355.サオラル共和国の名産品
今日は学園が休みだ。
慣れない学園生活のせいでバタバタしていたから、今日は朝からダラダラするつもりだ。
なぜかゴトフはうちの庭でグリリとダラダラしている。
「ゴトフ。家で休めばいいじゃん」
「休みの日もライルと居なくきゃダメでしょ。絶対何かする」
「ひどいな。喧嘩売られなければなんもしないよ」
「はあ。なんかライルの非常識加減に慣れてる自分が怖いよ」
ゴトフは俺に失礼な事を言ってるって気づいてるのだろうか。
「マスター。お客様がいらっしゃいました」
「え?」
ゴーレの言葉に俺は首を傾げた。
ラドニークさんやクラリさんなら普通に家にいれるはずだ。
ということは全く知らない人が来たということだ。
「マルティル家の使用人と言っております。マルティル家で昼食をとのお誘いみたいです」
「マルティル家?」
俺が首を傾げていると、ゴトフが声をあげた。
「イタロだよ!」
「あーイタロか。イタロの家で昼食か」
イタロは他国の元首の息子、何か珍しい食材があるかもしれない。
「わかった。ぜひ伺わせていただくと伝えて」
「わかりました」
ゴーレは頷き、門へ向かって行った。
「うーん。たぶん僕の家にもきてるな」
「俺だけ招待ってことはないでしょ」
「僕にも招待来てたら一緒に行くから。一回確認しに家に帰るね」
ゴトフはそういうとグリリに跨るとグリリは勢いよく飛び立った。
▽ ▽ ▽
イタロの家は貴族街にあり、ものすごく大きかった。
さすが他国の元首の息子だ。
門に着くと門番に話をし、中に入る。
そこからは使用人に案内され、家に入っていった。
案内されたのは、長テーブルのある広間だ。
そこで待っているとイタロがやってきた。
「みんな来てくれてありがとう」
「ご招待ありがとう、イタロ」
「全員で来ちゃったけど大丈夫か?」
「うん。全員友達だからね。みんな好きに座って」
イタロがそういうので俺達は席に着いた。
「昼食は何がいいかな?サオラル共和国の料理の用意もあるけど、慣れてる食事の方がいいよね?」
「いや、イタロの国の料理がいい」
「本当に?」
イタロは驚いていた。
「ライル達はそうかもね」
「ん?どういうこと?」
「ライルはライル商会って商会をやってるんだよ」
「え?」
イタロはまた驚いていた。
「僕が知っている限り、ワイアット王国で一番美味しい料理を提供するのはライル商会だね」
「えー。なんかうちの料理が出しづらくなっちゃうな」
「いや、俺は見たことない食材が見たい。だからイタロの国の食事を頼む」
「そんなに言うなら」
イタロは使用人に指示を出した。
料理が来るまでイタロと雑談をした。
イタロは俺と弟子達の関係が気になっていたようだ。
廃村寸前の村の話、元奴隷を雇っている話、訓練の話、冒険者をしている事。
いろんな話をした。
「なんかすごいね」
「まあいつの間にかそんなことになったって感じかな」
そんな話をしていると、メイドさんが料理を運んできた。
「こちらはデザートイーターのパッチャオと砂豆のパッチャオです」
メイドが持ってきたのは丸型の平べったいパンのようなものだった。
「パッチャオ?」
「パッチャオはパンみたいなものだね。香辛料で味付けしたデザートイーターの肉が入っているのと、砂豆を潰したものが入っているのの2つだよ」
「へー。デザートイーターの肉か」
「うん。サオラル共和国の6割は砂漠で、デザートイーターが良く出るんだ」
俺はデザートイーターのパッチャオを一口食べてみた。
「お!辛い」
パッチャオは硬めの揚げパンのようだった。
中のデザートイーターは魚のような食感で、香辛料がとても効いていた。
「この香辛料は?」
「うちの国の名産だね。唐辛子・コリアンダー・フェンネル・クミン・ターメリック・シナモンとかが主かな?ほかにもいろいろ作ってるけどね」
「素晴らしい!!」
弟子達もパッチャオが気に入ったみたいだ。
辛いのが苦手な子は少し大変そうだがちゃんと美味しそうに食べていた。
俺はデザートイーターのパッチャオを食べ、次は砂豆のパッチャオを食べる。
「砂豆は?」
「砂豆は砂漠でも育つ豆なんだ。普通の土でも育つんだけど、うちの国では砂漠でもよく育つから砂豆って呼んでいるんだ」
「ほー」
俺は砂豆のパッチャオを食べる。
「これも美味い」
砂豆はそら豆に近い気がする。
こっちにも少し香辛料が入っているからか食が進む。
「イタロ!最高だよ」
「本当に?」
「うん。ぜひ香辛料を今度買わせてほしい」
「高いけど平気?」
「うん。問題ないよ」
「じゃあ夏の長期休みにうちに来る?」
「え?いいの?」
「うん」
武術と魔法学の卒業試験を突破すれば、夏には卒業するだろう。
学園の長期休みに合わせてサオラル共和国に行ってもいいかもしれない。
食事を終わらせ、サオラル共和国の話を聞いているとイタロの執事が口を開いた。
「みなさま。食後のお飲み物は紅茶かコーヒーのどちらがいいですか?」
「は?え?は?」
俺の驚き方に執事が驚いていた。
「コーヒーがあるんですか?」
「はい。コーヒーも紅茶もサオラル共和国の名産です」
「コーヒーをいただきたいです」
「わかりました」
弟子達は無難に紅茶にしていた。
メイドが持ってきたカップには真っ黒な液体が入っていた。
凄い香りがいい。
一口飲んでみた。
酸味も苦味も強いが、後味がスッキリしている。
美味い。
「こちらはサオラクイーンという豆です」
「ほー」
コーヒー豆も種類があるみたいだ。
「紅茶もサオラルで?」
「はい。サオラルードとい茶葉で、ロックシトラスという果物の香りがします」
「ほー」
夏にサオラルに行くのが楽しみになった。
イタロにコーヒーや紅茶を今度分けてもらう約束までした。
「なんかお返しをしたいな」
「大丈夫だよ」
「ライル商会の商品をイタロに見せたいし」
俺はどうしようか悩んでいると、ゴトフが口を開く。
「夕食をライルの家で御馳走するのは?」
「あーありだね」
「え?良いの?」
「うん。準備できたら迎えに来るから、家で待ってて」
「わかったよ」
俺はすぐにイタロ邸から帰宅し、夕食の準備を始めた。




