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370.闘技場

月の日。

第3演習場に早めに行くと、オステオさんが待っていた。


「早いですね」

「今日はお前達を連れて行くところがあるんだ」

「え?連れて行く?」

「ああ。卒業試験の会場に連れて行く。馬車を用意しているから乗ってくれ」

「おお!わかりました」

俺達はオステオさんが用意した馬車に乗り込み、卒業試験会場へ向かった。



馬車に乗って数分経つと、平民街の東門側に着いた。

そこには石造りの大きなコロッセオのようなものが建っていた。


「ここが卒業試験の会場だ。騎士団の入団試験なども行われる闘技場だ」

オステオさんは誇らしげに言った。


闘技場は前世のゲームとかで見た物とさほど変わらない。

中央にはステージが2つあり、2階と3階にはステージを囲むように客席がある。

そして3階には王族用と思われる席もあった。


オステオさんにステージに連れられる。

「ライル。地面に向かって、全力で攻撃してみろ」

「え?」

俺は言われた通りにしてみる。


「ウィンドアロー!ウィンドアロー!ウィンドアロー!ウィンドアロー!ウィンドアロー!ウィンドアロー!ウィンドアロー!ウィンドアロー!ウィンドアロー!ウィンドアロー!ウィンドアロー!ウィンドアロー!ウィンドアロー!」

一点集中で風の矢を放つ。


ドン!ドン!ドン!

衝撃音が鳴り響き、砂埃が舞う。


「言われた通りにやりましたよ」

「見てみろ」

砂埃が晴れて、オステオさんが指差す先を見るとステージは一切壊れていなかった。


「あれ?」

「この舞台は特殊な鉱石で出来ていて壊れてもすぐに元の状態に戻る」

「え?すごくないですか?」

「それに当日は結界を張るマジックアイテムも使用されるから客席に魔法や武器が飛んで行くこともない」

「なるほど」

「この機能を見せたのは、お前達に本気で戦ってもいいと伝えるためだ。卒業試験当日は回復魔法を使える者も配置する。全力で卒業試験に挑むように」

「「「「「「「はい!」」」」」」」


オステオさんなりの激励だったのだろう。

俺も弟子達もやる気がでた。


▽ ▽ ▽


学園に帰り、俺はオステオさんと模擬戦をしている。


「ん?何かしてるのか?」

オステオさんは魔力循環をしている俺に違和感を感じているようだ。


「なんか変わったように感じました?」

「ああ。なんだ?マジックアイテムか?」

「違いますよ」

俺は地面を蹴って、距離を詰める。


「ははは。なんだその速さは!」

俺は驚くオステオさんを森帝のロッドで攻撃をする。

オステオさんは盾で攻撃を受ける。

「力も強くなったみたいだな」

「そうですか?訓練の成果が出てよかったです」

オステオさんが驚いてくれるのが嬉しかった。


「ワープ!」

オステオさんの背後に回って攻撃をするが、魔力循環がワープで乱れた。


その隙をオステオさんは見逃さず、盾で俺に攻撃をする。

俺は盾が当たる寸前で魔装をした。

攻撃の威力は殺せず、俺は吹き飛ばされた。


「ん?なんだ?」

「ぐっ!まだ練習中なんで」

隙が生まれたのをすぐに気付かれてしまい、少し悔しかった。


「卒業試験は問題なさそうだな」

「そうですか?」

「ああ。ライルといい勝負が出来そうなのは3人くらいだな」

「誰です?」

「カシムとルークとチャールズだ。模擬戦をしている騎士達も最近は負け続けていると聞いている。正直、お前達が子供なのが恐ろしいぞ。このまま成長したらどこまで強くなるんだ」


まさか弟子達の一部が騎士を圧倒しているとは思っていなかった。

あの3人とはできるだけ戦いたくない。

師匠の威厳を保つためにも。


順調に進めば、準決勝でカシムかチャールズと当たる。

弓と盾という真反対の武器だから、対策を絞れないのがめんどうだ。


本当に負けたくない。

プライドも多少あるが、今後のやりやすさのために負けるわけにはいかない。


▽ ▽ ▽


授業が終わって家に帰ると、イタロとハンとルサンナが家にいた。

「えーっと、なんでいるの?」


俺が問いかけるとハンが口を開いた。

「話したいことがあったんだ」

「3人共?」

「ああ」

「うん」

「そう!」

緊急事態なのか、俺は3人に話を聞くことにした。


「卒業試験に名前があるのに、武術の授業にも魔法学の授業にもいない人物がいる。これは先生に報告するべきです」

「ああ。なんかいるみたいだね。ゴトフも言ってた」

「知ってたの?」

「うん」

3人はなぜか驚いている。


「正体とかは知らないよ。でもなんか関係ある?」

「「「え?」」」

「卒業試験にその人物達が居て、何か問題あるの?倒せばよくない?」

「「「あ」」」

3人は何かに気付いたような反応をした。


「そいつらが何かしてきたら動けばいいし、勝ち抜き戦で戦うことになれば倒せばいい」

「そうだったな」

「うん」

「…そうでした」

3人は何故か少し落ち込んでいた。


多分怪しい人物がいることを抗議しようと思ったのだろう。

抗議をし、ちゃんと自分達の努力を発揮できるようにしたかったのだろう。


その気持ちもわかる。

弟子達の初陣で同じようなことが起きていたら、俺も抗議しただろう。

だけどもうそんなレベルじゃない。

弟子達はそれくらいの理不尽を押しのけるくらいの力を持っている。

経験の差だな。


俺の返答で3人は何か気付いたみたいだけど、抗議することは悪い事じゃないからしてもいいと思う。

ただ卒業試験にねじ込まれる人物が、抗議でどうにかなるのだろうか。




▽ ▽ ▽




盗賊団から音沙汰もないから、計画は失敗したようだ。

苛立ちを押さえるために、使用人にはしっかり罰を与えた。


私は卒業試験のために、バカ2人を呼び出した。


「卒業試験ではこれを使え」

私はバカ2人にマジックアイテムと高純度のドラゴンシュガーを渡した。


「こ、これは」

「ベンクトールには風喰いの盾だ。風魔法を食らうと強度が上がるマジックアイテムだ」

「ありがとうございます。これでライルを倒します」

ベンクトールは嬉しそうにしているが、期待なんかしていない。


「リリヤド。お前にはミスリル製の全身鎧だ。これで肉弾戦をすれば負けることはないだろ?」

「ありがとうございます!!」

魔法が苦手なバカには、ちょうどいい物だろう。


「ドラゴンシュガーは必ず使え。ライルは子供にしては強いみたいだ。魔力を増やして戦うんだ」

「お、俺もですか?」

「ああ。ドラゴンシュガーには筋力を増強する効果もあるかな」

実際は強化ではない。

錯乱状態になることで、無意識に制御していた力を解放状態にする。

反動で身体がボロボロになるかもしれないが、俺には関係ない。


「お前達、当日の準備はできてるのか?」

「はい。汚い仕事しかできない低ランク冒険者を数名雇ってライル達を襲わせます」

「いいぞ。しっかりやれ」

「はい」


バカ達には本当に期待していない。

色々面倒なことを起こして、疲弊しているところを卒業試験にねじ込んだ傭兵が痛めつければいい。

ねじ込んだ傭兵は卒業試験で実力を見るための協力者ということにしている。

傭兵達は素行が悪く犯罪に手を染めている学生を教育したいと伝えているから上手くやってくれるだろう。


混乱に乗じて、スライムを奪えれば大成功だ。



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