379.卒業試験【準々決勝④】
次の試合はニーナとララだ。
ニーナの強さは前の試合で見たが、がっつり前線で戦うララとは相性が悪い気がする。
2人はステージに上がり、審判が掛け声をかけた。
▽ ▽ ▽
私はすぐに『空蹴兎』で跳び上がる。
「やっぱり」
私が居たところにはアイアンソーンが突っ込んできていた。
ニーナ、私は負けないから。
着地するとすぐに『斬空兎』を使って、ニーナが召喚したバタリーキューカンバーを破壊する。
私は知っている。
鬼将軍の剱とアメリアはライル様に認めてもらえる場所だといつもの優しさが全くなくなる。
ルークもアメリアも恐ろしいくらい強かった。
多分、鋭牙でまともに張り合えるのはベラだけだと思ってるよね。
私もそう思う。
だけど負けないよ。
私は宙を蹴ってニーナとの距離をつめて、岩食の牙槌で攻撃を仕掛ける。
ニーナの杖に防がれるけど、わかっていた。
体勢を変えて、蹴りを入れる。
「ぐ!」
スマッシュバインに脚を叩き落とされた。
ニーナはまっすぐ私を見ている。
ヤルクに元からいた人達はライル様のようになる。
ライル様に助けてもらった元奴隷達はみんなそう言ってる。
そして自分達もライル様に影響されて変わってきていることに気付いて、頑張ろうと思える。
仲間の時は安心できたのに。
敵対するとこんなに怖いんだ。
私は痛む脚を無視して、『暴兎』を使って蹴りをニーナに食らわせようとする。
スマッシュバインは次々に生えてきて、私の攻撃を弾き落とす。
「ぐ!」
脚鎧を見ると血がにじんでいた。
このままだと何もできなく終わっちゃう。
「獣化」
私は『獣化』をし、スマッシュバインを蹴りで破壊していく。
獣化状態の脚力ならスマッシュバインを壊せる。
「ぎゃおおおおお!」
私は叫びながらすべてのスマッシュバインを破壊した。
これですぐには召喚できないはず。
私は走り回っていると転んでしまった。
「あれ?」
脚に力が入らない。
「え?」
地面を見ると草が敷き詰められている。
これはニーナが召喚したもの?
「ララ。もう動かない方がいいよ」
「これは?」
「『バンパイアグラス』だよ。痛みを感じさせずに血を吸って成長するの」
「はは。いつから?」
「最初からだよ」
脚鎧の血はスマッシュバインではなかったんだ。
「やっぱりまだ勝てないね。降参します。ネネの分はお願い」
「うん。そのつもりだから」
私は降参を宣言した。
▽ ▽ ▽
「まじか」
ニーナの強さにも驚いたけど、ララは蹴りで斬撃飛ばしたし宙を走った?
蹴り特化のエクストラスキルってのは知ってるけど。
まじか。
俺はこの卒業試験で驚きまくりだった。
次の試合はカシムとチャールズ兄。
チャールズ兄は昨日から好戦的だ。
あんな姿見たことない。
カシムもそれを感じているせいか、ものすごく集中していた。
「準々決勝最後の試合か。勝ったほうと俺が戦うのか」
本当にどっちとも戦いたくない。
2人はステージに上がる。
今までで一番空気が重い。
審判がやってきて、掛け声をかけた。
▽ ▽ ▽
審判の掛け声と同時に、俺は距離を取る。
その瞬間、爆音が鳴り響き舞台が大きく破壊されていた。
そして壊れた舞台の中心にはチャールズ兄がたたずんでいた。
これはチャールズ兄の『メテオアタック』だ。
1日2回のスキルだったはず。
これが直撃したらまずい。
そんなことを考えていると、頬に激痛が走る。
「ぐっあ!」
チャールズ兄のカルサイトメイスで俺は殴られて、吹き飛ばされた。
「マジかよ。いきなりすぎるだろ」
チャールズ兄は大盾を持ったまま、ものすごい速さで俺に向かってくる。
敵視点だとこんな速さで詰めてくるのかよ。
俺は立ち上がって、矢を放つ。
矢は3本になってチャールズ兄に向かって行くが、すべてメイスで叩き潰された。
「おいおい」
そのまま距離を詰められて大楯で殴られ、俺はまた吹き飛んだ。
「カシム!舐めてんのか。そんな攻撃が俺に届くと思うなああああ!!!!!」
チャールズ兄の威圧に身体がこわばる。
「お前達をいつも守っている俺の防御力を舐めんな!!」
今日のチャールズ兄はモンスターの群れよりも迫力がある。
俺は移動をしながら矢を放つが、すべてメイスで叩き落とされる。
舞台がゆっくりだけど修復されている。
「スティッキーアロー!スティッキーアロー!」
動きを止めるために、チャールズ兄の足元にスティッキーアローを放つ。
矢は粘着性のある液体になり、チャールズ兄の動きを止めた。
俺はひたすら矢を放つ。
「そんな攻撃で倒せるわけがないだろおお!」
動けないチャールズ兄はメイスで弾く。
スティッキーアローの効果はまだあるはずなのに、少しだけ脚が上がっている気がする。
どれだけバカ力なんだよ。
『メテオアタック』は師匠との戦いにも使いたいはず。
だからこの試合中に『メテオアタック』の警戒はしなくていい。
だとしてもチャールズ兄に距離を詰められたら終わる。
俺はチャールズ兄の背後に移動する。
「ごめん。動けないのに背後から攻撃をしちゃって。インクリーシングアロー!」
矢は3本になり、チャールズ兄の背中に向かって行く。
「舐めるな!!」
チャールズ兄は反撃の大楯を背中に持っていく。
矢は反撃の大楯に当たり、火の矢になって跳ね返ってきた。
「嘘だろ。無茶苦茶すぎる」
これは戦い方を考えないとダメだ。
「レインアロー!レインアロー!レインアロー!」
矢を空に放ち、ミスリルのナイフを持つ。
それを見たチャールズ兄はニヤッとした。
矢の雨が降る中を矢を避けながらチャールズ兄に向かって行く。
チャールズ兄は反撃の大楯を頭の上で持っている。
身体がガラ空きだ。
俺は鎧の隙間にナイフを差し込む。
「ぐっ!くらえ!」
チャールズ兄は顔をゆがめながら、大楯を頭上から振り降ろした。
俺はギリギリで避け、背後に回って弓を構える。
「インクリーシングアロー!」
シュッ!
関節部分に矢を3本放つ。
「グググ!」
一本が麻痺矢になっていたみたいだ。
俺は距離をとる。
チャールズ兄は肩と背中の矢を抜いている。
接近戦の時にレインアローが何本か当たっていたみたいだ。
よし。もう一回だ。
「は?」
またレインアローを放とうとしたが、チャールズ兄は目の前まで来ていた。
スティッキーアローが消えたんだ。
俺はメイスで殴り飛ばされる。
「カシム!!」
何だよ。
麻痺矢が効いてないのかよ。
血だらけのチャールズ兄がどんどん詰め寄ってくる。
矢を放つが、チャールズ兄は避けやしない。
俺の手に力が入ってなくて矢の威力が弱いのもあるが、チャールズ兄もギリギリみたいだ。
どうにか距離を取ろうとするが、チャールズ兄の攻撃を避けられない。
「ぐっ!」
「がっ!」
ダメだ。
フラフラするし、もう弓が引けない。
俺は負けを覚悟した。
脚にも力が入らず倒れそうになった瞬間、チャールズ兄が倒れていた。
顔が青白くなり、口から泡を吹いていた。
朦朧とする意識の中、矢が毒矢に変わったことに気付いた。
「ラ、し、師匠!!ど、毒矢になってたみたい!!」
俺は最後の力振り絞って叫び、意識が無くなった。
▽ ▽ ▽
カシムの叫び声が聞こえた。
「ワープ!」
俺はすぐにステージにワープすると、ヒューズさんとガッツさんが既にステージにいた。
なんで俺のワープより早いんだよ。
「ライル。2人は俺達が運ぶから、医療班、それにポーションの準備だ!」
「はい。ワープ!」
俺はすぐにゴーレに指示を出して、医務室へ向かった。
ベッドには2人が横たわっている。
カシムは全身がボロボロ。
チャールズ兄はカシムの矢が毒矢になっていたみたいで、毒のせいで意識不明。
「チャールズに『毒耐性』が無かったら死んでたかもしれないな」
「え?」
ヒューズさん曰く、チャールズ兄は俺が眠っていた2年で新食材を探すために毒性の物を食べて数回倒れたらしい。
何をしてるんだ。
まあそのおかげで命が助かった。
賭博師の弓は恐ろしいな。
2人は命の危険はないようだが、意識を取り戻すには少し時間が掛かるそうだ。




