38.謝罪と交渉
俺は疾風の斧のメンバーの目の前で土下座をしている。
ゴーレも真似をして、土下座をしている。
「本当にすみませんでしたーーーーー」
ヒューズさんは、唖然としている。
「ライル、どういうことだ?俺達はお前に感謝することはあっても、謝罪されることなんてないぞ」
「本当にすみませんでした!!!!」
何を言われても、俺は謝り続けた。
「ゴーレさん。一緒に頭下げてるけど、謝ってる理由に心当たりはある?」
リリアンさんがゴーレに問いかける。
「はい、ございます。ですがマスターの口から言っていただかないと、疾風の斧の皆さんに謝罪の心が伝わらないと思いますので、ここは口を閉ざさせていただきます」
「ということだぞ、ライル」
俺は決心して説明し始めた。
「まず皆さんの言っていたスライムの異常発生は起きていました」
「起きていた?」
「スライム500匹以上、スライムより大きいスライム1匹をすでに僕が討伐してます」
疾風の斧はきょとんとしている。
「え?」
「1人でか?」
「スライムは僕とフリードとノコとゴーレで倒しました。500匹以降はあまり覚えていません。
大きいスライムは、ゴーレが戦っていたのですが武器が使い物にならなくなったので僕が倒しました」
疾風の斧はまだきょとんとしている。
「にわかに信じられないんだけど、ライルくんはその大きいスライムの特徴を覚えてる?」
「はい。最初は森の中の池にいました。そして、どれだけ早く攻撃しても身体の再生が早く、鉄の武器が溶けるほどの酸のようなもので身体ができていました」
「ビッグスライムね、それは。上位種の中でも1番弱いけど、子供が倒せるモンスターじゃないわ。一体どうやって倒したの?証拠ある?」
バッグからビッグスライムの魔石を取り出した。
「え!これ、スライムの魔石じゃないよね、このサイズだと」
「そうね、500匹近いスライムの魔石はどうしたの?」
「僕のエクストラスキルは、魔石を使うことでやれることが増える性質があり、それに使いました」
「昨日のことを考えると信じれちゃうんだけど、ヒューズはどう?」
ヒューズさんが口を開いた。
「ライル、その再生力が高いビッグスライムをどうやって倒した?」
「魔石を引っこ抜きました」
「酸の身体に手を突っ込んだのか?」
「・・・見せます。エアアーム!」
リリアンさんは驚いていた。
魔法を使ったのはわかったみたいだったが、見たことない魔法だったようだ。
「僕は通常スキルで『風魔法』を取得してます」
「『テイム』も持ってるってことは、2つも持ってるの?すごーい!」
「クララ、今の時代2つや3つなんて冒険者なら持ってる奴も多いだろ。そこじゃない。5歳のこいつが持ってるのがすごいんだよ」
「はぁー私は信じるわ」
「私も!」
「俺もだ。嘘つくような奴じゃない!と俺は思っている」
疾風の斧に信じてもらった俺は再び頭を深く下げた。
「ありがとうございます、そしてもう一つ話さなくてはいけないことがありまして」
「マスター。アカに持って来てもらいました」
アカが家に入って来た。手には所々溶けている大剣。
「先ほど話した、ビッグスライムとの戦いでゴーレが使った武器です」
ヒューズさんが大剣を受け取った。
「これってそうだよな?」
「そうね、私が考えてるものなら」
「もしかしてゴブリンの集落もお前が討伐して、このゴブリンナイトも倒したのか?」
「ゴブリンナイトという名前かはわかりませんが、
その大剣を持ったがたいのでかいゴブリンを倒しました。申し訳ありません」
「ちなみに証拠はあるの?」
「持って来させております」
アオ・キー・ドリーの手にはゴブリンの武器を大量に持っていた。
ゴブリンの棍棒 29本
ゴブリンの毒 4瓶
ゴブリンメイジの杖 6本
ゴブリンエリートの斧 1本
俺はバッグから
ゴブリンメイジの魔石 5個
ゴブリンエリートの魔石 1個
ゴブリンナイトの魔石 1個
を出した。
「ゴブリンメイジの魔石は1つスキルに使用したので1個足らなくなっております。本当に申し訳ありませんでした」
俺は地面に頭をこすりつけながら謝り続けた。
「はぁーお前ってやつは本当すげぇな。もう謝るな」
「そうよ。すごいことをしたよ。この歳でこの功績は英雄に担ぎ上げられてもおかしくないわ」
「でもリーダー、私達の依頼はどうするの?」
「これは流石に、手柄を横取りすることはできないだろ」
「そうね、流石にね」
俺としても、討伐したことを大々的にされるのは困る。
英雄になることより、この村の発展の方が大事だ。
俺は疾風の斧に交渉を持ちかけることにした。
「ヒューズさん。ご相談が!」
「もうその話し方やめろ。今まで通りで」
「わかりました。僕は討伐したことが大々的に広まるのが嫌です。エクストラスキルが特殊なのであまり目立ちたくない、それに僕はまだ5歳で貧乏農家の息子だ。誰かに目をつけられたら逃げることはできない。なので、ここにある討伐証明を全部渡します。スライムもゴブリンも疾風の斧が倒したことにしてください」
「いやさすがに」
「それのお礼として疾風の斧が村に来た時用の家を作ります」
「うーん。俺らが得しすぎじゃないか?」
「それだったら依頼料の半分の金貨5枚と、依頼をする予定だった7日間はこの村にいていろんなことを教えてください。それなら得しすぎってことにはならないと思います。」
ヒューズさんは驚いていた。
「それじゃあ!だめだ!何もしないで金も実績をもらえるなんて最高だが、こっちの利がまだ多すぎる」
「わかりました、なら10日後にカラッカの街に魔力適性検査に行く予定でした。その行き帰りの護衛とカラッカの町の案内をお願いします」
ヒューズさんは少し悩んでいたが、納得したようだ。
「わかった。その条件でいいよ。二人はどうだ?」
「まだ利が多い気がするけど、ライルくんの謝罪の気持ちということで」
「リーダーが決めたならいいよー」
「よかったー」
俺は疾風の斧を納得させれて安堵した。
▽ ▽ ▽
「それにしてもライルは強いんだな」
「そんなことないですよ」
「まあ、俺らならビッグスライム5匹と1人で戦っても勝てる」
「それなら僕も勝てる」
「ゴブリンナイト5体でも余裕だな」
「それは無理かも。フリードと2対1でギリギリでした」
「そうだろそうだろ!」
なぜかヒューズさんは嬉しそうに俺の背中を叩く。
 




