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341.ワカチ出発

今日はワカチを出て、王都を目指す。

馬車で10日らしいので、フリードなら少し早く到着するだろう。

余裕を持った日程だったから、入学式よりもだいぶ早めに王都に着きそうだ。


昨日があまりにも豊作だったので、午前中は散策をして午後に出発予定だ。


「カシム」

「ん?」

「セフィーナさんとカレンさんの訓練を弟子達で見てほしいんだけど」

「わかった。何で戦えばいい?」

「武器と素手。ギリギリまで手出しはなしで」

「わかった。任せて」


俺は採取を本気でやるため、訓練を弟子達に頼んだ。


▽ ▽ ▽


『スキルスロット』の空きには『騎乗』を入れていた。

王都に入るときには『隠蔽』で『ガチャ』を隠す必要があるから、王都ではフリードに乗ってあげれなくなるので移動中にたくさん乗ってあげようと思っている。



俺とゴーレはフリードに跨り、山の反対側を目指した。


「花でも根でも実でも何でも見つけたら教えて」

「わかりました」

ヒヒーン!

ジジジジジジジ!


山を駆け抜けるフリードはものすごく楽しそうだった。

モンスターで遭遇しても、フリードとノコとライムが殲滅していく。


「泊まって!ゴーレ、あそこの花が気になる」

「はい」

ゴーレはすぐに花の採取をして戻ってきた。


○クロワカチソウ

 食用不可

 黒い綺麗な花が咲く。


「うーん。綺麗だけどわざわざうちで作る必要がないな」

「植え直してきます」

ゴーレはしっかり根から採取してくれるので安心できる。


「フリード。美味しそうな匂いを探してみよ」

ヒヒーン!

フリードは鼻をひくひくさせて進んでいく。



俺達が匂いで探している間に、ノコが実がたくさんついている植物を持ってきた。

「おー!オクラだ。これは持って帰ろう」

ジジジジジジジ


俺が頭を撫でると、ノコは嬉しそうにしていた。


▽ ▽ ▽


フリードの匂い探知は未だ収穫ゼロ。


「まあ美味しそうな匂いなんてしないか」

そんなことを言っていたら、フリードが急に走り出した。

「見つかったの?」

ヒヒーン!


フリードは止まると、鼻で土いじり始めた。

「ん?」

俺は降りて、フリードがいじっていたところを見た。


「ん?なんだこれ?石?」

俺は『鑑定』をした。


○黒トリュフ

 食用可。

 香りがとても強いキノコ。

 地中で育つ。


「おートリュフ!食べたことないけどどうなんだ?」

俺はトリュフを手に取り、匂いを嗅ぐ。

「すげえいい匂い。マシューに頼めば、量産できるかな」


俺達は近くにあるトリュフをすべて取った。


▽ ▽ ▽


拠点に戻り、ゴトフの家とヤルクを『秘密の通路』で繋いだ。

一旦俺の家と繋いだが、ヤルクにゴトフの家を作ったらまた繋げ直そう。


「ゴトフ。先に王都に行っておくわ」

「はい。入学式で会えるのを楽しみにしてます」

俺達は馬車に乗り込み、ワカチ山を後にした。




▽ ▽ ▽




ワカチ山を出発して7日が経った。

残念ながら、セフィーナさんとカレンさんは戦闘系のスキルを取得できなかった。


ただ魔力量は段違いに増え、魔力操作も上手くなっていた。

新しい魔法も覚えたみたいだ。


カレンさんに至っては、『焼却処分』というスキルを取得して水も火も扱えるようになっていた。

魔力操作が本当に重要になってきた。



馬車は進み、遠くの方に大きな城壁が見えてきた。

カラッカの街とは比べ物にならない大きさだ。


「あれが王都ですか?」

「はい。そうです。来るのは本当に久々です」

セフィーナさんは少し嬉しそうにしていた。


「王都はどんなところですか?」

「街としてですか?」

「はい。街の仕組みとか?」

「あー」

セフィーナさんは王都の説明をしてくれた。



王都は王城を中心に円状に広がっている。

城壁は外側に1つと、平民が暮らすエリアと貴族が暮らすエリアの間に1枚ある。

東西南北にそれぞれ門があり、そこから王城に向かって道が続いている。


平民が暮らす平民街には畑や牧場があって、少数だが動物がいる。

店舗や料理店やギルド、それに学園も平民街にある。


貴族街はワイアットの貴族の全員の家がある。

領政が忙しい貴族は、家をほとんど空けていた。

高級宿や高級店が多く、平民街の人はほとんど訪れない。


「出来るだけ貴族街には近づきたくないな」

「お父様と会う時と国王様に会う時だけになると思いますよ。ゴトフ様はライル様のことを理解しているので、貴族街に呼ぶってことはないでしょうし」

「それなら安心です」

俺は王都では目立たないように生きようと心に決めた。


▽ ▽ ▽


門でステータスプレートを提示して王都に入る。

街の中心にはものすごく大きな城が建っていた。


「セフィーナさん。領主代行館もあれくらい大きくします?」

「本当にやめてください」

セフィーナさんは本気の嫌な顔をしていた。


「まずはカラッカ家に行きます。そこでお父様が用意した土地を購入して拠点を作りましょう」

「わかりました」

大通りをフリードはゆっくり進んでいく。

街並みは綺麗だし、人も多く賑わっている。

冒険者もちらほらいた。


「冒険者がいるってことは、モンスターとかも多いんですか?」

「いるにはいます。今のカラッカより少し多いくらいですかね。でもほとんど騎士団が対応するので、討伐依頼は少ない気がします」

「なるほど。冒険者がいるメリットが無い気がするな」

「いえ。護衛依頼があるので」

「あーそっか。貴族や商人の依頼だから、それなりに稼げるのか」

「はい」

護衛依頼なんてやりたくないので、王都では冒険者は封印だ。


セフィーナさんと話していると、カラッカ邸に到着した。

カラッカ領にあるカラッカ邸より小さめだった。


「お父様の執務室でいいと思いますので向かいましょう」

「はい。ゴーレ達は待ってて」

「わかりました」

「「「「はい」」」」

俺とセフィーナさんは執務室へ向かった。


執務室にはラドニークさんと渋めのおじさんが居た。

「おーセフィーナとライル、無事到着してよかった」

「はい。お父様。それにお久し振りです。チバラス公爵」

セフィーナさんは渋いおじさんにお辞儀をした。

チバラス公爵ってことは国王の弟でゴトフの父。


「おー。大きくなったな。それで、後ろにいるのが息子を唆したライルか?」

「え?」

チバラス公爵は俺をじっと見た。


「チバラス公爵。ライルにそういう圧をかけると噛みつかれますよ」

「ハッハッハー!最近噛みつかれることも無くなったから楽しみだ」

チバラス公爵は笑っている。

多分ガキだと思ってからかわれている。


「えー。ライル商会商会長のライルです。ゴトフを唆したつもりはないですが、そう言われるのであれば事業を解体してもいいと思ってますが」

「ハッハッハ!すまんすまん。息子が案内役として挨拶に行ったと思ったら、大量のグリフォンと共に帰ってきたんだ。驚かされた分の仕返しの冗談くらい許せ」

「はい。こちらも冗談なので」

「ハッ!このガキは凄いな、ラドニーク」

「そうですね。頭が切れますね」

ラドニークさんとチバラス公爵は和やかに話している。


「ライル」

「はい。なんでしょうか」

「息子からお前の所の商品をもらった。妻も喜んでいた、これからも購入することはできるか?」

「あーラドニークさん経由をしていただくか、ゴトフ経由なら可能かと。ヤルクの街の店舗にも売っているので、そちらでの購入も可能です」

「じゃあ息子に頼むとするか」

チバラス公爵は何を考えているか全然わからなかった。


「チバラス公爵はどうしてこちらにいらっしゃったんですか?」

セフィーナさんが切り込んでくれた。


「ああ。ライルのことを聞きに来たんだよ。カラッカ家が後ろ盾になっていると聞いたし、ゴトフとやる事業に関しての金関係にはカラッカ家は口を出さないと言うし。どういう考えなのか聞きに来たんだ」

「そうなんですね。それでわかりましたか?」

チバラス公爵はニヤッとした。

「ああ。ライルを直接見て感じ取った。カラッカ家程ではないが、ゴトフ伝手で支援はさせてもらおう」

まさかの提案だった。


「ありがとうございます。支援は大変うれしいのですが、カラッカ家に後ろ盾になっていただいているので、支援していただくかはラドニーク様のご判断をお願いすることになります」

ここで支援を勝手に受けるのは、後ろ盾の顔を潰すことになるので、ラドニークさんに丸投げをした。


「問題ない。私としてもチバラス家と共にやって行ければと思っています」

ラグがない。

これは俺達が来る前に話がまとまってたな。


「ありがとうございます」

俺はこのやりとりの必要性を感じなかったが、これが貴族なんだと思って飲み込んだ。




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