346.チバラス邸で食事会
「んん!!」
毒見役のメイドはコーンスープを飲んで驚いていた。
「問題なければ、よそって持って行ってください。パンは無くなったら追加するように」
「は、はい」
俺は配膳係に指示を出す。
「スープが食べ終わりそうになったらすぐ伝えて」
「わ、わかりました」
「チャールズ兄!オークキングは茹でれた?」
「うん。冷やしてサラダに乗っけてるよ」
「ありがとう」
オークしゃぶのサラダもできあがった。
「チャールズ兄は今何してる?」
「グリーンサーモンを切ってる。カルパッチョは任せて」
「よろしく。俺はミノタステーキと付け合わせにフライドポテト作る」
「うん」
俺はミノタ肉の最高級を切っていく。
最後にパスタも出したいから、あまり大きくなくていい。
出来立てを食べてもらいたいから、先にフライドポテトだけ作っておこう。
油を温め、ジャガイモを切っていく。
「えーと、スープが終わりそうです」
「じゃあこれをお願いします。毒見はやってください。皿に盛ったらこのソースをかけてください」
俺はマヨネーズが入った容器を渡した。
▽ ▽ ▽
無事、パスタまで出すことが出来た。
しっかりワインも提供しておいた。
反応が見えないが、悶絶していることを願おう。
「最後デザートは甘いイチゴのケーキか、甘さ控えめのチーズケーキのどっちがいいか聞いてください」
「わかりました」
配膳役は走って行った。
「ライル。チーズケーキに生クリームは添える?」
「うん。少しだけね」
「わかった。準備しておく」
チャールズ兄は俺のサポートをしっかりしてくれた。
先回りの動きができる人間は本当に尊敬する。
料理人達は口を開けたまま俺達の調理を見ていた。
配膳役が戻ってきた。
「ラ、ライル様」
「ん?」
「旦那様が来てほしいと」
「あーまじかー。じゃあケーキは俺が持って行くよ」
「わ、わかりました」
「チャールズ兄!目の前で切って提供するから、必要なものまとめて」
「わかったよ」
チャールズ兄はワゴンにケーキを乗せてくれた。
「じゃあ行ってくるね。あまりにも遅かったら先に帰ってて」
「はーい」
俺はワゴンを押して、食事をしている部屋へ向かった。
ワゴンを押しながら部屋に入る。
座っている面々を見て、俺は後悔した。
チバラス公爵の隣にはきれいなマダムとチバラス公爵と顔が似ているおじさんが座っていた。
やられた。
あれは絶対国王だ。
「デザートをお持ちしました。甘いイチゴのケーキか甘さ控えめのチーズケーキがお選びできます」
「ほーライル。お前がよそってくれるのか?」
「はい。このデザートまでが私の料理ですので」
「じゃあ私はチーズケーキとやらをもらおう。お前はどうする?」
チバラス公爵はマダムに問いかけた。
「私はイチゴのケーキを」
「わかりました」
俺はケーキをカットして、2人の目の前に置く。
「他の皆様はどちらにいたしますか?」
ラドニークさんは言いたそうにしているが、国王が何も言わないので言いづらそうにしている。
「ワイアット国王様はどちらになさいますか?」
俺は自分の勘を信じた。
「ほー儂が国王だと知っていたのか。弟の話だと貴族には疎いと聞いていたが」
「ワイアット王国の国民として当然知っておりました」
賭けは大成功。
「そうか。では儂はチーズケーキとやらをもらおう」
「わかりました」
俺はすぐに皿に盛り、国王の目の前に置く。
ついでにラドニークさんには聞くのが面倒なのでチーズケーキを置いた。
セフィーナさんとゴトフは両方乗っけてあげた。
「ライル!両方選んでもよかったのか?」
「いや子供限定でございます。ケーキは余っているのでお替りしてもいいですが、お酒を飲まれるのならおつまみを用意しますよ」
「おお。それはいい。私と妻はつまみをもらおう。兄上もつまみにしますか?」
「儂もつまみをもらおう」
俺はマジックバックから、生ハムとチーズ各種を出した。
「ライル商会で作っている、オークの生ハムとチーズでございます。ワインは赤と白どちらにしますか?」
「赤をもらおうか」
チバラス公爵がそういうと、メイドがグラスを取り出した。
俺はメイドにワインを渡す。
「ライル商会で1番高いワインです」
「食事の時に出てきたのとは違うのか?」
「はい。先ほどのよりも味の深みがあるそうです」
「ほー」
チバラス公爵との会話で国王と話さないで済むからありがたい。
「ライル。なぜ兄上が居るかわかるか?」
うわ。いきなり嫌なパスが来た。
「いえ。わかりません」
「兄上はお前に会いたがってはいたが、王城で謁見という形にするつもりはなかったみたいなんだ」
「申し訳ありません」
ラドニークさんが頭を下げた。
「よいよい。儂が会いたいと言ったら、そう解釈されることを考慮できていなかった。ラドニークよ、すまなかった」
ラドニークさんが謁見と勘違いしてたみたいだ。
「ところでライルよ」
「は、はい」
「ソブラの件は大変助かった。ラドニークからも褒賞をもらっていると思うが、儂からも褒賞を出させてもらう」
「ありがとうございます」
国王が立ち上がると、国王の後ろに人が現れた。
護衛が居たのか。
隠密系のスキルを使っていたのか、全く気付かなかった。
俺は跪き、お金が入った袋を受け取った。
「ライルも座れ。少し話を聞かせてくれ」
「は、はい」
俺は座って、国王様と話すことになった。
いろいろ聞き出そうとする国王様とチバラス公爵。
ラドニークさんのフォローもあり、どうにか会話が出来ていた。
「そういえば、国王様に献上したいものがあって」
「おお。ライル商会の商品か?」
「商品もありますし、国王様との謁見でお渡しするように特別作ったものもあります」
俺はマジックバッグからポーション10本取り出した。
「これはもう商品化されたのかな?高級ポーションです」
「おお。これはすごい。見てみろ」
「はい」
国王は護衛の人にポーションを渡した。
「これは素晴らしいです。この品質のものは中々出回りません」
「そうか。ありがたく受け取ろう」
「あっ!まだまだあるんですが」
俺は次々献上品を出した。
「これはチョコというお菓子です。商会では平民にも買えるお手頃なものを売っています。これはそれの高級なものですね」
「ほう。ありがたく受け取ろう」
「あとこれです。これは王妃様と王女様方にお渡しください」
俺はネックレスや指輪を出した。
結構な数の宝石が装飾されているが、全然下品ではない。
さすがイルデン作だ。
「おお!これは凄い」
「ドワーフのイルデンという従業員が作りました」
「ドワーフの作品か。素晴らしいな」
国王様は目を輝かせていた。
「あとはうちの商品を持ってきてるんですが、マジックバッグの容量は大丈夫ですか」
「まだあるのか?」
「はい」
俺は部屋いっぱいになるお土産を献上した。
▽ ▽ ▽
ラドニークさんと国王様達は話があるようなので、俺達は先に帰ることになった。
「問題なかったですよね?」
「そうですね」
セフィーナさんは少し疲れていた。
「ゴトフ様も国王様にグリフォン運輸の話をしていたので、営業はできたと思います」
「なんか気のいいおじさんだったね」
「ライル様!いらっしゃらなくても、そんなことを言わないでください」
「すみません」
さすがに国王様をおじさん扱いはダメなようだ。
「ただ話しただけでしたね。謁見だと思ってたから少し緊張してたけど」
「そうですね」
色々探りは入れられたが、特に何もなく終わったから拍子抜けだった。




