331.マヌセラ案内
今日はゴトフをマヌセラに連れてきた。
「あー綺麗ですね」
家から見える海を見てゴトフは叫んだ。
「海が塀で囲われてますけど、あれもスキル?」
「そうだね。海には海の植物を育ててる畑があるからね。モンスターに荒らされたくないし」
「なるほど」
ゴトフは興味津々の様だ。
「海は初めて?」
「いえ。チバラス領の南にあるトカザック領が漁業をやっていて、少量ですが王族に海産物を献上する際にチバラス領を通るんです。その関係で何度かトカザックの海には行きました」
「へー。やっぱり他にも漁業が盛んな場所があるんだな」
「元ソブラ領の一部がカラッカ領になったので、トカザックはお隣の領ですよ。ちなみにチバラスも隣領です」
「へぇー。俺、あんまり地理関係わかんなくて、そういうの教えてくれるの助かるよ」
「これくらいならいつでも教えますよ」
ワイアット王国で漁業が盛んなのは、トカザック領とザダ領らしい。
本当に少量だが王都に海産物を卸しているが、価格が高いので王族や上流貴族にしか回らないらしい。
マジックバックに入れておけば日持ちもするから余裕そうだが、うちのマジックバック所持数が多すぎるらしい。
内容量も少ないのなら出回っているらしいが、大きいのは高価すぎてほとんど出回っていないらしい。
ガスター商会から奪っておいてよかった。
容量の少ないマジックバックで海産物を運ぶが、高価なので盗賊に狙われることが多いという。
なのでトカザック領はチバラス領の協力を得て、安全に王都に運んでいるらしい。
「学園にトカザック子爵の孫がいます。ライルが予定通りに飛び級すれば同級生です」
「そっかー。いろんな貴族がいるんだもんね」
「貴族は嫌いですか?」
ゴトフは心配そうに聞いてきた。
「うーん。俺が平民だから、あんまり関わりたくないのは事実。でも今のところ8分の7は良い貴族だった」
「平民で8人も貴族と会ってるのは凄いですけどね」
「だってアイザックさんとセフィーナさんは半ライル商会だし、クララさんとフィーゴさんは元か?」
「クララ様は一応貴族です。フィーゴさんは確かサルバッタ家の方と聞いたので、元貴族ですね」
「ラドニークさんは後ろ盾でしょ?オステオさんは貴族?」
「オステオ様は貴族です。ヤイダラール家の次男だったはずです」
「ゴトフにクラリ様でしょ。ほら8分の7は良い人!クソだったのはソブラだけ」
「ライルは運がいいのかもしれないですね」
「やっぱり学園にもいるかな?」
「学園には平民の方もいるので、貴族の権力を振りかざそうとする人間はいますね」
「まあムカついたら半殺しにするからいいか」
「やめてくださいね。案内役の僕達も怒られるんですから」
ゴトフは焦っていた。
「弟子達も入学するからさー。獣人もエルフも居るから、差別思想には徹底的にやるよ?本当にやっちゃいけない相手の時だけ止めて」
「え!弟子の皆さんも入学するんですか!!」
「あれ?あーそうか。ゴトフがヤルクに来てから、ラドニークさんに頼んだんだった」
「楽しみですね!」
ゴトフはなぜか嬉しそうだった。
「デスヘルでジェイクさんに指導を受けているときに何度か来てくれたんです」
「まあ歳も近いし仲良くなるか。ん?ゴトフって何歳?」
「10歳です」
「あー年上なんだねー」
「なんですか?」
もうどの年齢にも同じように接しているから、年上だとしても何も変わらない。
ゴトフと話しながら歩いているとノヴァ達がやってきた。
「ライル!何してんの?」
「あーノヴァ達か。ゴトフ、この人達はうち所属の冒険者【海獣の高波】。後ろにいる3人は巨人族なんだ」
「え!巨人族なんですか!」
「マジックアイテムで身体を小さくしているんだよ」
「本当にライル商会は凄いですね」
ゴトフはまた驚いていた。
「ライル。それでそちらは鬼火亭に来てた貴族様だよな?」
「あーそう。一応ライル商会の従業員になったよ」
「「「「えー!!」」」」
ノヴァ達はものすごく驚いていた。。
「驚いてないで自己紹介」
「えっとうちはノヴァっていいます。どうも」
ノヴァの敬語はちょっと面白かった。
その様子をみたゴトフが口を開く。
「チバラス公爵家のゴトフです。貴族って言っても七男なんで、普段の口調で話してください。僕の口調が丁寧なのは癖みたいなものなので気にせず」
「いいのかい?じゃああんたらも挨拶しな!」
ノヴァがそういうとガボガ達も自己紹介を始めた。
「ガボガです」
「ミゲミです」
「ネゾネです」
3人共緊張しているみたいだ。
「3人はガスター商会に捕まってて、無理やり魔力を身体に入れられてマヌセラで暴れちゃってんだ。その罪滅ぼしも兼ねて復興の手伝いを率先してやってた気のいい奴らだよ」
「「「ライル様!!」」」
ガボガ達は嬉しそうにしていた。
「そうでしたね。マヌセラはソブラに襲われた街でしたよね。それがここまで復興するとはすごいですね」
「うん。俺のスキルはさっき通った漁港付近だけだから、ここら辺は1から作り直したんだよ」
「いやすごい」
ゴトフは感心していた。
「街はこんな感じ。今からうちのレストランに行こう」
「はい!」
俺はゴトフとノヴァ達を連れて鬼乃屋へ向かった。
▽ ▽ ▽
「えー美味しい!!」
ゴトフが刺身を食べて叫んだ。
最初生魚には抵抗があったみたいだが、1口食べたら止まらなくなった。
そんな様子を見た俺は、次々注文した。
ツッオのたたき・スナッパーのコブ締め・灰ナッツの殻焼き。
ゴトフは次々と食べては声をあげている。
「どう?客入りは」
「多いです。ブライズさんとアルゴットが気を使って、従業員以外には店で海鮮をあまり出さなくなって、マヌセラで食べれると宣伝してくれてるおかげですね」
「そうなんだ。知らなかった」
食品部門はヤルクだけで完結しないように上手くやってくれてるみたいだ。
「海鬼の調理場との差別化はできてそうだね」
「はい。酒をゆっくり飲みたい人が多いです。白ワインが1番出ますね」
「もっと合いそうな酒を造れたらいいんだけどね」
『小屋作成』のレベルが上がり、作れるものの中に蒸留酒酒造があった。
蒸留酒ってことは焼酎とかか?
ワインと同じシステムなら材料が必要。
米も大麦もサツマイモもない。
だから手を出せずにいる。
今度、アースとアヤノに相談してみるか。
「ライル!モズドさん!マヌセラの海鮮料理はワイアットで1番かもしれません」
「うれしいです。ゴトフ様にそう言ってもらえると」
モズドは少し照れていた。
「ゴトフ、もう1つの店にも行くから食べすぎるなよ」
「あ!そうでした」
俺はモズドにお礼を言って店を出た。
▽ ▽ ▽
海鬼の調理場でもゴトフのテンションが高かった。
好きなだけ食べさせて、領主代行館に送ってあげた。
俺は本日も訓練。
魔力を身体に循環させようとしているが、手や脚にまで全然広がらない。
最初の時より範囲は広がった気がするが、まだまだだ。
瞑想を終えて、ガッツさんとの殴り合いだ。
「ライル。今日こそは良い攻撃を期待してるぞ」
「頑張ってみますよ!」
俺は殴り掛かるがしっかり防がれる。
後ろに回り、再び殴るが全然だめだ。
腕を掴まれて投げ飛ばされた。
「今日もボコボコかな?」
「いや、今日こそは1発入れます」
俺は気合を入れ直してガッツさんに飛び込んだ。
結果はボコボコだった。




