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338.秀才と達人

俺達はヤルクを出発した。

『秘密の通路』でカラッカの街に行き、そこから出発だ。



メンバーは俺・ゴーレ・セフィーナさん・カレンさん・カシム・ララ・フィン・フォンだ。

マジック馬車はフリードが引き、空の警戒はノコ、癒やし枠のライム。

御者台にはゴーレに座ってもらう。


俺はセフィーナさんとカレンさんの戦闘訓練をするためにスキルの確認をさせてもらった。


まずはセフィーナさんから。

エクストラスキルは『愛情深い秀才』。

勉学の効率が良くなる。

人の為に行動する時にのみ、自身の能力が上昇する。


「おお。なんかセフィーナさんっぽいエクストラスキルだ」

「そうですか?まあこれのおかげで学園が卒業できたのかなとは思っています」

「ここ最近はライル商会やヤルクの人のために働いてるから、ずっと上昇していたんですかね?」

「たぶんそうです」


魔法は水魔法だが、レベルが全く上がってない。

これは訓練し甲斐がある。


俺は通常スキルの確認もした。

「結構スキルが多い。『礼儀作法』とか『舞踏』もある」

「多いですか?最近見てなかったので」

「え!」

「なんです?」


セフィーナさんのスキルの中に『テイム』があった。


「セフィーナさん。『テイム』取得してますよ」

「え?え?」

セフィーナさんは気付いていなかったようだ。


まあ冒険者みたいに自分の成長を毎日確認するような職業じゃないと、ステータスなんか見ることは少ない。


「これは出発前に知りたかったー」

「すみません」

セフィーナさんは申し訳なさそうに頭を下げた。


セフィーナさんの『テイム』取得は嬉しいが、少し心が痛かった。


「確か、剣の稽古を昔してたって聞いた覚えがあったんですけど」

「はい。学園で選択はしてませんでしたが、空き時間に少しだけ教わってました」

「スキルを取得してないってことは、剣術が合わなかった可能性がありますね」

「私もそう思っていたので、今回はメイスを持ってきています」

そういうと右手にスマートなメイスが現れた。

セフィーナさんも鬼何とかシリーズを着ているのだろう。



次はカレンさんだ。

エクストラスキルは『掃除の達人』。

やはりメイドだからかレベルもだいぶ上がっていて、『掃き掃除』『拭き掃除』『水洗い』『汚れ除去』『洗剤作成』のスキルも取得していた。


「『掃除の達人』レベルが5ですね。他のスキルのレベルも上がってますし」

「はい。毎日掃除をしてますし、領主代行館は広いので」

「すみません」

「違いますよ!文句じゃないですから!」

カレンさんは焦っていた。


通常スキルは『礼儀作法』『掃除』『クリーン』。

とても親近感が沸いた。


「やっぱり『掃除』を使うと身体が勝手に動くんですか?」

「え?どういうことですか?」

「あ。なんでもないです」

俺の『掃除』とは違うみたいだ。


「カレンさんは何の武器を使いますか?」

「私はこれが一番使いやすくて」

そう言って手に現れたのはモップと箒だった。


「え!」

「ガルスタン様にミスリルで作っていただいたんです」

「そうなんですかー」


何を一体作っているんだ?

ミスリルの箒の先端はエルダートレントの枝を使ってないか?

モップの先端はなんだ?シモン糸は水を吸いにくいから違うと思うけど。

たぶんこの世界で一番高級な掃除道具だろうな。


「わかりました。戦い方を考えるんでちょっと待っててください。カシムとララはモンスターが居たら教えて」

「「はい」」

カシムとララは返事をすると場所の屋根に上がって行った。


▽ ▽ ▽


「師匠!ゴブリンがいる!」

カシムが叫んだ。


「ありがと。じゃあ2人共、行きましょう」

「「はい」」

馬車が止まり、外に出るとゴブリンが3匹いた。


「カシム、本隊は?」

「え?」

「本隊は?」

「師匠。これが本隊だよ」

「え?」

俺が困惑していると、ゴーレが口を開いた。


「マスター。大量発生じゃないので、この数が普通です」

「まじかー」

俺は頭を抱えた。

3体じゃ訓練できない。


危険地域ならまだ群れでいるから訓練になるが、さすがに3匹は想定外。


「えーセフィーナさんは魔法で攻撃し続けてください。カレンさんは近づいて攻撃しましょう」

「「はい!」」

セフィーナさんはひたすらアクアボールを当て続け、カレンさんが箒で攻撃をする。

あんまりゴブリン達にダメージが入っていない。


「カレンさん。ゴブリンは汚れです。掃除するつもりでスキルを使いましょう」

「は、はい」

返事をして、箒を振った。

箒に当たったゴブリン達は吹き飛ばされた。

当たり所が悪かったのか、2匹は動かなくなった。


「セフィーナさん。魔法をやめて、メイスで攻撃しましょう」

「はい」

セフィーナさんは倒れているゴブリンに向かってメイスを振り降ろした。

メイスはゴブリンの頭を見事に破壊した。


「よし。フィンとフォンは討伐証明の剥ぎ取りをお願い」

「「はい!」」

「カシムとララは周辺警戒」

「「はい!」」

「セフィーナさんとカレンさんはこちらに」

「「は、はい」」

2人共、顔が少し青ざめてた。


「いい戦闘でした。体調は大丈夫ですか」

「すみません。もう大丈夫です」

「私も大丈夫です」

セフィーナさんもカレンさんも立ち直るのが早い。


「えーっと、今後もモンスターとの戦闘をしてもらいます。セフィーナさんは魔法を大量に使うこと、カレンさんはモンスターは汚れだと思ってエクストラスキルを使っていきましょう」

「わかりました」


カレンさんのエクストラスキルは全然戦闘に使えそう。

セフィーナさんは地獄の連続魔力枯渇をさせるしかないな。


討伐証明が終わり、みんな馬車に乗り込んだ。


「セフィーナさん」

「はい。なんでしょう」

「俺が良いって言うまで、外に向かってアクアボールを放ち続けてください。魔力が無くなるとクラっとしますが、すぐに治ります」

「わ、わかりました。アクアボール!アクアボール!」

セフィーナさんは俺の指示通り、アクアボールを外に放ち続けた。


▽ ▽ ▽


今回の移動では街や村には寄らない。

理由はセフィーナさんが居ると騒ぎになる可能性があるのと、子供だからって舐めるやつとか居たらめんどくさいからだ。

ゴーレとフリードのおかげで夜も進める。

だからわざわざ宿を使う必要もない。


ここら辺はヤルクと変わらないから、珍しい野菜などもないだろう。


セフィーナさんがとても熱心だ。

あれからずっとアクアボールを放ち続けている。

食事もサンドイッチを所望し、魔法を使いながら片手で食べてた。



「よし。ここらへんで野営にしようか」

「「「「はい!」」」」


弟子達はテントを用意し始める。

馬車で寝ることを勧めたが、冒険者として野営をしっかりやりたいそうだ。


カシムとセフィーナさんとカレンさんが何かを話している。

「セフィーナちゃんもカレンちゃんも魔法を操作するのを覚えた方がいいよ。こういう訓練をしてるの見たことあるでしょ?」

カシムはエアロボールを出してお手玉を始めた。


「リリアン様が教えていたのを見たことがあります」

「これをやると魔法の命中率も上がるから」

「わかりました。やってみます」

「ありがとうございます」

セフィーナさんとカレンさんは魔力操作の訓練を始めた。


「魔力操作か」

最近やっていた訓練は、まさに魔力操作だ。

俺は魔力操作ができるから、関係ないと思っていたが初心に帰るか。


森帝のロッドを手に握る。

森帝のロッドは魔力操作の能力をものすごく上げる。


目を瞑り、魔力が全身に循環するようなイメージをする。

肩、肘、前よりも広範囲にできている。

集中して指先に向かおうとした瞬間。


ジジジジジジジジジジ!

ノコがやってきた。

たぶんモンスターが現れたのだろう。


ガウガウガウ!

オオカミ系のモンスターの声がする。


「みんな!」

シュッシュッシュッ!

俺がみんなに指示を出そうとした瞬間、カシムが矢を放った。


「え?」

「師匠!倒したから討伐証明剝ぎ取ってくる!」

「あ、うん。ありがと」

カシムは森の中に入って行った。


俺は驚いた。

カシムがめちゃくちゃ強くなってる。

強いというか、攻撃が速い。

常に気を張ってないと、あの反応スピードで攻撃は無理だ。


まずい。

弟子達に追いつけない。


俺はむきになって、魔力操作の訓練をし続けた。




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