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358.ポーション事業

今日は木の日。

ウラクグ先生に薬学を教わる日だ。


武術の授業は、オステオさん達との稽古。

魔物学の授業は、モンスターと触れ合いながらジェネッタ先生と『テイム』談義。

中々良い学園生活をしていた。


俺は魔物学の授業を受け、昼休みの間に家に帰って準備をした。

ウラクグ先生の案内はゴーレに任せてある。

魔法学の授業を選択していたメンバーとポーション作りをしているシスターミアナでウラクグ先生の授業を受ける予定だ。


数分待つと、ゴーレがウラクグ先生を連れてきた。

「おーここで授業をすればいいのかい?」

「はい。わざわざありがとうございます」

「教えられることは少ないと思いますが、できる限り教えようと思います」


ウラクグ先生はそう言って薬学の授業を始めた。


▽ ▽ ▽


ウラクグ先生の薬学の知識はものすごかった。

何故謙遜しているのかわからないレベルだ。


「ウラクグ先生」

「どうしましたか?」

「気になっていたんですが、学園に支給されているポーションの品質が悪い気がするんですが」

「え?そんなことはないと思いますよ。ペパイド産のポーションは王国で1番の品質と言われていますし」

「1番の品質?」

ウラクグ先生に俺は違和感を話した。


「魔物学の授業で怪我した生徒がポーションを使ったんですが、血は止まったんですが傷は塞がらなかったんです」

「え?」

「それに武術や魔法学で使っているポーションも回復が遅い気がして。王国で1番って本当ですか?」

冒険者や騎士と模擬戦をしたとき、回復するまで結構待った。

うちのポーションのほうが速く回復する。


「これはシスターミアナがうちで作っているポーションです」

俺はポーションの低級・中級・高級を取り出した。


「おお。これは素晴らしいですね」

「この低級ポーションよりも効き目が薄いように感じました」

「そうですか。そんなことはないはずなんですがね。学園には低級と中級ポーションが支給されているはず」

ウラクグ先生は何か思い当たることがあるのか考え始めた。


「ちょっとそれについては私の方で調べてみます」

「お願いします」


俺達は薬学の授業を終えた。

シスターミアナとウラクグ先生ポーション談義に花を咲かせていた。


▽ ▽ ▽


シスターミアナとウラクグ先生が話し込んでいたので、夕飯をごちそうすることになった。


ついでにフィーゴさんとシェリィさんを王都に呼んだ。

2人が会うのは久々だろう。


「兄貴!」

フィーゴさんはウラクグ先生の元に駆け寄った。


「フィーゴ!元気にしてたか?」

「してたよ!兄貴が無事って商人ギルド伝手で聞いてたけど本当によかった」

「本当にそうだな。私達以外はみんな捕まってしまったからな」

ウラクグ先生は少し悲しそうな表情をした。


「それでそこの女性が?」

「ああ。紹介するよ。俺の彼女のシェリィだ」

「お兄様、初めましてシェリィです」

「初めまして。ウラクグです」

「3人共。立ち話も何ですから、食事の準備をしますので座ってください」

ウラクグ先生達が話始めてしまったので、俺は席に誘導した。



食事を食べていると、ウラクグ先生は口を開いた。


「ライルさんやフィーゴ達は貴族じゃないですよね?」

「え?違いますよ」

「はい」

「今日は特別に豪華な食事ってことなんですか?」

「ん?」

俺は首を傾げた。


「兄貴。ライル商会ではこの食事が普通なんです」

「え?は?」

「研究好きで世間に興味がないのは変わらないんですね。ライル商会はワイアットで今1番注目されている商会なんですよ」

「え!そうなんですか!」

「見たことのない商品や食品。絶品の料理。品質も高い。いろんなところから商人ギルドに問い合わせが来るほどの商会なんです」

「知らなかった。そんなすごい商会の担当をフィーゴはしているのか」

「担当といいますかなんといいますか」

フィーゴさんもアイザックさん達と同じくらいズブズブだから、担当というよりは準従業員みたいなもんだ。


「そういえばフィーゴさん」

「なんです?」

「ペパイド領のポーションについてなんか知ってます?」

「ん?何かありましたか?」

「いやー」

俺は支給品のポーションについて伝えた。


「あー。ペパイド産のポーションとライル商会のポーションを比べたらダメですよ」

「え?」

俺は首を傾げた。


「兄貴。ペパイド産のポーションの材料わかります?」

「ペパイド産のヒール草だけど」

「まずそこで品質の差があります。水は何を使っていますか?」

「水?」

「ライル商会では、教会で作った聖水を使っています。なので品質に差があるのはしょうがないんです」

「なるほど」

まさか根本から違ったとは思わなかった。


「ペパイド産の低級ポーションは傷が塞がらない品質ってことですか?」

「傷が塞がらない?どれくらいの傷かにもよりますが、ちょっとした傷なら低級で塞ぐはずですよ」

「ライル商会のポーションとの差は納得しましたが、やはりペパイド産は質が悪い気がする。まあウラクグ先生が調べてくれるみたいなのでそれを待ちますか」

「そうですね。そこまで言われると私もおかしい気がしてきました」

ウラクグ先生が何か考え始めた。


「でもその問題も解決すると思いますよ」

「え?」

「商人ギルドがライル商会のポーションを国に販売することが決まりましたので、学園に支給されるポーションもライル商会のものになると思います」

「え?そうなんですか?」

「はい。アイザックが頑張ってくれました」

「それなら安心だけど、それってペパイド領に恨まれない?」

「恨まれると思います」

「え!」

「ライルさんなら大丈夫ですよね?」

「まじかー」

めんどくさいことが起きる気がした。


ウラクグ先生は気まずそうに口を開いた。

「ドーグラン・ペパイドは私の上司ですが、だいぶ陰湿ですよ。私は研究さえ出来ればいいので平気ですが、ドーグランの陰湿さでやめていった薬学の教員は多いです」

「えー」

「ペパイド領のポーション事業はドーグランが主に動かしていると聞いてます。なので邪魔されたと感じたら何かしてくる可能性があります」

「あーこれはやっぱりめんどくさいか?」

「そうかもしれませんね」

俺は腹を括った。


「出来るだけ私もライルさんに被害が行かないようにしますので」

「ありがとうございます。ウラクグ先生もペパイドの下で働くのが嫌になったらうちで雇いますんで」

「本当ですか!?」

ウラクグ先生は想像以上にリアクションに驚いた。


「え?可能性あるんですか?」

「シスターミアナとお話をした際に、研究環境を羨ましく思っていたんです」

「え?じゃあ俺が学園卒業したら、うちに来ます?引き継ぎとかもそれまでに済ませてもらって」

「ぜひお願いします」

奇跡的に良い人材を獲得することができた。




▽ ▽ ▽




「ベンクトール!全然売れてないじゃないか」

「申し訳ありません!」

俺はペパイド様に殴られた。


「お前が生徒に売る代わりに、薬学の授業の卒業資格をやる約束だろ!」

「申し訳ありません!申し訳ありません!」

ペパイド様は倒れる俺を蹴り続けた。


「リリヤドも学園に来ないし、どうなっている!」

「そ、それは」

俺はペパイド様の計画がライルという平民の影響で困難になっているとは言えなかった。


「あれか?教師の中で話題になっている平民にコケにされたのが原因か?」

「え、あ、その」

「平民風情に何を怯えている」

「ぐっ!」

俺は再び腹を蹴られた。


「売れ!毎日生徒に売りつけろ。何のためにお前は貴族なんだ?」

「も、申し訳ありません」

「リリヤドにも伝えておけ。私はポーション作りがまだ残っている」

俺はペパイド様の機嫌を取れる話を思い出した。


「ペ、ペパイド様。ポーションを作れるスライムをご存じですか?」

「あ?ポーションを作れるスライム?」

「は、はい。その話題になっている平民のライルがテイムしているスライムがポーションを作れるのです」

「その話は本当か?」

「はい。この目で見ました」

「ほお。それは面白い」

ペパイド様はにやりと笑った。


「そのスライムを奪ってくることはできるか」

「お、俺には無理です」

「使えないな。まあ手はある。有益な情報を渡したことは誉めてやろう」

「あ、ありがとうございます」

「さあこれを飲んでさっさと帰れ」

ペパイド様が投げたポーションを受け取り、俺は家に帰った。




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