342.王都の拠点
なぜかラドニークさんとチバラス公爵と雑談をした。
チバラス公爵の本質は気のいいおっさんだが、時折圧や探りのようなものを感じた。
チバラス公爵が帰り、ラドニークさんとセフィーナさんだけになった。
「なんか凄かったですね」
「まあ学園卒業前の七男がいきなりグリフォンの群れを連れてきたら心配になるだろうし。ソブラみたいに怪しいマジックアイテムを使われた可能性も考えるだろう」
「普通に訓練したんですけどね」
「どんな訓練だ!スキルは簡単に取得できるものじゃないからな」
貴族はそうかもしれないけど、冒険者は話が違うと思った。
「お父様。そろそろ土地を」
「ああ。ライルに譲る土地は、平民が街の南地区にある屋敷だ」
「屋敷?」
「商会が所有していたんだが、経営が厳しくなったので私が買い取ったんだ」
「屋敷は壊しても?」
「いいぞ。スキルで一瞬なんだろ?」
「まあ」
やっぱり結構知られているみたいだ。
「当然近くには貴族は住んでいないし治安も悪くない。学園も南地区だから通いやすいぞ」
「ありがとうございます。それじゃあ早速行ってきます」
「ああ。なんかあれば頼っていいからな」
「はい」
俺は紙にサインをし、セフィーナさんと共に屋敷を後にした。
▽ ▽ ▽
購入した土地にあったのは、ものすごくデカい屋敷だった。
周りの建物と雰囲気が違う高級な造りだ。
ちょっと悪趣味ではあった。
大通りに面しているし、土地は好物件だった。
ただデザインがどうしても好きになれない。
「浮いてますね」
「そうですね」
「すぐに壊しちゃいますね」
「はい」
俺はすぐに『秘密基地』を使った。
譲ってもらった土地は6マス分もあった。
造りはシンプルでいいだろう。
バッフン!バッフン!
家家家 B
庭庭庭 A
012
2階建ての大きなログハウス風にした。
屋敷っぽくすると、周りと浮く。
石塀で囲んで門を付けた。
「こんな感じでどうでしょう」
「ライル様、珍しく押さえました?」
「うん。周りの雰囲気に合わせたかな」
「それが良いと思います」
俺は家の中に入り、細かい修正をしていった。
「よし、ゴーレ。『秘密の通路』を繋ぐから、カシム達を連れて生活用品とか諸々用意してきて」
「わかりました」
ゴーレはカシム達を呼びに行った。
その間に『秘密の通路』をヤルクと繋いだ。
「ライル様」
「はい」
「私はカラッカ邸で一泊します」
「実家だもんね。ゴーレに送らせるから、少し待ってて」
「わかりました。入学式や国王様との謁見の細かい予定を詰めておきますので、明日お伝えしますね」
「ありがとう」
本当にセフィーナさんが居てくれて助かった。
「待っているのも暇ですし、軽めに組み手します?」
「やりましょう!」
「カレンさんも!」
「はい。お願いします」
俺達は2対1で組み手を始めた。
『体術』を取得してない割には動きが良くなっていた。
「なかなか成長したんじゃないですか?」
「そうですかね?でも心なしか動きやすくなった気がします」
「私もです」
俺は何か引っかかった。
「ステータス確認できます?」
「え?今ですか?」
「はい」
2人は自分のステータスを確認する。
「「え!?」」
2人は声をあげた。
「『体術』を取得しています」
「私もです」
「やっぱりか」
スキル取得に『秘密基地』が関与している可能性がかなりありそうだ。
今までのスキル取得の大半は、『秘密基地』内で訓練をしている時だった。
経験が蓄積されて『秘密基地』で解放したのか、それとも『秘密基地』内だとスキル取得しやすくなるのか。
これは検証が必要だ。
俺は新たな謎が生まれて頭を悩ませていたが、『体術』を取得した2人は大喜びしていた。
▽ ▽ ▽
入学予定の弟子達もやってきて、みんなで内装を終わらせた。
「よーし。今日はみんなこっちで1泊するか」
「「「「「「「「「はーい!」」」」」」」」」
「夕飯作るから手伝って!」
俺は夕飯を作るためにキッチンに向かった。
するとセフィーナさんがやってきた。
「あれ?カラッカ邸で1泊するんじゃ」
「お父様からこれを渡してくれと言われたので」
セフィーナさんが持ってきてくれたのは制服だった。
「これは学園の制服?」
「はい。人数分あります。獣人の皆さんのは申し訳ないのですが加工をお願いします」
「わかりました」
俺は制服をよく見た。
「普通の布か。この色ならシモン布でもできるよな」
「はい。問題ないと思います」
「みんなのサイズもわかってるから、裁縫部に作ってもらおう。マデリンが暇そうなら付与も頼もう」
「わかりました。手配しておきます」
ゴーレは制服を持って『秘密の通路』に向かった。
「入学式はいつですか?」
「9日後の正午に学園の講堂に集合です」
「わかりました」
「暇なときにでも学園の場所を見に行ってみてください。大通りを貴族街方向に進めばあります」
「わかりました」
「では私はこれで」
セフィーナさんは帰って行った。
▽ ▽ ▽
翌朝、みんなで朝食を食べている。
「今日は王都を見て周ろうと思うんだけど、みんなはどうする?ついてくる?」
「「「「「「「「はい!」」」」」」」」
みんなはものすごい勢いで手を挙げた。
「じゃあ朝食食べ終わったらみんなで行こう」
ワイアット王国の全土から物が集まっているはずだから、新しい植物とかを見つけたい。
朝食を終えて、庭に出た。
天気もいい。
散策日和だ。
そんなことを考えていると、ゴーレがやってきた。
「マスター。ガルスタンから、こちらを預かっています」
「ん?」
ゴーレはマジックバックから馬車を2台取り出した。
「フリードのマジック馬車だけでは足りない可能性もあるので、グーちゃんとライドンが引けるような馬車を用意してくれたみたいです」
「おー。それは助かるね。全員一緒に行動ができないだろうし、これはいいね」
俺は庭に馬車置き場を作った。
そんな作業をしていると、弟子達が集まってきた。
「じゃあそろそろ出発するか」
「「「「「「はい!」」」」」
俺は弟子達を引き連れて、街に繰り出した。




