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352.イタロ・マルティル

魔物学の授業が終わり、帰ろうと思っていると声をかけられた。

さっき怪我をした生徒だ。


「先ほどは怪我を治してくれて、ありがとうございます」

「気にしないでください。ですよねライル」

俺が答える前にゴトフがなぜか答えた。

多分お偉いさんの息子なのだろう。


「はい。問題ないです。無事に怪我が治ってよかったです」

俺はゴトフに合わせて猫を被った。


「自己紹介が遅れました。私はイタロ・マルティルです」

「存じております。サオラル共和国元首の御子息様ですよね。僕はチバラス家のゴトフです」

「えーライルです」

「言葉を崩してください。ここでは同級生ですし」

イタロ・マルティルは申し訳なさそうに言った。


「いいんですか?」

「はい。できれば友人になりたいです」

イタロ・マルティルは恥ずかしそうに言った。


俺的にはタメ口で話せるほうがいいが、ここはゴトフの判断に任せることにした。

ゴトフは俺のことをチラチラ見てくる。


「失礼だとは思うのですが、友人というのはここにいる全員が当てはまりますか?」

「え?」

ゴトフは弟子達のことも考えてくれているみたいだ。


「僕以外の人はみんな平民です。イタロ様に失礼な事をしてしまう可能性があります」

「構いません。元から皆さんと友人になりたくて話しかけています」

イタロ・マルティルは真剣な目でゴトフを見ていた。


「わかりました。大変失礼しました」

「いえ。こちらも配慮が足りませんでした」

2人は頭を下げた。


なんか変な空気になった。

どうにか空気を戻さないと。


「えーっと。タメ口でいいってことだよね?」

「あっはい。ライルと呼んでも?」

「うん。俺はイタロって呼ぶわ。ゴトフもタメ口にしろよ」

「う、うん。僕もイタロって呼ぶね」

ゴトフは少しぎこちなかった。


「イタロはなんで俺達に声をかけたの?」

「魔法学の授業で冒険者を倒したときから仲良くなりたいと思ったんだ。さっき怪我を治してもらったから、お礼を言うついでに仲良くなりたいなと」

「なるほどね」

魔法学の授業にイタロが居た印象がない。

あまり魔法は得意じゃないんだろう。


「僕のエクストラスキルが特殊みたいで、自国で魔法を学んでたんだけどあんまりうまくいかなくて」

「どんなエクストラスキルか聞いても?」

「『砂弾の魔法使い』ってスキルで砂を操れるはずなんだけど、土魔法が上手くいかなくて」

「なるほどね。今度暇なときに一緒に練習する?」

「いいの?」

「そういうことを聞きたくて仲良くなりたかったんじゃない?」

魔法学の授業を見て仲良くなりたがるということはそういうことだろう。


「それはそうだけど。それだけじゃない」

イタロは気まずそうにしている。

「自国にも友達と言える人がいなくて・・・」

「あっ」

「この留学でどうにか友達を作りたかったんだけど・・・」

なんかすごい気まずくなった。


「本当に魔法の技術を知りたいってだけで声をかけたわけじゃないんだよ」

「わかった。ごめんごめん。俺達が友達になるから」

「いいの?」

「うん。まあ国と国の関係とかはよくわかんないから、そこら辺はゴトフにまかせよう」

「え!」

ゴトフは嫌そうな顔をした。



▽ ▽ ▽



翌日の朝礼後、ヤイダラール先生に呼び出された。


「ライル。この後の武術の授業だが、お前達は第3演習場だ」

「わかりました」

「そこに講師を呼んでいるから、しっかり指示を聞くように」

「はい」

俺達は武装をし、第3演習場に向かった。



第3演習場には、2年前に出会ったオステオさんと騎士が数名居た。


「えーっとライルです。お久し振りです」

「久しぶりだな。リゴベルトからお前達のことを聞き、短期間だが講師を務めることになった」

「リゴベルト?」

「ヤイダラール先生のことだよ」

俺が首を傾げていると、ゴトフが教えてくれた。


「オステオさんは黄盾騎士団の団長なんですよね?」

「ああ。そうだ」

「大丈夫なんですか?俺達の講師をして」

「構わないぞ。2年前に世話になったし、王女様にも許可を得ている」

俺達の講師に騎士団長が来るのは、だいぶ想定外だった。


「それに、うちの新人騎士が倒されたままでは黄盾騎士団の名が廃るからな」

「あれ?授業ですよね?俺達を潰すために来たわけではないですよね」

「授業だ。だがうちの騎士団の底上げに使わせてもらうつもりだ」

「ははは」

まさかすぎて正直めんどくさかった。


「学園から支給品のポーションを大量にもらっている。ある程度本気でも問題ない」

「胸を借りるつもりでやらせてもらいます」

俺達は1人1騎士が付いて、戦闘訓練をすることになった。


▽ ▽ ▽


「だあああ!」

全力で武鬼斧を振るが弾かれてしまう。


「ウィンドアロー!ウィンドアロー!ウィンドアロー!ウィンドアロー!ウィンドアロー!ウィンドアロー!」

大量の風の矢を放つが、オステオさんには全く届かない。


「そのエクストラスキルって壊せるんですか?」

「個人に壊されたことはないな。2年前の襲撃では広範囲に展開をしていて敵が複数個所から攻撃をしてきたから、ライルが治めてくれなかったら危なかったぞ」

「治めたのは俺じゃなくて俺のテイムモンスターですけどね」

俺は喋りながら、ひたすらオステオさんを攻撃する。


弟子も騎士の人達と質のいい戦闘訓練が出来ているみたいだ。


ゴトフは特例でグリリに乗って騎士3人と戦っている。

ゴトフが提案した瞬間の騎士の青ざめた顔は忘れられない。



俺達は授業の時間が終わっても、オステオさん達との戦闘訓練を続けた。

魔法学の授業を受けなくても良くなったおかげで、午後が暇になる所だったからちょうどよかった。


オステオさんに攻撃をし続けていると、ヤイダラール先生が生徒と思われる数人を連れてやってきた。

生徒だと確証がない理由は、全員が兜付きの全身鎧を着ているからだ。


「あれ?どうしました?」

「どうしたんだリゴベルト」

ヤイダラール先生はすごくきまずそうな顔をしていた。


「えー。数名の生徒から、ライル達のみが特別扱いをしていると指摘があって」

「え?」

「それはライル達に実力があるから、このような対応をしてると言ったんだが」

「だが?」

「自分達にも実力があるから試させろと」

「はあ?」

ヤイダラール先生がそういうと、1人の生徒が兜を外した。


「おい!何で平民のお前が特別扱いなんだ。テイムモンスターに頼った力のくせに」

声を荒げているのは、昨日厩舎でからんできたリリヤド何とかだ。


「黄盾騎士団長の特別訓練をかけて、俺達と戦え」

「いやーめんどくさい」

「は?ビビってるのか?」

「いや、俺達が勝っても利益がないから、戦う意味がないんだよ」

「は?」

怒ってるリリヤドを見て、ヤイダラール先生は頭を抱えている。


その様子を見たオステオさんが口を開く。

「それならライルが何か提案すればいいだろ?君も負ける気がないなら、どんな条件でも受けるんだろ?」

「は、はい!当たり前です」

リリヤドはなぜかオステオさんに緊張していた。


「んーじゃあ。俺達が勝ったら、リリヤドの関係者は今後一切俺達に関わらないと誓ってくれ」

「は?」

「視界にも入らない。入ったら俺達は問答無用で攻撃する。それでいいなら戦うよ」

「はは!いいだろう」

なぜかリリヤドは自信満々だった。

武術の授業を見ていたのなら、俺達の実力もわかってるはずなのに。


「それで後ろの奴らも参加するのか?」

「ああ。30分後開始だ。参加者は装備を持参してここに集合だ」

「わかった」

リリヤドが自信満々なのがだいぶ怪しいが、まあいいだろう。


リリヤド達は装備を取りに消えていった。




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