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380.卒業試験【準決勝①】

準々決勝が全て終わった。

カシムとチャールズ兄の復帰は難しいため、俺は不戦勝という形になるらしい。

ほっとしたが、あの気合に答えてあげられないのが申し訳なかった。


男子はルークとジョシュと俺、女子はベラとシャルと幼女魔法使いとニーナが準決勝進出だ。


試合はすぐに始まるみたいだ。


ステージにはベラとシャルがすでにいた。

審判が掛け声をかけた。


▽ ▽ ▽


「ベラごめんね」

「え?」

「決勝まで体力を残したいんだ」

「それは私もです」

「残念だけど、ベラは私と相性が悪いよ」

「関係ないです。炎蝶!」

炎の蝶が私に向かってくる。


「ダークホール!」

炎の蝶はダークホールに吸い込まれる。

ベラはアメリアの試合をちゃんと見ていたようだ。

ダークホールの出口を探してる。

残念、今回はないんだ。


私はダークホールと共にベラに近づき、槍を突き刺す。

槍はベラの身体を貫通するが、当たった感覚がない。

攻撃したのはベラの『幻分身』だったみたい。


「騙されましたね」

後ろを向くと、ベラの横には大量の炎の狼がいた。

「炎狼!」

一斉に炎狼が向かってくる。

私は逃げずに向かって行く。


炎狼を避けながら進む。

ダークホールは炎狼を飲み込んでいく。

「うっぷ」

少し吐き気がしたがまだ平気だ。


「それが邪魔ですね。土人形」

ベラの横に土人形が現れる。

ベラにそっくりなせいで、本物がどっちかわからない。

『幻分身』と違って『土人形』は攻撃をしてくるから厄介だ。


2人のベラは鉄扇を構えて向かってくる。


「さすがに接近戦じゃ勝てないと思うよ」

「「そうですか?」」

声まで出せるのか。


私は片方のベラに槍を突き刺す。

その瞬間、ベラの身体が破裂して土の槍が飛び出した。

「くっ!」

さすがにダークホールが飲み込むことはできなかった。


「これなら当たるみたいですね。土分身!土分身!土分身!土分身!土分身!土分身!」

ベラは分身を大量に出した。


本当になんでみんなライルみたいな戦い方なんだよ。


距離を置いて攻撃しようとするが、ベラ達はものすごい勢いで詰めてくる。

「なんだよ!」

槍を投げて、分身を破壊していくが間に合わない。


「「「「「「「土大蛇」」」」」」」

「嘘だよね」


分身達も『魔術』を発動した。

大きな土の大蛇が何匹も私に向かってくる。


「もう。ダークホール!」

私はダークホールを追加して、土大蛇を飲み込んだ。

「うっぷ。もうだめ」


ダークホールは基本的にものを入れる空間ではない。

アメリアとの試合の時のように、通過する空間。

ものを入れ続けていると、身体を不快感が襲う。


「「「「「「飛雷槍」」」」」」」

「もう。ほんとに・・・」

ダークホールですべてを飲み込む。


「これで終わってくれないと困るよ。うっぷ」

私はダークホールの出口を召喚した。

今まで飲み込んでいた魔術が一斉にベラに向かって行った。


ボゴン!


砂埃が舞う。

「これで倒れてよ。うっぷ」

砂埃が晴れると、ベラがボロボロの状態で立っていた。

地面が濡れているから、水の魔術で防御したんだろう。


「シャル。す、凄いですね」

「ははは。ベラがそれ言う?」

「でも、負けませんよ」

「出来ればやめてほしいんだけど」

「獣化!」

ベラは獣化し、さっきよりも何倍も大きな炎狼が2匹いた。


「何それ」

「これが私の全力です」

本当にみんなライルみたい。


「決勝に残したかったんだけど、私もお兄ちゃんとチャールズ兄の試合に影響されたのかな?」

私は深く息を吐いた。


「エレキランス!エレキランス!エレキランス!エレキランス!エレキランス!エレキランス!エレキランス!」

私の頭上には雷の槍が浮いている。

「ダークランス!ダークランス!ダークランス!ダークランス!ダークランス!ダークランス!ダークランス!」

そして黒い槍が頭上に浮いた。

「これが私の全力かな」


頭が痛い。

こんなにきついんだ。

やっぱり私もライルの弟子なんだな。


「行きなさい炎狼!」

「エクスプロードスティック!」

私はベラに向かって全力で槍を投げ、エレキランスとダークランスも飛んで行った。


ドゴーン!!!!


大きな爆音と爆風が起きた。


立っているのもやっとな私は爆風で倒れ込んだ。

顔が濡れてる。

血だ。

鼻血が出ていた。

「はは。やっぱりバカなところも師匠譲りかー」


砂埃が晴れると、槍が刺さって倒れているベラが居た。


私は何とか勝利することができたみたいだ。


▽ ▽ ▽


倒れているベラをリリアンさんが抱え、クララさんがシャルに肩を貸してあげた。

だからなんで俺のワープより速いんだよこの人達は。


2人の試合も凄かった。

シャルがあのスタイルで戦うなら、身体に影響が少ないやり方を考えてあげないといけないな。


みんな俺の悪い所ばっかり真似しやがって。


そんなことを考えていると、ステージにはルークとジョシュが居た。


▽ ▽ ▽


「ルーク」

「どうしたの?」

「様子見なんかするつもりはないよ。だから最初から本気で行かせてほしい」

「うん。待っていればいい?」

「うん。ありがとう」


ルークに勝てないのはわかってる。

全力を出すことは今までなかった。だから全力を出したい。

ルークに通じるか知りたい。

そしてライル様とも戦いたい。


審判が掛け声をかけた。


「岩山嵐の皮膚!」

俺の背中が変化し、分厚い皮膚と大量の棘が生えた。

「雷獅子の鬣!」

顔の周りに雷を帯びた鬣が生える。

「氷狼王の牙!」

牙が鋭くなり、吐く息が冷たい。

「暴馬の脚!」

脚が太くなって、筋肉質になる。

「獣化!」

身体が大きくなる。


これが何分持つかわかんないけど、やるしかない。


「その姿がジョシュの本気?」

「うん。待ってくれてありがとう」

「じゃあ行くよ」

ルークはそういうと、ものすごい速さで斬りつけてくる。


俺は腕でそれを防ぐ。

痛みはあるけど、傷はない。

いける。


「ガルルルル!!!!」

俺は四足歩行で地面を蹴り、ルークに飛び掛かる。

爪を突き立てるが、剣で防がれる。


体勢を変えて、背を向けてルークを蹴り上げる。

「ぐっ!」

ルークは宙に浮いた。

俺はすぐに跳び掛かり、噛みつく。


「がああああ!」

噛みついた腕はゆっくりと凍っていく。

そして雷の鬣がルークを襲う。

「だあああああ!」

ルークは拳を握り、何度も顔を殴る。

俺は痛みで噛む力を緩めてしまった。


俺から離れたルークはフラフラだった。

このままいけば勝てるかもしれない。


▽ ▽ ▽


「くっ。強いな」

噛まれた痛みを我慢しながら距離をとった。


背後を斬りつけれる『虚剣』もあの皮膚には効かなそうだな。

虚をつくスキルはあるけど、正面で戦わないといけないものばかりだ。

『伸剣』『鞭剣』『霊剣』『飛剣』『幻影剣』も乱戦で強いスキル。


みんなみたいにスキルを上手く使うのが苦手なのは知っていた。

最近はライドンと一緒に戦うことを意識していたのも原因だ。


みんなに僕が勝てること。

数で押しつぶすこともできない、予想外な戦い方もできない。

僕がライルから学んだのは、地獄のような特訓と努力。

ひたすらやり続けること。

カシムやチャールズ兄やシャルの戦いを見て、影響されてたみたいだ。

僕は僕の戦い方でいい。


僕はジョシュに剣を構えた。


ジョシュは再び飛び掛かってくる。

僕は攻撃を避け、胴を斬りつける。


「がああああ!」

ジョシュの胴には傷がついて血が出ていた。


出来る。

集中すれば斬れないものはない。

あれだけ特訓したんだ。


「ジョシュ。ごめんね。ちゃんと本気出すね」

「ガラルルルルルル!」

ジョシュは再び噛みつこうと飛びついてくる。


「伸剣!」

僕はそれに合わせて剣を突き立てる。

剣は伸び、ジョシュの脇腹を貫通した。

「ガアアアアアア!」

ジョシュは叫びながら、暴れている。


そのまま持ち上げて地面に叩きつけた。

ジョシュは気絶し、身体はどんどん小さくなっていく。


ギリギリだけど僕は勝つことができたみたいだ。

ライル相手はどうしようかな。




▽ ▽ ▽




「なんでだ!あの使用人も裏切りやがって!!」

私は黄盾騎士団に追われている。


先ほどまで卒業試験を見ていたが、急に捕縛をしようとするので逃げ出した。

ドラゴンシュガーを粉末にして、撒き散らしたおかげだ。


全ての計画が失敗した。

雇った傭兵も1人以外全員負けやがって。

女子の試合で勝ち残っても意味がない。

ライルを潰せないだろうが。


スライムも奪えない。

襲わせた冒険者は捕まる。

バカ2人もライルに負ける。


私が何をしたんだ。


逃げる?

いや、私がライルを殺す?


手持ちにドラゴンリリーの種はある。

これを食べれば倒せるのでは?

気に食わないが、あいつらが作った中毒を治す薬もある。



「あれ?この人ですか」

私は急に声がして振り向いた。

そこには見たことのない変な服装の男が2人。


「何者だ!」

「気にしなくていいですよ」

男の1人は急に私の目の前に移動し、私を掴んだ。


「ぐっ!な、なにをする」

「復讐したいんですよね?暴れたいんですよね?」

「な、なんなんだ!」

男は私が持っていたドラゴンリリーの種を口に大量に入れてきた。


「さあ。私を信じなさい。あなたは自由に好きなことができますよ」

「あいをうううう!」

男は魔石のようなものを手に取り、私の額に手を添えた。


「ガアガガガああでさだああ」

私の頭によくわからないものが流れ込んでくる。


「この種だけじゃ足りないと思うので」

男は私に何かを刺した。

全身に何かが広がっている感覚がする。

ダメだ。おかしい。


男は私の顎押さえる。

「ちゃんと食べるんですよ。そうしたら救われますからね。私を信じなさい」

男の目を見ていると、信じてもいいと思い始めた。

この人は私のために。

私を自由に。


私は男が言うようにドラゴンリリーの種を飲み込んだ。


「いい子だ。私を信じなさい。さすれば救われる」

「「「は、はああい。しっんじいます」」」

私はこの人を信じる。

そして自由に。


「よし。行くぞ」

「はい。選択、送信」

男達は目の前から消えた。


もしかしたらあの人は神様。

私を救いに。

「「「あがががが。ラ、ライルゥをごロズ。じゆううう!」」」




▽ ▽ ▽




俺はなぜかヤイダラール先生とオステオさんに呼ばれた。


「すまない」

「何がです?」

「ドーグラン・ペパイドを逃がした」

「は?」

オステオさんは深々と頭を下げている。


「ドラゴンシュガーの粉末を騎士が吸い込んで錯乱している隙に逃げられた」

「今も追っているんですよね」

「ああ。捜索中だ」

本当にめんどくさい。

この件は早く終わらせたい。


「卒業試験が終わったら俺達も手伝います」

「すまない」

オステオさんは再び頭を下げた。


「ライル」

「はい」

「卒業試験についてだが」

「はい。なんかありましたか?」

「ライルの次の試合が不戦勝になっただろ?」

「そうですね」

「対戦相手に立候補した者がいてだな」

「は?」

ヤイダラール先生は何を言っているんだ?


「それが卒業試験に紛れ込んでいた傭兵集団【ドルビダ一家】のリーダーが自分達の尊厳のために戦わせてほしいと」

「は?」

「一応、彼らはペパイドに騙されてたんだ」

「関係あります?」

「卒業試験後にどんな罰でも命令でも受ける、しかし傭兵集団として学生達に負けて終われないから戦わせてほしいと言っているんだ」

「なんでその話が俺のところまでくるんですか?俺の所に来る前に却下される話でしょ」

「いや国王様に確認したんだが」

「ああ」

最悪だ。


「ライルの試合を見たいと。ドルビダが強いことは有名で、どこまでやれるか見たいそうだ」

「負けたら決勝はどうなるんですか?」

「ルークの優勝だ」

「うーん」


俺は少し悩んだが承諾した。

ベスト4に残ったので卒業はできる。


まあそのドルビダに負けるつもりはない。

ルークも俺と戦いたいだろう。


さっきの試合でルークもだいぶ消費しただろう。

同じ状況を作るためだと思って戦うことにした。


ドルビダか。

めんどくさいことした報いは受けさせる。



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