗な芝生の上で寝転んでいるフリードとノコ虫軍のみんながいた。
庭側のドアを開けて外に出ようとするが靴がないことに気づく。
俺に気づいたフリードが俺の目の前でしゃがんだ。
俺はフリードに乗り、みんなと庭の散歩を楽しんだ。
フリードに乗ってる俺に擦り寄ってくるノコ達を見て、心配かけてしまったことを反省した。
▽ ▽ ▽
新しい庭を一通り回り、部屋に戻ってきた。
朝食を食べるために、ダイニングに向かった。
ダイニングではすでにお父さんとお母さんが朝食を食べていた。
「おはようライル。庭はどうだった?」
「庭は直接見ずに作ったから広くてびっくりした」
「それは良かった。座りなさい、ご飯用意するから」
席に座るとお父さんが口を開いた。
「ライル。こんな素敵ですごい家を作ってくれてありがとう。そして畑もありがとう」
そういうとお父さんは頭を下げた。
「気にしないで。俺がやりたくて、やったことだから」
するとお母さんが驚いたように言う。
「俺?」
「あっ、ごめんなさい。僕です」
「俺でもいいのよ。ライルの口から聞いたことなかったからびっくりしただけよ」
「ライルはこんなことができる立派な男だからな。俺の方があっているぞ。強そうだし」
「一人称が変わっただけじゃ強さは変わらないですよ」
目の前に朝食が準備された。
「2人がそういうなら、俺にします。あと、父さん母さんと呼びたいんだけど」
「いいじゃないか。好きに呼びなさい」
「そうよ、村のため私達のためにこんなことができる立派な子のお願いが聞けない母親じゃないわ」
「ありがとう母さん」
俺達は朝食を食べ進めた。
「家はどう?気になるところがあったら直すから」
「直して欲しいところなんてないわよ。トイレもすごいし、キッチンもすごい!お風呂も昨日ゴーレちゃんに使い方を教えてもらって入ってみたけど、あんなすごいの初めて入ったわ。貴族様みたいで夢みたいだったわ」
母さんは新しい家にだいぶ喜んでくれているようで、心なしかウキウキしているように見える。
「母さんに喜んでもらえて良かった。父さんは?」
「直して欲しいところなんてない。畑が広すぎるから、アカ・アオ・キー・ドリーと俺ら2人でやっていけるか不安ではあるな」
「そこは、俺も考えてたから、カラッカの街に行く前に一度ゴーレと3人で話し合おう。とりあえずお父さんが育ててた野菜はこの前収穫したんだよね?」
「アカ・アオ・キー・ドリーに手伝ってもらって、農業倉庫の植物保管箱に入れてある」
「了解。あ!母さんにもお願いしたいことがあるから詳しく決まったらまた言うね」
「わかったわ」
朝食が食べ終わり、フリード達と学び舎に向かった。
▽ ▽ ▽
厩舎から出て、一本道を進むだけで学び舎についた。
「あー快適だ!昨日頑張って良かった」
学び舎の1階の部屋で、算術の授業がすでに始まっていた。
「弟子の皆さんも、疾風の斧のメンバーもしっかり靴を脱いでいますよ」
学び舎が新しくなったから、ゴーレが自称弟子達の誘導をしてくれていたようだ。
「いろいろありがとう。心配かけてごめんね」
「心配しましたが、マスターのやりたいことを遂行するのが私の仕事ですので」
「ありがとう」
午前の授業はゆっくり見学をした。
後ろで椅子に座って見ていたら、ノコとシモンとキリーが交代で俺の膝上に座ってきた。
本当に虫軍のみんなは可愛いくて癒された。
▽ ▽ ▽
午前の授業が終わり、
自称弟子達がダイニングでお昼ご飯を食べていた。
俺はさっきまで使っていた教室でヒューズさんと話している。
「ご心配おかけして、すみません。お騒がせしました」
「心配したぞ。まあライルなら、大ごとにはならないって思っていたけどな。それで今日はどうしたんだ?」
「明日の解体のことなんですが、俺の畑の収穫も明日しなきゃいけなくて、ゴーレとフリードを広場に行かせるんで、ヒューズさんの方で指揮を取ってもらっていいですか?」
それを聞いたヒューズさんはなぜか笑い始めた。
「いや、ほんとに異常な天才だよ。なんでそんなに気を回せるんだよ。俺が狩ったことになってんだから俺が指揮するつもりでいたよ。授業が終わったらゴーレさんに相談しようと思ってたよ」
ヒューズさんは高らかに笑う。
「いや、そんな面白いですか?」
「ライルは小さいことでも想像を超えてくるんだなって思ったらなぜか笑えてきて。すまん!すまん!
まあでも気が回せるのはいいことだが、小さいことでも他の人を頼る練習はしとけよ」
「ありがとうございます」
「今日はこれからどうするんだ?」
「一応、昨日のこともあるので今日は帰ります!」
「おう!気をつけて帰れよ!」
俺は学び舎を出て、家へ向かった。
前世でも人に頼ることはできてなかったな。
ゴーレやヒューズさんにはだいぶ頼ってると思うだけど、多分頼り方が違うんだよな。
せっかく言ってもらえたし、前世の俺よりも成長したいから、意識していこ。
そう心に決めて、家へ向かった。




