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336.妥協できない

俺はアヤノと共に発酵所に来ていた。


「楽しみだな」

「私もお試しで色々作ってみたので、失敗してたらすみません」

「いいよ。俺が試すよりアヤノが試した方が成功率高そうだし」

「わかりました。頑張ってみます!」


俺とアヤノは出来上がったものを確認することにした。


「まずは味噌ですね。私も別で3つ作りました。ライルさんの作ったものから見てみましょう」

俺は大豆を入れたタンクの蓋を開けた。


「うお!味噌がちゃんとできてる。知ってるものより色が濃いな」

俺とアヤノは1口食べてみる。


「うん。これこれ」

「米味噌で甘みのある赤味噌ですね」

「うーん。そうなんだー」

米味噌?赤味噌?

俺は考えるのをやめた。


「私は米味噌で辛口の淡色味噌を作りました。もしかしたらこっちの方が見慣れてません?元の世界でいう信州味噌を意識して作りました」

アヤノはタンクの蓋を開けた。

「あーこの色!これの方が馴染みある」

「ですよね。単品でも使えますが、さっきのと合わせてもいいかもしれません」


全く味噌の知識がなかったが、色々試してもいいかもしれない。


アヤノはそのほかに、元の世界でいう八丁味噌のようなものと甘口の白味噌を作っていた。



「あとは納豆!」

タンクを開けると納豆の香りがしてきた。

「これは最高だ!」

「本当にそうですね。これで白米があれば」

「限界が来たら、アースにタラン米を買ってきてもらって、我慢して食べよう」

「そうですね」

納豆も問題なかった。

パスタとかにしたらいいだろう。



アヤノが開けたタンクには肉塊が入っている。

「これは?」

「オークの生ハムです。普通のオーク肉とモモ肉とロース肉を入れました」

「いいじゃん!生ハムって保存食みたいなの聞いたことある」

「そうですね。普通のオーク肉の生ハムだったら、冒険者に人気でそうですね」

「これは切らないといけないから、あとで食べよう」

「はい」

生ハムがまさかできるなんて。

ワインとの相性はいいんじゃないか?



次のタンクを開けると辛い香りがしてきた。

「キムチ?」

「はい。白菜がなかったので、ネギと大根とホウレンソウで作りました。それとバナナエビでも試してみました」

「おお!これは鬼火亭行きだね」

「はい!」

俺はバナナエビキムチを1口食べる。

「美味い!これいいよ。鬼乃屋でもいいなこれは」

バナナエビキムチは癖になる味で、どんどん食べ進めてしまった。



別のタンクを開けようとしたら、アヤノが止めた。

「えーこのあとのは全部チーズです」

「え?全部チーズ?あと7個あるよ」

「はい」

アヤノは凄く嬉しそうにしている。


「作ったのは、モッツァレラ・クリームチーズ・カッテージチーズ・カマンベール・ゴーダ・チェダー・パルメザンの7つです。おつまみやパスタなどに使えそうなものからスイーツにも使えそうなものまで、さまざまな種類を作りました。これのおかげでスフレ・ベイクド・ニューヨーク・レアのチーズケーキができるのです!」

アヤノは早口で説明をしてくれたが、理解するまで時間がかかりそうだ。


「とりあえずいろんなことに使えるってことだよね?」

「はい!」

スライスチーズが主流だった俺はチーズも勉強しようと思った。



発酵所はそれなりに上振れの様で、出来上がったタンクの蓋をいじると勝手に梱包された。


味噌と納豆は見覚えのある容器に入っていた。

多分マジック容器製造機みたいな機能で作ったのだろう。

その他は残念ながら容器を持参しないといけないみたいだ。



「あれ?そういえばバニラは?」

「あ!我慢できなくて昨日回収して使ってます」

バニラビーンズも問題なかったみたいだ。


▽ ▽ ▽


とりあえず濡れてないチーズと生ハムはそのままマジックバッグにいれた。

汁気の多いものは、蓋付きの牛乳タンク10Lにいれ、マジックバッグにいれた。


「よし。アヤノはヴァイオレットを俺の家に連れてきて。俺はアースを連れてくるから」

「え?はい。何するんです?」

「妥協をする俺を軽蔑しないでほしい。俺は納豆ご飯が食べたい」

「私もです!」

「タラン米なのは妥協だが、どうしても食べたい」

「はい!すぐに呼んできます」

アヤノはそういうとチョコでできた馬を出して、それに乗って行った。


「え?なんかかなりレベルアップしてない?」


▽ ▽ ▽


自然と涙が出てきた。

ヴァイオレットとアヤノはバカ泣きだ。

アースは静かに涙を流した。黙っているとかっこいい。


納豆ご飯を食べる為に、俺は全力を出した。

タラン米を炊くのにコンブを使った。

ネギも準備し、生卵も用意した。

マヌセラに行ったら、まだ不格好だが板ナッツ海苔もできてたので持ってきた。


納豆ご飯の食べ方は人それぞれ。

ライル商会のすべての調味料も揃えた。


「みんなどう思う?」

「何がですか?」

「これの商品化」

みんなは黙った。


「俺はしたくない」

「わかるっす」

「うん」

「そうですね」

みんなも泣きながら食べているが、俺と同じことを思っているみたいだ。

白米の方が断然美味しい。


「納豆を広めるのはいい。パスタやうどんにも使える。だけど納豆ご飯は駄目だ。妥協した未完成品をみんなに食べさせたくはない」

「「「「うん」」」」


4人の中で妥協の納豆ご飯は己が欲に負けた時にだけ食べる料理に認定された。


妥協とわかっていても、俺達は3杯ずつしっかり完食した。


▽ ▽ ▽


納豆のことで忘れていたが、アヤノのレベルアップが気になった。


「どれだけスキルレベルが上がったの?」

「結構上がりました」

俺はアヤノにステータスを見せてもらうことに。


【魔法】

火魔法 LV1

→プチファイアLV1

水魔法 LV1

→アクアボールLV1


【スキル】

○エクストラスキル

 チョコナイトLV6

 →チョコの戦士LV4

 →チョコの盾 LV3

 →チョコの剣 LV2

 →チョコの鎧 LV1

 →チョコの馬 LV2

 →味調整


○通常スキル

 共通言語

 自動翻訳

 菓子作り

 料理

 見極め

 剣術


さすが転移者。

スキルの数が思っているより多かった。


「『剣術』も持ってるんだ」

「はい。召喚されてから訓練させられましたから」

勇者として少しでも使えるようにってことだろう。


「『チョコの戦士』とか『チョコの馬』は溶けないの?」

「レベルが上がって溶けにくくなりました。最初はすぐ溶けてたんですが」

「なるほどね」

アヤノも自衛はできそうなので安心した。



「明後日王都に向かって出発するから、明日従業員集めてパーティをしようと思う」

「そのときに発酵食品お披露目を?」

「うん。だからメニュー開発手伝って」

「わかりました」

今回は俺とアヤノのみでメニュー開発。

他の料理人達には俺が王都に行ってから発酵食品に触れてもらう。

多分、今まで以上に料理の幅が広がるはずだ。




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