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361. 解毒薬

ヤイダラール先生達が帰った。

俺は解毒薬作りのために、シスターミアナを王都に呼んだ。


「これの解毒薬を作りたいんだよね」

「なるほど」

シスターミアナはドラゴンシュガーを見ている。


「素材が分かれば『薬草知識』で何かわかるかもしれないんですが」

「素材はわかってる。ドラゴンリリーと砂糖だね」

「ドラゴンリリーですか」

シスターミアナは目を閉じた。


「ドラゴンリリーは遥か昔に魔力回復薬の材料として使われていたみたいです。ですが調合前の処理をしっかりしないせいで中毒性のある薬が蔓延し、薬の材料としては使われなくなったようです」

「なるほど」

「危険な植物の対象法は、同じ植物や似ている植物が使えることが多いと聞きます。なのでドラゴンリリーの現物を見てみたいんですが」

「ドラゴンリリーの現物か」

俺はゴーレを見た。


「すぐにウラクグさんに確認してきます」

先生達は休みの間も学校にいると言っていたので、ゴーレに学園に向かってもらった。



数分後、ゴーレはドラゴンリリーの球根を持ってきた。

「これしかないようで」

「まあうちで育てればいい」

「そうですね。私がシスターミアナと共に行ってきます」

「わかった。ありがとう」

うちの畑に植えれば、明日には調べられるレベルに育っているはずだ。



▽ ▽ ▽



翌日、花が咲いたドラゴンリリーをゴーレが持ってきてくれた。

シスターミアナも来てくれた。


「マスター。ご報告なんですが」

「どうしたの?」

「ドラゴンリリーを植えた畑の魔力が完全に無くなり、今までの状態に戻るまで数日は掛かりそうです」

「え?なんで?」

「ドラゴンリリーの能力としか思えないですね」

「なるほど」

俺はすぐにドラゴンリリーに『鑑定』をした。


○ドラゴンリリー

 綺麗な白い花が咲く植物。

 根から大量の魔力を吸い取って成長する。

 開花をすると、花びらから空気中の魔力を吸い取る。

 吸い取った魔力は種に吸収される。

 成長すると実が弾けて種が散らばる。

 1つの種以外の種から魔力が漏れて、その魔力で1つの種が成長する。

 吸い取った魔力には中毒性があるので食用不可。


中々興味深い植物だった。

「これで解毒剤は作れるのか?」


俺がつぶやくとシスターミアナが口を開いた。

「魔力に中毒性があるのなら、その魔力を消さないといけないですよね」

「あーたぶんそうだね」

「ならドラゴンリリーの根や花びらの魔力を吸い取る特性を上手く使えれば」

「そんなことできるの?」

「いえわかりません。でもやってみる価値はあると思います」

「じゃあやってみてもらえる?」

「はい」


俺はシスターミアナ用に研究室を用意し、そこで作業してもらうことにした。



▽ ▽ ▽



ここ3日、シスターミアナとウラクグ先生は研究室に籠っていた。

食事と睡眠は無理やりとらせているが、それ以外はずっと解毒薬作りだ。


シスターミアナの希望で、商人ギルドに派遣している獣人のミキマも来ている。

ミキマはエクストラスキルの『分析の獣』を使って商人ギルドで仕事をしている。

俺の『鑑定』とは違って、成分などを細かく見ることができるスキルらしい。

出来上がった薬に悪い成分が入っていないかを随時確認するために呼んだみたいだ。


「ライルさん!」

シスターミアナが疲れ切った顔でやってきた。


「できたの?」

「はい。これで中毒性のある魔力を身体から吸い出せます」

シスターミアナは丸薬を持っていた。


「お疲れ様。今日は休んで。薬はヤイダラール先生に渡しておくから」

「詳細の説明をしないと」

「それは私がやっておきますよ」

同じく顔が疲れ切っているウラクグ先生もやってきた。


「私が説明できますので、シスターミアナは休んでいてください」

「本当ですか?ありがとうございます」

シスターミアナはミキマと共にヤルクに帰っていった。

ウラクグ先生は部屋で休んでいると思っているのだろう。


「では簡単に説明します」

ウラクグ先生はシスターミアナが作った丸薬の説明をした。


ドラゴンリリーの根っこを魔力が入っていない水に漬け込んで吸い上げていた魔力を抜いた。

その根っこをすり潰して、粘りがある液体になったものを球状にして乾燥をさせた。

この丸薬を飲むことで、身体の中にある異常な魔力を吸い取って排出してくれるそうだ。

身体の影響も考えて効果を弱めているため、複数回にわたって服用するものになっている。


「凄いですね」

「はい。シスターミアナには驚かされました。様々な方法を試す行動力と発想力は本当に凄いです」

ウラクグ先生の顔は疲れ切っていたが、目が輝いていた。


「あとはウラクグ先生に任せて大丈夫ですか?」

「はい。任せてください。このドラリ丸薬は私が学園に届けます」

ウラクグ先生はそう言って学園に向かった。



▽ ▽ ▽



無事にドラリ丸薬が効いて、中毒になった学生達の体調は少しずつ回復に向かった。

学園も明日から授業が再開することになったと連絡が来た。

シスターミアナの功績は大きい。

学園長から感謝を伝えたいと言われたが、シスターミアナは断った。

自分の功績はライル商会の功績だと言うので、俺が明日学園長と会うことになってしまった。

シスターミアナには俺から何かをあげようと思う。


諸々の報告をしに来たヤイダラール先生から、まさかの話を聞いた。

ドラゴンシュガーが平民街に流れていたらしい。


平民街で売りつけられた人間が数名いたが、ドラリ丸薬が既に出来ていたので大事にならなかったらしい。

犯人は不明。

ドラゴンシュガーも安い値段での取引だったらしく、何が目的なのか全く分からなかった。

バカ2人に売らせているくらいだから、犯人もだいぶバカなのだろう。




▽ ▽ ▽




「なんで解毒薬が出来てるんだ!!クソ平民のウラクグの野郎!!!」

ペパイド様は不機嫌だった。

俺とリリヤドは怒らせないように黙っている。


「解毒薬を俺が作ることにして時間を引き延ばそうとしていたのに、なぜだ!!!」

ペパイド様は調合器具を地面に叩き落とした。


「おい。ドラゴンシュガーはどれだけ売れた?」

「い、1回目の販売なのでで安値で売っていたので、全然売れていないです」

「あー!!!なんなんだ。せっかく私が作り出したドラゴンシュガーが」

今日のペパイド様は本当に機嫌が悪い。


「お前達がすぐに疑われるせいで!売る期間も短くなってしまったじゃないか!!!」

「が、学園内では売れなくなりましたが、ベンクトールが平民街で数人に売りました」

「は、はい。ペパイド様から教師陣に疑われていると聞いたので、学園ではなく平民街での販売に切り替えました」

「あ?本当なのか?」

「は、はい」

「ははは!!それはいい。良くやったぞ。解毒剤もすぐに数をそろえられるはずがない。今のうちに平民共を中毒にして、少ない金を搾り取ってやるか」

自分が考えた作戦でペパイド様の機嫌がよくなったことで、俺は安心することができた。


「よし。そうしたら残りのドラゴンシュガーも売りさばいてこい」

「「はい」」

俺とリリヤドはドラゴンシュガーをしまって、平民街へと向かった。




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