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365.反骨騎士団

洞窟から、ライムに飲み込まれて気絶している盗賊がどんどん出てきた。


ライムは身体を小さくさせ、小さなライムと合体をした。

「お疲れ、ライム」

ポニョ!ポニョ!


ライムは跳ねまわっている。

楽しかったんだろう。


無事に20人程の盗賊を捕まえることができた。


▽ ▽ ▽


洞窟の中を探索してみたが、高級そうな盗品も食料もなかった。

あったのは武器系のみ。


「うーん。あの武器の量だと、もっと盗賊が居そうだよな」

「そうだね。あと20人くらいは居そうだね」

ルークは冷静に分析していた。


「とりあえず合流しよう」

「うん」

俺とルークが洞窟を出ようとすると、カシムがやってきた。


「ライル!盗賊の頭ってやつがいるんだけど」

「は?」

「なんかジョシュ達が連れてきた。話があるとか」

「なんだそれ」

俺はすぐに洞窟を出た。


洞窟の外には、シモン糸で拘束されたガタイの良い男性が居た。


「えーっと」

「お前が指揮官か?」

「まあそうなりますね」

「そうか。本当に子供だけなんだな」

男はなぜか呆れていた。


「ジョシュ。どういうこと?」

「見張りの盗賊を運んだら、盗賊が10人くらいやってきたんです。返り討ちにして拘束したらいろいろ聞かれて、指揮官に会わせろって言うのでライル様の所に連れてくることにしました」

「なるほど。このおじさんとは何話したの?」

「何が目的かとか、ライル様は貴族じゃないとかです」

「わかった。ありがとう」

俺はジョシュにお礼を言い、盗賊の頭に目を向けた。


「ジョシュと話して騙されてたことに気付いた感じ?」

「ああ。やっぱりそうか」

「そうだね。うちに来たおじさんの部下が言ってた依頼の内容が嘘まみれだったからね」

「本当に俺達はアホ野郎だな」

おじさんは悲しそうな目をしていた。


「てかおじさん達は何?元々貴族に仕えてたんでしょ?なんで盗賊なんてしてるの?」

「仕えていた貴族がクソ野郎でな。元々性格が終わってたんだが数年前から変な命令を出すようになって、俺は部下と一緒に兵士をやめたんだ」

おじさんはなぜ盗賊になったかを話してくれた。


兵士をやめたおじさんは、部下と家族を養うために村で農業などをして生計を立てていた。

しかしクソ貴族は領民の税を増やして私腹を肥やしていた。

農業だけでは生活が出来なくなった、おじさんは何か生きるためにできることはないか考えた。

その時、クソ貴族と手を組んでいる商会がいることを思い出した。

おじさんは腹を括り、部下達と共にその商会の馬車を定期的に襲うことにした。

決して殺しはせず、生活に必要な分だけを奪っていた。


近くの村が何個も食料難で廃村になり、残った村民がおじさん達が暮らす村にやってきた。

おじさん達は村の人を生かすために、盗賊業を続けた。


数年前、仕えていた貴族が他領と揉めて行方不明になり、商会も潰れた。

それを期に盗賊業もやめようかと思ったが、養っている人数があまりにも多くなってしまった。


村は違う貴族が治める領になった。

税は減らされたが、他の支援が全く行われなかった。

新しい領主は動いているみたいだが、前領主が残した様々な負債を修正するのに時間が掛かっているみたいだった。


おじさん達は生活するために元兵士達だけ王都近辺に活動拠点を移し、悪行が噂されている貴族や商会を狙って盗賊行為を繰り返していた。

当然殺しはしないし、平民は狙わない。

だがその縛りが、生活を苦しめていた。

王都近郊に居ても貴族や商会の悪行などの情報がなかなか入ってこないし、王都近郊は警備が凄く、思ったよりも盗賊業はうまくいっていなかった。

しかし被害者になるのが上手い悪徳商会のせいで、名前だけは売れていった。


そんな時に前金を払って救いを求めてきた依頼人が居た。

貴族の子供が平民からテイムモンスターを奪ったから取り返してくれ。

おじさんは承諾し、今に至った。



「うーん」

俺は思い当たることがあった。

「おじさんってソブラの所で働いてたりする?」

「ああ。よくわかったな」

予想は的中だ。


本当にあの野郎は、死んでもうざい奴だ。


「あーどうしようかな」

俺は悩んでいた。

この盗賊団をこのまま捕まえてもいいんだけど、なんか不憫すぎて。


「おじさんが住んでた村は今は何領?」

「エサトスだが」

「村人は何人くらい?」

「50人程だ」

まあどうにかなる人数だ。


「盗賊業はまだしたいの?」

「は?」

おじさんは首を傾げた。


「違う仕事があって、それで衣食住が得れるなら盗賊業をしなくてもいい?」

「ああ。盗賊業はしょうがなくやっていたからな」

おじさんは悲しそうな目をした。


「じゃあ、カラッカ領のヤルクに来な。俺が雇ってあげるから」

「は?」

「本当に真っ当に生きたかったらね」

おじさんは悩んでいた。


「今回はこれで解放するから、興味があったらヤルクに来な」

俺はおじさんを縛っている布を外した。


「あとこれもあげる」

俺はマジックバッグから大量の食糧と少量の金貨を出した。


「いいのか?」

「うん。その代わりヤルクに来るつもりがあるなら、もう盗賊業はしないこと」

「わ、わかった」

おじさんは今の状況を理解できていないみたいだ。


「あっ!おじさんの名前は?」

「俺か?俺は反骨騎士団のボリボアだ」

反骨騎士団という名前は微妙だった。


俺達は反骨騎士団を解放し、王都へ戻った。




▽ ▽ ▽




「ドーグラン様!」

「どうした?」

「スライムの件ですが」

使用人はなぜか焦っていた。


「盗賊団から確保したと連絡が来ていたんだろ?」

「は、はい。そうなんですが、受け渡し場所に一向に現れなくて」

「捕まったか」

「いえ。そんな情報も入っておりません」


最初から簡単にスライムを奪えるとは思っていない。

時間は掛かるだろう。

私には気長に待てるだけの余裕がある。


「少し待てば連絡来るはずだ。そんなに焦るな」

「わ、わかりました」

使用人は私の言葉に納得をし、部屋を出た。


今スライムを奪えなくても、卒業試験でライルを殺して奪えばいい。

どれだけ強いと言っても、子供は子供だ。

殺すことは容易いだろう。




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