345.弟子希望
冥界兄弟をボコした夜、ラドニークさんに呼び出された。
なのでカラッカ邸にゴーレとやってきた。
メイドに執務室に案内されると、ラドニークさんがいた。
「どうしました?」
「ザダ子爵から謝罪金を受け取った」
「あーじゃあそれあげます。手間賃です。後ろ盾ありがとうございます」
俺は頭を下げた。
「おいおいおい!いらないのか?」
「はい」
俺の返答にラドニークさんは驚いている。
「それと今回の元凶のザダ子爵の子息は学園に通っている。ライル達が飛び級すれば同学年だ」
「まじですか。さっき居た奴ですよね?」
「ああ。あまりいじめてやるなよ」
「まあ殺しはしないです。圧だけかける感じにしておきます」
「頼むぞ」
ラドニークさんは終始呆れていた。
▽ ▽ ▽
セフィーナさんとカレンさんがヤルクに帰るみたいなので、一緒に家に戻った。
「ライル様。本当にいろいろ気を付けてくださいね」
「わかってますよ」
「わかってないから言ってるんですけどね」
セフィーナさんの呆れ顔は見慣れてしまった。
「帰る前に稽古します?」
「いいですね。お願いします!」
「私もお願いします」
2人は武器を持ち、相手はゴーレが務める。
『体術』を取得したおかげでだいぶ見れる動きになった。
このまま『秘密基地』内で訓練すれば、『棍術』と『棒術』を所得出来るだろう。
▽ ▽ ▽
翌朝、庭に出ると門の外に人影が見えた。
「ん?誰だ?こんな早くに」
よく見てみると【冥界兄弟】だった。
「ん?なんでいるんだ?」
俺は門まで行き、門を開けた。
「なんか用?」
「「師匠!!俺達を弟子にしてください!!」」
「はぁ?いや無理だよ」
冥界兄弟は地面に頭を擦り付けている。
「昨日の事忘れたの?」
「覚えています。だからこそ弟子にしてほしいんです」
「ほしいんです!」
正直めんどくさかった。
「あーじゃあカラッカ領のデスヘルの街に来ればいいよ。到着するまでに『体術』と『剣術』『槍術』を取得することが必須ね。取得せずに来たら一生弟子にしないから」
「「わかりました!!」」
「デスヘルについたらジェイクという冒険者を探しなさい」
「「はい!」」
そういうと冥界兄弟は去って行った。
たぶんデスヘルに訪れるのはだいぶ先だろう。
こういうのはジェイクに丸投げだ。
門を閉めようとすると声をかけられた。
「ライル!」
俺を引き止めたのは、ゴトフだった。
「えっ!思ったより早いね」
「グリリに乗ってきたからね」
さすがキンググリフォンだ。
フリードより速いかもしれない。
俺はゴトフを家に案内した。
「えー広いね」
「まあね。俺以外も住むし」
「そういえばさ、ライルに教えておくことがあったんだよ」
「え?何?」
俺は少し不安になった。
「前に学園で気をつけたほうがいい貴族を教えたでしょ。ザダ家とシチール家って。他にも別の意味で気を付けた方がいい人が居て」
「あーザダってゴトフから聞いてたのか」
「え?」
「いやさー」
俺はゴトフにザダとのいざこざを伝えた。
「うわー。いきなりそんなことが」
「まあ絡んでくるようなら殴るからいいよ」
「ははは。その場にはいたくないなー」
ゴトフの笑いは乾いていた。
「それで別の意味で気を付けた方がいい人?」
「うん。学園には留学生が来ているんだ」
「え?違う国ってこと?」
「うん。2つの国から来てて、ガト王国からは第1王子のハン・ガト様と貴族の息子とサオラル共和国からは元首の三男のイタロ・マルティル様が来ているよ」
「だいぶお偉いさんだな」
「そうだね。その2人以外にも何人か来ているけど、気を付けるのはこの2人かな。性格とかは全く知らないんだ。留学で今年1年間、最高学年で過ごすだけだから」
「わかった。なるべく接触しないようにするよ」
ゴトフのアドバイスを聞いておけばどうにかなるだろう。
「あーあと父上が今晩の食事に誘うように言われてるんだけど」
「え!!」
「カラッカ辺境伯とセフィーナ様も一緒に」
「まじか」
貴族との食事なんてめんどくさい。
「ゴトフ。相談がある」
「なに?」
「食事中の会話とかめんどいから、俺に食事を作らせてくれ」
「え!!一応聞いてみるけど」
「頼む!!!」
「が、頑張ってみる」
ゴトフはしぶしぶ頷いた。
▽ ▽ ▽
「それでライル様は料理を作ることに?」
「うん。貴族と話すのめんどいじゃないですか」
「はぁー。代わりに私が喋るってことですね」
「よろしくお願いします」
セフィーナさんはいつもの呆れ顔だった。
俺は料理を準備するために、早めにチバラス邸に行くことになった。
わざわざゴトフが俺を迎えに来てくれた。
「場所もわかんないだろうし、なんかあっても困るからね」
「チャールズ兄とゴーレも連れて行きたいんだけどいい?」
「うん。問題ないよ。でもライルは料理を作ったら、合流しなくちゃダメだからね」
「やっぱり」
「そこは諦めて」
「わかったよ」
俺達はゴトフが用意してくれた馬車に乗って、チバラス邸に向かった。
ゴトフに案内されて、厨房に入ると料理人と思われる人が数名いた。
「坊ちゃん。大丈夫なんですか?」
「うん。ライルの料理は凄いんだよ。それに食材もね」
「そうですか」
料理人は俺をジロジロ見るが何も言ってこなかった。
「何人分作ればいいの?」
「えーと、7人かな。うちが4人でカラッカ家が2人で、あとはライルの分」
「了解」
俺の分は作らなくていいだろう。
「苦手なものとかある?」
「ないよ。父上は珍しいものも好きだから」
「わかった」
「一応、毒見役はいるから」
「まあ当然だな」
俺はゴトフとの話を終えて、料理の準備に取り掛かった。
作らせてもらうからには本気でやる。
チバラス家は援助もしてくれるみたいだし。
「チャールズ兄、準備始めようか」
「うん。よろしく」
俺達は準備を始めた。




