396.ペガサス孵化
今日は朝からゴーレを連れてデスヘルにやってきた来た。
街の状況を見たいのと、ジェイクにドルビダ一家のことを伝えるためだ。
その前に気になっていた貢献度の順位表を見に冒険者ギルドに顔を出す。
カウンターにはデスヘルの副ギルドマスターのタリアさんとうちから派遣された従業員がバタバタ働いていた。
俺はみんなの邪魔にならないように、掲示板に張り出されている貢献度の順位表を確認する。
[1位:鬼将軍の重鎧 2位:戦場の毒花 3位:光剣の輝き 4位:雷獣の拳 5位:海獣の高波 6位:鬼将軍の強弓 7位:鬼将軍の剛角 8位:疾風の斧 9位:大獅子の牙 10位:蒼玉姫]と書かれていた。
「あれ?ジェイクのやつ、サボってんのか?」
「ちげーよ」
俺がそう呟くと、後ろからジェイクに声をかけられた。
ジェイクは何故か呆れたような表情をしている。
「でも順位落ちてんじゃん」
「いや、おかしいのは最近のお前らだぞ?ここ数日、今までよりもモンスターの討伐をしてるんだよ。それに珍しく【雷獣の拳】と【疾風の斧】もデスヘルに来てるし。絶対お前が焚き付けただろ?」
「そんなことはしてないけど」
俺が何か焚き付けるようなことを言ったか考えていると、ゴーレが俺に耳打ちをした。
「ペパイドとの戦闘で【鬼将軍の剛角】【鬼将軍の強弓】【鬼将軍の重鎧】【海獣の高波】【戦場の毒花】はあまり活躍が出来ず落ち込んでいたようです。【雷獣の拳】もガッツさん以外のお2人があまり活躍できなかったようです」
「なるほどね」
弟子達の卒業試験を見た後に、ペパイドとの戦闘でうまくいかなかったら悔しくもなる。
「自分だけ納得したような顔してんなよ」
ゴーレのおかげで理由が分かり満足そうな俺を見てジェイクはイラついているようだ。
俺はそれを無視して話をする。
「ジェイクに頼みたいことがあってそれを伝えに来た。拒否権はないからね」
「拒否なんかしねえよ。それで頼みたいことってなんだよ?」
俺はジェイクに王都の学園を卒業した話、卒業試験を邪魔してきたドルビダ一家の話をした。
「それでその傭兵がどうしたんだよ」
「いろいろあってデスヘルで冒険者として頑張ってもらうことになった。冒険者経験が少ないから助けてあげて。ちなみにドルビダとその奥さんはうちの弟子達よりも多分強い」
「は?化け物がデスヘルに来るから手綱を握れってことか?」
「うーん。牙は完全にへし折ってるから変なことはしないかな。不慣れだから面倒見ろってこと。俺に牙を折られた先輩として」
「あー何年前の話だよ」
ジェイクは気まずそうに言った。
「ところで合成魔法の研究は進んでる?」
「全然だ」
「そうだろうな。俺なんか合成魔法の研究のことを忘れてた」
「お前ってやつは」
ジェイクは冗談っぽく怒っていた。
「あと危険地域に変なやつが居るから気をつけるようにデスヘルの冒険者に伝えて」
「変なやつ?」
「ああ。普通に俺よりも強い奴。危険だから見たことのない人間を危険地域で見かけたら警戒するように」
「お前よりも強いのか…」
「たぶんテイムモンスターと協力してもギリギリ勝てないかも」
「そんなにか?」
「うん」
「わかった」
ジェイドは驚いていたが俺の目を見て頷いた。
あのサンタがデスヘルに来るかは分かんないけど、警戒しておいて損はないだろう。
それからジェイクと鬼将軍の調理場に移動し、軽食を食べながら話した。
「は?お前達はどんな奴と戦ってんだよ」
卒業試験でのペパイドとの戦いについてを聞いたジェイクは驚いていた。
神の加護については話さなかったが、それでもジェイクにとってはインパクトがある話みたいだ。
「それで4人がSランクと英雄の称号を与えられるのか…」
ジェイクは少し悔しそうにしている。
やはり英雄という言葉にはすこし憧れや執着のようなものがあるみたいだ。
ジェイクは第一印象が本当にひどかったが、反省してライル商会に所属させてもいいと何回か思ったこともある。
でも所属させないほうが面白いから所属させてない。
それにジェイクの中には少なからずプライドがまだ残っている。
俺に商会に入れてほしいと頼むくらいの状況まで待ってもいいだろう。
反省して変われたんだ。
変化を求めるためにすべき行動を選ぶことはできるだろう。
俺は求められたときに手を掴んでやるだけでいい。
「あっ!そうだ」
ジェイクは何かを思い出したように口を開いた。
「ん?」
「貢献度順位についてだけど、【大獅子の牙】に家をあげることできるか?前に王都から帰っても上位にいたらって言ってただろ?」
【大獅子の牙】は悪い頃のジェイクに憧れて、俺達に返り討ちになった冒険者パーティ。
ジェイクと同じように更生した見たいだし、うちの冒険者達がいるから順位は下がったが9位なら家をあげてもいいだろう。
「いいよ。手続きは…」
「大丈夫です。ゴーレムを向かわせました」
「ありがとう」
さすがゴーレだ。
「あいつらランクが低くて大物は討伐できてないけど、実力に見合ったモンスターをかなりの数討伐して頑張ってんだ。家のために頑張ってるパーティが結構いるから、【大獅子の牙】が家をもらえたらみんなのやる気にもなる」
ジェイクは自分のことのように嬉しそうに話していた。
「最近は10位の【蒼玉姫】っていう女性冒険者も頑張ってるし、順位には入ってないけど他領から来た冒険者もかなりいるぞ」
「デスヘルの冒険者とちゃんと関わってるんだな」
「まあな。一応Bランクだからな。他の冒険者のお手本になることがお前との約束だからな」
「じゃあデスヘルでバカな冒険者が居たらジェイクの責任ってことで」
「おい!それは違うだろ」
「半分冗談。半分本気」
「はあ?」
ジェイクは少し不服そうな表情をしていた。
▽ ▽ ▽
俺はジェイクと別れてヤルクに帰ってきた。
ヤルクでは弟子達が模擬戦を行っていた。
ゴーレの話の通り、悔しい思いをしてる人が多いのだろう。
あの日の闘技場ではほぼ全滅。
加護や神様のおまけが無ければ死者も出ていたかもしれない。
それが悔しいのだろう。
「2年の間にみんなも成長してるみたいだし。ペパイドが異常だっただけだと思うんだけどな」
俺はみんなの訓練を見ながらのんびりしてると、ゴーレが口を開く。
「マスター」
「ん?」
「そろそろ孵化しそうだと連絡が来ました」
「孵化?あ!ペガサス?」
「はい」
「セフィーナさんには?」
「既に鶏舎に向かってもらっております」
「さすがゴーレ」
俺とゴーレも鶏舎に向かった。
鶏舎に入ると、セフィーナさんの横に小さくて綺麗なペガサスが居た。
ポニー時代のフリードと同じ大きさだ。
小柄なセフィーナさんでも乗ることは難しそうだ。
「セフィーナさん」
「ライル様。孵化しました!どうです?可愛らしいでしょ?」
セフィーナさんは嬉しそうに報告をしてくれる。
「『テイム』はしてますか?」
「あ!懐いてくれているので忘れていました」
セフィーナさんはペガサスをテイムした。
「これはペガサスの子供?」
「いえ。ベビーペガサスという種類みたいです」
「なるほど。じゃあ乗ってどこかに行くにはもう少し時間が掛かるかもですね」
「はい!でも可愛いのでこのままでも」
セフィーナさんはベビーペガサスを撫でながらニコニコしていた。
「そういえばライル様にお伝えしたいことが」
「え?」
「国王様達がカラッカに到着したみたいです」
「うわ。早いな」
「今回は国王様もいらっしゃいますので特別な馬車で来たのでしょう。私はカラッカでお父様と共に対応し、国王様達に同行してヤルクに馬車で向かいます」
「わかりました。俺の方でやっておくことあります?」
「では広場に舞台を作っていただけますか?」
「広場に舞台?」
「英雄の称号を渡す際に授与式をすると思うんです」
「なるほど」
「授与式はヤルクに来ている人々に見て頂きたいんです。街の半分で新たに暮らそうとしている人も多く居ます。ヤルクは4人の英雄に守られているという印象を残したいんです」
「なんとなくセフィーナさんの考えは理解しました」
「よろしくお願いします。私はペティちゃんとカラッカに向かいます」
ベビーペガサスはペティという名前になったようだ。
俺はトサカにお礼を言い、鶏舎を後にした。
▽ ▽ ▽
弟子達の模擬戦を見に戻ったら、ゴトフが来ていた。
「あれ?どうしたの?」
「遊びに来ただけだよ」
「参加は?」
「あの中に入れと?」
ゴトフは呆れたような顔をした。
「そうだ。イタロの国について教えてよ。注意点とかさ」
「あーサオラル共和国?」
「確かそんな名前」
「注意点かー」
ゴトフは自身も思い出しながらサオラル共和国について教えてくれた。
サオラル共和国。
王政ではなく、選挙によって元首が決まる。
サオラル共和国は大昔にあった10国が合併して出来た国。
国の土地は10個の領になりに、元の国の血筋の人間が領主として治めている。
元首は現元首と領主9人から選挙で選ばれ、任期は5年。
元首によって都が変わるのでワイアット王国の王都のように特別栄えている街はない。
だけどマルティル家は4期連続で元首をしているため、他の領よりも少し栄えている。
現首都はマルティル領。
ワイアット王国に面している領の1つ。
イタロの家族には当然失礼な態度はダメ。
それに各領主も丁重に扱わないとならない。
イタロが元首の息子だとしても、マルティル家と関係が良くない家もあるから。
「なるほど」
「本当にわかった?」
「わかってるよ」
ゴトフは心配そうにしていた。
「そういえば国王がそろそろ来るよ」
「知ってるよ。父上も行きたがってた」
「あー来なくてよかったかも。ゴトフの父さんって圧凄いんだよなー」
「ははは。息子でもそう思うよ」
ゴトフは苦笑いをした。




