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376.卒業試験【準々決勝①】

昨日父さんの所に騎士団が来た。

やはり依頼内容は騙されていたらしい。


父さんは騎士団長から詳しい話を聞いたみたいだ。


「今日の試合は昨日と同じように全力でやりなさい」

「「え!」」

俺と母さんは依頼が中止ではないことに驚いた。


「騎士団は犯人を捕まえるために昨日と変わりなく動いてほしいみたいだ」

なぜか父さんはイライラしている。


「あの子供達の担任に言われたんだ。「ドルビダ一家が全力で戦ってこんなに負けるんですね。強いと聞いていたのに嘘だったみたいですね」と。許せるか?」

父さんのイライラの理由が分かった。


父さんは俺と母さんの目を見た。

「2人共、勝て。これは私達の意地だ。ライルという少年達への謝罪の場などはしっかり用意してもらえる。他のことは考えなくていい。勝て」

「はあ」

「わかったよ」

そこまで言われたらやるしかない。

俺が負けても母さんがいる。全敗することはないだろう。


▽ ▽ ▽


闘技場は昨日よりお客さんが入っていた。

ライル商会はほとんど総出で応援に来ていた。

一般のお客さんも多く、国王と第2王女と第3王女も見に来ていた。


最初の試合はベラとカイリだ。

2人はステージに上がる。


2人が獣人だからか、会場は盛り上がった。

この国には獣人があまりいないし、居たとしても奴隷のような扱いを受けていることも多い。

そんな獣人が勝ち上がっていることに観客達は感心しているのだろう。


歓声は嬉しいが、そんな目で見てると腰抜かすぞ。

うちの獣人はすごいんだからな。

よく見とけよ。


審判が掛け声をかけると同時にベラの身体を水の球体が覆う。

カイリは距離を取ってロッドで地面を叩くと身体が光る。


▽ ▽ ▽


ベラは強い。

でも僕との相性は悪いはず。

頑張れば勝てない相手じゃない。


僕は身体を『聖獣の鎧』で防御力をあげてベラに向かって行く。


ベラは炎の蝶と雷の槍を飛ばしてくる。

「ベラ!そんな攻撃当たらないよ」

「当てるまで出し続けるだけよ。飛雷槍!」


僕は走り回ってベラの攻撃を避ける。


勝てないのはわかっている。

だけどせめて攻撃をベラに当てたい。


再びロッドで地面を叩く。

「聖獣の光輪!」

目の前に円状の光が現れる、円を潜って速度を上げる。


「よし!」

僕は速度を上げてベラを守る水にロッドを突き刺す。

水は割れ、ロッドはベラを掠る。


「やるわね、カイリ」

ベラは鉄扇をロッドを握る手に振り降ろす。


「ぐっ!」

ロッドを離したら、負ける。

僕はベラから距離を取る。


「逃がさないわ。水牢!」

ベラがそう唱えると僕を囲う用に水の格子が現れた。


「聖獣の聖域!」

僕はすぐに範囲内に入った魔法を消滅させる『聖獣の聖域』を使う。

水の格子は消えた。


しかしベラはその間に距離を詰めてきている。

「そのスキルは私と相性が悪すぎなのよ」

ベラは話しながら鉄扇で攻撃を繰り返す。

「僕も勝ちたいから本気で行くよ」

僕も鉄扇の攻撃を防ぎながら返答する。


ベラはニコっと笑うと距離を取った。

「鎌鼬!土狼!」


風の刃が僕に向かって飛んでくる。

僕は『聖獣の聖域』に入り、風の刃を防ぐ。


『聖獣の聖域』の範囲を複数の土狼が囲むように警戒している。

聖域に入ると消滅するのがわかっているみたいだ。


聖域には制限時間がある。

それに1回使ったすぐには使えない。

聖域が消えた瞬間に土狼達に攻撃されたら負けてしまう。


僕は聖域内からロッドを振って土狼を攻撃しようとするが、ベラは聖域内に入って鉄扇で攻撃をし続ける。

「どうするの?そろそろ消えちゃうでしょ?」

「ははは。ベラは僕達のスキルを理解しすぎだよ」

「鋭牙が危ない目に合わないために頑張ってきたからね」

「助かってるよ。今以外は」

僕はロッドを振り、ベラの攻撃を防ぐ。

ベラの攻撃のせいで聖域の外にいる土狼に攻撃することは全くできなかった。


『聖獣の聖域』が消えてしまった。

僕はベラからできるだけ離れてロッドを振り回しながら土狼を破壊しようとする。

ロッドを振り回しながら自分を回復させる。

ベラと土狼は僕に向かってくる。


「聖獣の光輪!」

スピードを上げて、追撃を避けながら土狼を減らしていくが何度も攻撃を食らってしまう。


「カイリ。降参しなさい」

ベラを向くと、10体以上の炎の蝶と炎の狼がベラの周りに現れていた。

「ヤダよ。聖獣の祈り」

僕は身体の怪我を治す。


「しょうがないわね」

炎の蝶と炎の狼が僕に向かってくる。


「ぐああ!」

ロッドを振り回すが、ほとんど身体に直撃してしまう。

そして倒し損ねていた土狼が僕の脇腹に噛みつき、吹き飛ばされた。


吹き飛ばされても僕は立ち上がる。

「こんなの全然痛くないよ。僕は回復できるからね。忘れたの?聖獣の祈り!」

嘘だ。身体中が痛い。

聖獣の祈りが痛みで上手く発動できていないのは自分がよくわかっていた。

でも強くなったって見せないと。


「うおおおおお!」

僕はがむしゃらにロッドを振り回してベラに向かって行く。

これで倒せるとは思っていない。

だけど隙を作れるかもしれない。


「カイリ。ごめんね。私も負けられないの。土狼!炎狼!」

土狼と炎狼が僕に直撃し、吹き飛ばされる。


「聖獣の祈り!!!まだ終わってないからあああ!!」

僕は力を振り絞り、ロッドを握り直す。


ベラは申し訳なさそうな表情で鉄扇を取り出して、僕の攻撃を防ぐ。

「僕だって!僕だって強くなったの!ライル様のために」

「私もよ。だけどカイリ、私はここで本気を出せないわ」

「知ってる。だけど僕はそれでも!!獣化!!」

僕は獣化した。

獣化はまだ長い時間できないけど、攻撃さえ当たれば。


「ごめんね。カイリ。水牢!飛雷槍」

僕の身体を水の格子が囲む。

さっきと違って水の格子が膨らんでいき、僕の身体を水が包み込んだ。

飛雷槍が水牢に当たり、身体中に電撃が走った。


身体が動かせないし、息もできない。

意識が遠のいていく。

ああ。負けちゃった。

頑張ったんだけどな。

負けちゃったけど、ライル様は褒めてくれるかな。


▽ ▽ ▽


ベラの勝利で試合は終了した。

2人は本当に頑張った。


カイリはパーティの回復役なのにあそこまで向かって行くなんて。

ベラも火力を担っているだけあった。

弟子の成長に俺は泣きそうになった。


俺はすぐに医務室に向かった。


医務室のベッドには眠っているカイリと付き添いにベラが居た。

そして回復役で母さんとナノンが居た。

ナノンは泣いていた。


「え?何?大丈夫なの?」

「いえ、すみません。カイリもベラも凄くて。私感動しちゃって」

「そうだね。ベラ、頑張ったね。次も頑張ってよ」

「はい。ありがとうございます」

ベラは頭を下げた。


「ライル様。カイリが起きたら褒めてあげてください。ライル様のために私達は強くなったので」

「うん。ちゃんと褒めないとね。ありがとう」

ベラの頭を撫でてあげた。

ベラは嬉しそうに尻尾を振った。


「母さん。カイリが起きたら教えて」

「わかったわ。ライルも頑張りなさい。みんなの師匠なんでしょ」

「うん。頑張るよ」


俺は医務室を出て、控室に戻った。


▽ ▽ ▽


おかしいだろ。

あの獣人の子供達もライルの関係者なのか?

でも大丈夫だ。

対戦相手のルークの試合は見た。

剣は得意みたいだがそれだけだ。


俺はステージに上がる。

すでにルークと審判がいた。


「よろしく」

「よろしく。君はライルとか他のみんなに何かする気なの?」

「え、いや」

ルークの質問に圧を感じて、身体がこわばった。

返答する前に審判が掛け声をかけてしまった。


俺は後ろに下がって距離を取る。

「ぐっ!」

急に背中に斬りつけられた。

だがルークは目の前にいる。

しかも距離を取っているはずなのになぜ。


ルークは絶対剣が届かない距離なのに剣を振った。

「がっ!な、なんだ」

また後ろから斬りつけられた。


ルークは再び剣を振る。

俺は後ろ警戒して振り返る。

「がっ!なんで」


ルークの剣が伸びて、俺の背後から肩を貫通していた。

痛い。それに血が止まらない。

なんでこんなに強いんだよ


俺の意識はどんどん薄れていった。


▽ ▽ ▽


「え?」

ルークの試合を見た俺は理解が出来なかった。

ルークが剣を振ると、相手の背後から斬撃が飛んだ。


「は?は?」

剣が伸びるのは知っていた。

いつのまに斬撃を飛ばせるようになっていた。


俺は衝撃過ぎて、混乱した。

ハンとの試合でも本気を出していなかったってことか。


俺は威厳を保つために絶対戦いたくないと思った。



「ラ、ライル様」

「お!」

カイリがフラフラの状態でやってきた。


「言ってくれたら医務室に行ったのに」

「いえ。僕が行きたいと言ったんです」

まあ母さんが後ろに付いてきているからいいだろう。


「ご、ごめんなさい」

「え?」

「僕、負けちゃいました。うわあああああああ」

カイリは急に泣き出してしまった。


俺はカイリを慰めるように頭を撫でる。

「カイリ、すごかったよ。本当に強くなった」

「ほ、本当ですか?」

「ああ。パーティの回復役なのにあそこまでよく頑張った。カイリは強くなった」

「うわああああああああああ!もっと強くなりますから!!」

カイリは再び泣き出した。


俺はカイリの再び頭を撫でてあげた。

しっかり身体を休ませるために、カイリを母さんに任せることにした。


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