340.ワカチ山で大収穫
俺はセフィーナさんとカレンさんを連れて、ワカチ山に来ていた。
弟子達とゴーレとフリードとノコは別行動。
ライムはグリフォン達と拠点で戯れている。
「しっかり攻撃を防ぐ!」
「はい」
セフィーナさんはフォレストフォックスから攻撃を受けた。
2撃目はメイスでギリギリ防ぐことができた。
「カレンさんは『洗剤作成』で攻撃」
「はい」
カレンさんの『洗剤作成』は中々ぶっ壊れていた。
モンスターを汚れと認識すると、それを除去できる適切な液体が手から出てくる。
さすがに1発では倒せないが、洗い落とさない限りジワジワとダメージが入る。
問題点があるとしたらカレンさんの命中率の低さだ。
「しっかり狙って!当たらなかったらすぐ武器を持って攻撃!」
「はい!」
カレンさんはモップを振り回すと水が出てきて、フォレストフォックスを包んだ。
フォレストフォックスは次第に動かなくなった。
窒息死だ。
2人は討伐証明を剥ぎ取って、俺の元にやってきた。
「セフィーナさんはだいぶ良くなりました。ただ攻撃することに集中しすぎです。防御も考えてください」
「はい。気を付けます」
「癒しの風!」
「ありがとうございます」
俺の話が終わるとセフィーナさんはメイスで素振りを始めた。
「カレンさんは命中率をあげよう」
「はい」
「『水洗い』が結構強いので、うまく水を扱えるように」
「はい。練習します」
カレンさんがモップを振ると水が大量に出て、地面がぐちょぐちょになった。
『水洗い』の水は魔力を消費しているみたいなので、ほぼ魔法と言っていいだろう。
カレンさんも数日前から水を出し続ける訓練を追加でやってもらっている。
グルルルル
鳴き声が聞こえた方を見ると、さっきのフォレストフォックスよりも大きな個体が居た。
たぶんボスフォレストフォックスだろう。
「俺が戦いますので、2人は見ていてください」
俺がそういうと、2人は少し距離を取った。
左のブレスレットに魔力を込めて、[武鬼]に着替える。
まずは斧からだ。
武鬼斧を投げて、ボスフォレストフォックスの後ろにワープをする。
斧はしっかりボスフォレストフォックスに刺さる。
怯んだ瞬間、もう片方の武鬼斧を振り降ろす。
ギャアアアオオオ
さすがガルスタンの武器だ。
尻尾がきれいに切り落とされた。
投げた武鬼斧が手元に戻り、鬼潰棒に切り替える。
「ワープ!」
殴る。
「ワープ!」
殴る。
「ワープ!」
殴る。
ワープを繰り返しながら殴り続ける。
最後に正面にワープをし、鬼潰棒を両方振り降ろす。
鈍い音がして、鬼潰棒がめり込んでいた。
「こんな感じなんですけど、参考になりましたかね?」
「「なりません!」」
やっぱり『ワープ』無しじゃないと参考にならないみたいだ。
だけど[武鬼]は機動力のサポートが全然ないから、どうしても『ワープ』をしたくなる。
装備に合わせた戦い方も考えないとな。
▽ ▽ ▽
「綺麗ですね」
「そうですねー」
ワカチ山には小さな滝があって、川が流れていた。
冬なの自然豊かなのは、異世界だからだろうか。
「ライル様。ゴブリンがいます」
水場にゴブリンが2匹いた。
「数も少ないですし、素手で戦いましょう。しっかり『体術』取得を意識してください」
「「わかりました」」
2人は武器をしまって、ゴブリンに向かって行った。
ギャギャギャ!
ゴブリンは2人に襲い掛かる。
2人は攻撃を素手で弾こうとするが、力が足りず逸らすことしかできていない。
長期戦になるのはわかっていたので周辺を警戒しつつ、俺は散策をすることにした。
ワカチ山に入った理由は訓練の為だけではない。
ヤルクにない植物を見つけることだ。
俺は水場を見てみると、水の中にキノコが生えていた。
すぐに『鑑定』を使う。
〇苔キノコ
水の中で育つキノコ。
食べることはできるが、味はほとんどない。
火傷を治す効果がある。
〇ワサビ
綺麗な水場で育つ。
茎や葉などを食べることが可能。
辛みがとてもある。
「ん??ワサビ!!」
苔キノコの『鑑定』をしようとしたら、近くにあったワサビを見つけることができた。
「これは『畑作成』のレベルを上げた方がいいな。田んぼとか水田を作らないとワサビの量産ができない」
自分達で作ってもいいけど、どうしても『秘密基地』上振れを期待してしまう。
とりあえず俺は水場に入り、苔キノコとワサビを回収した。
「終わりました?」
「はい・・・。時間は掛かりましたがなんとか」
「頑張りました」
カレンさんはセフィーナさんに『クリーン』をした。
「ライル様は何をしてるんですか?」
「火傷に効くキノコを見つけたんです。シスターミアナに渡したら薬にしてくれるかも。それに素晴らしい植物も見つけたから期待しておいてください」
「楽しみです」
俺達は山の中を進む。
そこまで高い山ではないが、整備されてないので歩きにくい。
「次は俺が投げるから、みんな避けろよ」
「「「うん!」」」
近くで弟子達の声が聞こえてきた。
「合流しますか」
「そうですね」
俺達は声が聞こえる方へ向かうと、カシムがララとフィンとフォンに何かを投げている。
それを3人はギリギリで避けていた。
訓練兼遊びなのだろう。
「カシム、何投げてるの?」
「師匠。訓練に向いてるのが、ここにいっぱい落ちてるんだ」
カシムはトゲトゲしたものを持っている。
「え?それって」
俺はすぐに『鑑定』をした。
「やっぱり栗だ!カシム。このトゲトゲは回収しておいて」
「え?これ食べれるの?」
「食べれるし、ケーキの材料にもなるよ」
「よっしゃ!」
カシム達は急いで投げた栗を取りに行った。
▽ ▽ ▽
拠点に戻ってきた。
ゴーレとフリードとノコは先に帰ってきたみたいだ。
「マスター。フリードとノコがこれを見つけました」
ゴーレが取り出したのは、イモと見たことのない植物だった。
○ワカチイモ
食用可能なイモ。
ワカチ山にのみで採取可能。
甘みもなく、香りも少ない。
○ゴマの実
食用不可。
調理をした種は食用可
「ワカチイモか。サツマイモみたいだけど味は期待できなそう。ドリーに頼んで『品種改良』できるか見てもらうか」
「わかりました。ヤルクに戻ったら手配しておきます」
「ゴマは乾燥させたら食べれるはずだし、油にもなるはず」
「わかりました」
俺はゴーレに苔キノコとワサビと栗も預けた。
▽ ▽ ▽
俺達用に作った部屋でゆっくりしている。
部屋の端っこでこっそりステータスを見る。
ステータスには『テイム』があった。
「よかった。マジでよかった」
ここ最近の一番の悩みだった。
みんなの前では平然を装っていたが、結構焦っていた。
魔物学は『隠蔽』でどうにでもなるだろうけど、そういうことではない。
『テイム』の取得方法をみんなに教えてる俺が取得していないとか、アホすぎる。
恥ずかしすぎる。本当に。
マジでよかった。
今日はぐっすり寝れそうだ。




