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372.卒業試験②

ステージに到着した。


隣のステージには俺より少し年上だと思われるガタイが良い小手を付けた男が居た。

「あいつが2回戦で当たる可能性のある謎の人物か」

正直、早く終わらせてあいつの試合を見ておきたい。


「お、おい!どこを見てるんだ!」

「ん?」

叫んでいるのはベンクトール・ザダだ。


「次の対戦相手の試合を見ときたいなーって」

「ふ、ふざけるな!お前の相手は俺だぞ」

震えるベンクトールの腕には小盾と剣が握られていた。


「お前が俺にやったことを覚えていないのか?てかお前は俺に殴られても文句言えないはずだが?」

「う、うるさいうるさい!お前のせいだ!全部!全部!」

とばっちりもいい所だ。


審判の騎士がやってくる。


「準備はいいか?」

「はい」

「はい」

「では試合開始!」

俺は開始と同時に距離を置いた。


隣のステージでは魔法攻撃を小手で反射していた。

「なるほどね。あの小手は魔法を反射するのか」

俺は自分の試合よりも謎の人物の試合に気を取られていた。


「ああああ!」

ベンクトールは叫びながら攻撃をしてくる。

武術の授業を選択していなかったベンクトールの剣筋は相当ひどかった。

魔法学も選択してないから戦闘は苦手だと思っていたけど、なんで卒業試験に参加してるんだ。

俺はベンクトールの謎の行動に一瞬疑問を持ったが、すぐに考えることをやめた。


「ファ、ファイアボール!」

火の玉が飛んでくるが狙いが最悪すぎて当たる気配がない。

息も切れてるし、もう倒してあげた方がいいのか。


隣のステージの戦闘を見ていたが、勝負がついてしまった。

反射した魔法が直撃し、そのまま殴られて試合終了。

全然実力を確かめられなかった。


「はぁ。じゃあこっちも終わらせるか」

「う、うるせー!!バカにすんな!!」

「エアアーム!」


俺はエアアームを出してベンクトールを殴る。

しかしエアアームはベンクトールに当たる瞬間に消えてしまった。


「は?」

「ははは!効かないぞ!うりゃあああ」

ベンクトールは俺の攻撃を防いだことでテンションが上がったのか、ものすごい勢いで攻めてくる。


俺はベンクトールの拙い攻撃を避けながら、魔法が消された原因を考える。

たぶん俺の攻撃を防いだのはあの盾だろう。

あの盾にエアアームが当たった瞬間、吸い込まれた気がする。


「俺の魔法を防げるのか?」

「ああ。お前みたいな平民の魔法なんか効かないぞ」

「そっか」

俺はバカみたいに突っ込んでくるベンクトールと距離を置いた。


「その盾で魔法を消せるんだろ?じゃあやってみろよ。ウィンドアロー!ウィンドアロー!ウィンドアロー!ウィンドアロー!ウィンドアロー!ウィンドアロー!ウィンドアロー!ウィンドアロー!ウィンドアロー!ウィンドアロー!ウィンドアロー!ウィンドアロー!ウィンドアロー!」

俺は大量の風の矢を出した。


「頑張って全部防げよ」

「え、え」

ベンクトールは風の矢の多さにビビり、盾を構えて後退りしている。

俺はベンクトールに指を差す。

風の矢は一斉にベンクトールに向かって放たれた。


「あああああああああああああ」

風の矢が当たる直前、ベンクトールは何かを口に入れた。

数本の風の矢が盾に防がれるが、ほとんどがベンクトールに命中した。


「さすがに回復してあげた方がいいか?」

俺はベンクトールを回復させようと近づいたが、火の矢が頬を掠めた。


「は?」

「ばばばばばあああばああば!」

ベンクトールはボロボロの身体で奇声を発しながら立ち上がる。

身体は痙攣し、口からはよだれが垂れまくっている。


「何これ」

「ああああばばばばあああああ!!!」

ベンクトールが腕を動かすと、火の矢や火の玉が放たれる。

しかし的が定まっていなく、いろんな方向飛んでいる。


「おいおい。なんだよこれ。意識ないだろ」

俺は鬼鎖で拘束しようと近づくが、ベンクトールの身体が火に包まれて近づけない。

ベンクトールの装備や服も燃えている。

確実にベンクトールの意思ではない。


「ワープ!」

俺はベンクトールの背後に回る。

火が俺を襲うが、我慢するしかない。

鬼鎖を首に巻き付けて首を締める。


「早く気絶しとけ」

「あああがあえががああ!」

ベンクトールが叫ぶと火の威力は増す。

正直、熱いし痛い。


「早く気絶しとけ!!」

俺が力を込めると火が徐々に消えていき、ベンクトールは気絶をした。

審判がそれを確認し、試合は俺が勝利した。


▽ ▽ ▽


俺は医務室に来ていた。

ヤイダラール先生に無理やり連れて来られたが、途中でゴーレとライムと合流したので火傷は完治していた。


ベッドではベンクトールが眠っている。

かわいそうなのでライムにポーションをかけてもらった。

身体の火傷は治ったが、目を覚ます気配がなかった。


「ライルは平気なんだな」

「はい。全然平気です」

ヤイダラール先生は心配そうに俺を見ていた。


「それでベンクトールは何が?」

「様子を見ていた者が言っていたのだが、何かを口に入れたと」

「ああ。俺も見た気がしますね」

「俺はドラゴンシュガーなんじゃないかと思っている」

まさかのここでドラゴンシュガー。

学園では容疑者として疑われていたから、持っていてもおかしくはない。


「この件は兄貴が調べてると思うから、ライルは次の試合まで休んでいてくれ」

「わかりました」

あんまり気にしていなかったが、ドラゴンシュガーで実害が出てきた。

さすがに少しは気にした方が良さそうだ。


▽ ▽ ▽


控室に戻ると、既に1試合終わっていた。

リリヤドと名前も知らない生徒が勝ち進んだみたいだ。


今からビッツとカシムの試合だ。

カシムの相手は謎の人物の1人。


全身鎧をきた巨体の人物だ。

顔までしっかり鎧で隠れている。

あれじゃ年齢も性別もわかんない。


審判の掛け声でカシムは距離を置いて、矢を放つ。

矢は全身鎧に数本当たるが、鎧に弾かれる。


カシムは再び矢を放つと、矢が鎧に当たると同時に矢がアメーバ状になった。

賭博師の弓の効果だろう。

全身鎧はアメーバを払おうと触れるが、触れた腕にもアメーバが広がっていった。


カシムはひたすら距離を取って攻撃を続ける。

矢は鎧部分ではなく、装甲がほとんどない関節部分を狙って飛んで行く。

膝や腕の関節に矢が刺さり、全身鎧の動きは鈍くなる。


カシムは距離を取り続ける。

時間が経つと全身鎧に異変が起きた。

アメーバが付着していた鎧が溶け始めていた。


カシムは溶け始めた箇所に矢を放つ。

矢は鎧を貫通して突き刺さる、全身鎧は痛みで声を上げた。


カシムは弓を引きながら全身鎧に近づいて行く。

全身鎧はカシムに向かって大剣を振り降ろすが、カシムが矢を放ち大剣を弾いた。


それを見た俺は驚いた。

矢で大剣を弾くことは絶対不可能だ。

カシムは何かスキルを使ったのだろうか。


全身鎧が振り回す大剣を何度も矢で弾く。

矢の威力も凄いが、あの速さで矢を放っているのにも驚きだ。

これはカシムと戦うのは大変そうだ。


カシムは矢を増やしたり、スキルを駆使してどんどん追い詰めていく。


矢が刺さった地面から風が起こり、全身鎧は体勢を崩す。

カシムはその隙を逃さず、関節部分に矢を放つ。


全身鎧の関節という関節に矢がどんどん刺さっていく。

痛みで剣を振るうのもやっとなはずなのに、全身鎧は剣を振り続ける。


カシムは何かを言って矢を放つ。

すると矢が巨大化をし、全身鎧は吹き飛んで闘技場の壁にぶつかった。

審判が全身鎧の気絶を確認して試合は終了した。


俺はカシムの圧倒的な勝利に感動した。


▽ ▽ ▽


カシムが控室に帰ってきた。


「凄かったね」

「ありがとう。少しイラッとしちゃって、いつもと違う戦い方をしちゃった」

「え?何かあったの?」

「なんかライルのことをバカにされた」

「え?は?」

俺は詳しくカシムに聞いた。


試合開始前、全身鎧と言い合いになったらしい。

お前達の性根は俺達が叩き直すとか、盗みや悪さはやめろとか。

どれだけ否定しても話を聞いてくれなくて、最終的に「ライルってやつに俺達がお灸をすえないと目が覚めないか」とか言い出したらしい。

普通に腹が立ったから時間をかけて痛めつけることにしたみたいだ。


謎の人物達が集団だということと、やっぱり標的は俺達だということが分かった。

めんどくさいが、あのレベルなら大丈夫だろう。


そんなことを話している間に、チャールズ兄とイタロが勝利していた。

これで1回戦はすべて終了した。


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