335.スキル取得の関連性
まさか『双棍術』を取得するとは思わなかった。
投げナイフや短剣の方が使っている期間は長い。
始めて使った2本の棍棒でなぜスキルを取得できたのか。
俺は1つの仮説を立てた。
『体術』を取れば戦闘系のスキルが取りやすくなる。
これは前から考えてた説だ。
そして今回の『双棍術』は既に『棒術』を取得しているからではないか。
武器に類似部分が多いから、すぐに取得ができたんじゃないか。
この仮説が正しければ。
二刀流の短剣か二刀流の手斧とかが次は取りやすいのではないか?
俺はヒューズさんに仮説を伝えて、今日のヒューズさんとの訓練では二刀流の手斧を使うことにした。
▽ ▽ ▽
現実はそんなに甘くなかった。
1日で取れるとは思ってなかったが、少し期待しちゃっていた。
気持ちを切り替えて、ガッツさんとの訓練だ。
最近投げようとしているのが気になるらしく、投げるのではなく相手の体勢を崩す訓練もすることになった。
前世で見たことのある古武術とか合気道みたいな感じだった。
中々うまくいかないが新鮮でよかった。
当然殴り合いもした。
▽ ▽ ▽
あれから3日経った。
まさかこれほど上手くいくとは思わなかった。
まずは『双斧術』と『投擲術』を取得した。
『双棍術』からの『双斧術』の関連性だろう。
『双斧術』で手斧を投げたりしていたので『投擲術』に繋がったのだろう。
『短剣術』は全く取得が出来そうもなかった。
素質と既に取得しているスキルが関係しているのは確定だろう。
それから、せっかくガルスタンが作ってくれたので2つの槌に鎖が付いている武器を使ってみた。
これは扱いづらい。
何回顔に槌を当てたことか。
どうにか扱ってやろうとしていたら『鎖術』というスキルを取得した。
その瞬間、目の前にディスプレイが現れた。
[スキルを圧縮しますか?]
ガッツさんとの模擬戦中だったので、しっかり読まずにタップしたら。
ステータスが大きく変わっていた。
【スキル】
○エクストラスキル
ガチャ(封印)
○パッシブスキル
スロット1: スキルホルダー
スロット2: 料理
スロット3: 体術
スロット4: 武器術
→棒術
→双棍術
→双斧術
→鎖術
→投擲術
スロット5:
○通常スキル
スロット1: 風魔法LV5
→エアショットLV8
→ウィンドアローLV7
→エアアームLV6
→癒しの風LV6
→ウィンドカッターLV5
スロット2: 秘密基地 LV10
→畑作成LV4
→柵作成LV6
→小屋作成LV13
→厩舎作成LV4
→道作成LV4
→秘密の通路作成LV2
→芝生作成
→魔力線作成
→建築物移動
→設置アイテム移動
→ダンジョン移動
→植物成長促進
→地面硬化
→癒やしの空間
→幸福の空間
→奇跡の空間
スロット3: 鑑定
スロット4: 掃除
スロット5: クリーン
スロット6: 暗視
スロット7: 水泳
○スキルホルダー
隠蔽
騎乗
頑張って取得したスキルが『武器術』というスキルにまとめられていた。
これは『スキルホルダー』の力みたいで、俺よりも武器系のスキルを持っているヒューズさんは『武器術』を持っていなかった。
最初は便利だと思っていた『スキルホルダー』も『ガチャ』がない今は邪魔だ。
外そうか悩んだが、外してスキルが無くなるのは嫌だったのでこの縛りで頑張るしかない。
▽ ▽ ▽
王都へ行く日が3日後に迫った。
弟子達の誰が同行者になったのかを確認しようと思って探していたら、危険地域にいるみたいだ。
デスヘルの冒険者ギルドに顔を出す。
すると貢献度の順位表が張られていた。
[1位:光剣の輝き 2位:鬼将軍の重鎧 3位:大獅子の牙]と書かれていた。
前にマリーナさんから聞いたのと変動がなかったみたいだ。
マリーナさんに挨拶に行くと、なぜか呆れた表情をされた。
「あれはいつまで続くの?」
「何がですか?」
「弟子達の討伐勝負」
「討伐勝負?」
全く身に覚えがなかった。
「え?ライルくん関係ないの?」
「はい。みんな何をしてるんですか?」
「このところずっと、危険地域のモンスターの討伐数を競ってるのよ。みんなが張り切ってるおかげで素材が物凄く溜まってて」
「え?なんでそんなことしてんだ?」
俺は原因が全く分からなかった。
マリーナさんと話していると、ちょうどチャールズ兄がきた。
「チャールズ兄!討伐数を勝負してるの」
「あーライル。そうだよ。王都へ行く同行者をそれで決めるんだ。僕達は残念だけど無理そうだな」
いろいろ繋がった。
「あっ!危ないことはしてないからね。ちゃんと危険じゃないように組み合わせも決めたから」
「本当に?」
「うん。本当に」
チャールズ兄が言うなら信じよう。
もしもソロでやってたなら大説教をするつもりだった。
「いつまでやるの?」
「今日の日が落ちるまでかな」
「あー。じゃあ俺はここで待ってようかな」
俺は弟子達の帰還を待った。
▽ ▽ ▽
同行者争奪戦はカシム・ララ・フィン・フォンチームだった。
ルークとチャールズ兄はライドンもいるので2人チームだったらしく、残念ながら最下位だったようだ。
「危ない目に合わないように色々考えてチーム決めをしたらしいから今回は許すけど、危険なことは本気で禁止だからね」
「「「「「「「「はい」」」」」」」」
「カシムとララとフィンとフォンはよく頑張りました。3日後出発だから準備をしておいて」
「「「「わかりました」」」」
俺は全員をちゃんと褒めて、ヤルクへ帰った。
マリーナさんは危険地域のモンスターが大量に減ったから、定期的にやってほしいって言っていた。
さすがに俺が監修しないと心配だ。
▽ ▽ ▽
ヤルクに帰るとアヤノが待っていた。
「あれ?俺に用事?」
「はい。ライルさんできましたよ」
アヤノはなぜかドヤ顔だった。
「何が?」
「発酵食品ですよ!」
「あー忘れてた!出来たの?」
「はい」
今日はさすがに疲れていたので、明日まとめて確認すると約束をした。
▽ ▽ ▽
俺はベッドに座った。
実は今日、衝撃の事実を俺は知った。
知ったというか忘れていた。
忘れていたというより騙されていた。
嘘を付くと、いつの間にか自分も本当のことだと思い込んでしまうみたいだ。
落ち込んでいる俺を見て、ゴーレが声をかけてくる。
「マスター。いかがなさいました?」
「あー。話聞いてくれる?」
「はい」
「笑わない?」
「笑うわけがありません」
「動揺もしない?」
「は、はい。動揺もしません」
「俺って『テイム』取得してない」
「え!」
ゴーレは確実に動揺していた。
「久々にステータスをしっかり見たけど、『テイム』取得してない」
「あ!モンスタースナックですか?」
「うん。フリードもノコもライムもみんなスナックでテイムした。ノコ虫軍はノコの配下みたいなもんだし」
「そういえばそうでした」
「みんなにスナックの説明をしないようにするために、『テイム』を取得しているって嘘を付いていた。その嘘をいつの間にか俺も信じてしまってたみたい」
「ああ。それは、なんと言えばいいのでしょうか」
珍しくゴーレも困惑している。
「なんで取得してないんだ」
「そうですよね。取得しようとしていないからとかでしょうか」
「うん。その可能性はあるけどさ、あんなにみんなと過ごしているのに」
『テイム』を取得していると思い込んでいたことと、あんなにモンスター達と仲良くしているのに取得できていない事実で何とも言えない気持ちになった。
「明日から俺も頑張ってみるよ」
「出来ることがあればお手伝いします」
「ありがとう」
俺はベッドに横たわり、枕を涙で濡らした。




