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329.アヤノの宿題

俺はアヤノに呼び出された。

「宿題やりましたよ」

「お!何を作ったんだ?」

「これです!」


アヤノが取り出したのは、チョコバナナとリンゴ飴だった。

「おお!いいじゃん」

「まあリンゴ飴はグラニュー糖が良かったんですけどね」

「何か違うの?」

「パリッと具合が変わります。それとちょっと甘すぎるかも」

俺はリンゴ飴をかじった。


「あー確かに甘いけど、この世界に甘いものが少ないからちょうどいいかも」

「ならよかったです。チョコバナナも食べてください」

俺はチョコバナナも試食した。


「美味いね。やっぱりチョコは良いね」

「ですよね」

アヤノは嬉しそうだった。


「なんかこだわりとかってあるの?」

「あります。焼コッコを作るのが決まってたので、串系にしました。太さは違いますけど、まったく別のものを作るよりは楽かなと」

「え?さすがすぎない?」

「ありがとうございます」

アヤノはものすごい笑顔になった。


「じゃあこれで屋台は進めよう。たぶんだけど串のポイ捨て問題が発生するから、その対応も考えないとな」

「それはブライズさん達と考えました」

「え?」

「スタンプカードシステムにして、店に串を持ってくるとスタンプ1個。10個集めると好きな屋台の串と交換できる!って感じなんですけど」

「天才すぎる」

俺は正直感動した。

転移者が居るだけでこんなに発想の幅が増えるなんて。

アヤノも本当に優秀だ。


「じゃあこれで進めますね」

「うん。あと、何日かしたら王都に行くんだけど王様にあげるチョコの盛り合わせみたいなのをお願いできる?貴族に会うことになるかもだから王様用よりちょっとレベルが低いのも何個か」

「わかりました」

「入れ物はガルスタンかケルバン夫妻に頼んで」

「いい物作りますね」

「よろしく」

俺はちょっとテンションが上がった。


▽ ▽ ▽


次はレストランライルだ。


待っていたのはブライズさんとシスターカモーエ。

「焼コッコ、完成したよ」

「お!いいですね」


ブライズさんがマジックボックスから皿を取り出す。


「まだ調理するマジックアイテムが出来上がってないから、フライパンで作ったんだ」

皿の上にはシンプルな焼鳥とネギマだった。


「うん。いい感じ。味は塩ですか?」

「そうだね。他の味も作れるかは後々考えるつもり」

「いいですね」

焼コッコも問題ないみたいだ。


「アヤノちゃんからいろいろ案をもらって作ったんだ。あの子料理も得意なんだね」

「そうみたいですね」

「ダンジョンで取れたコッコ肉の使い方も凄い知っててびっくりしたよ」

「あんな美味しいケーキを作るくらいですからねー」

多分ギリギリごまかせたはず。


「モモ・ムネ・ボンジリ・ササミ・ツクネってやつも作ってみたんだけど、屋台では普通のコッコ肉だけにすることになったよ」

「予算面で?」

「そうだね。焼コッコの店とかを人が増えたら作ってもいいかもね」

「それはありですね」

食品部門の代表は未来を見据えていた。


ヤリネさんかアースがまた人を連れてくるだろう。

もし料理に興味がある人がいたら作ってもいいだろう。


「屋台は概ね問題ないですね」

「そうだね」

「王都に行ってる間はよろしくお願いしますね」

「任せて。でも『秘密の通路』で帰ってくるんでしょ?」

「まあ当然」


俺はブライズさんとシスターカモーエと雑談をして時間を潰した。


▽ ▽ ▽


俺はライルダンジョンの地下9階層に来ていた。


「おーここでやるのか?」

「はい。モンスターが出てこなくて広いんで」

「いいな。弟子達に見られたくないライルにはちょうどいい」

ヒューズさんとガッツさんは楽しそうに言った。


約2年のブランク。

筋力の衰え。

成長した身体に慣れていない。

目が覚めてから、ほとんど戦闘をしていない。


さすがに鬼将軍やら師匠やら呼ばれてるにしては弱すぎる。

王都に行くまでに弟子達に内緒で訓練をすることにした。


講師はヒューズさんとガッツさん。

生徒は俺とゴーレだ。

回復薬でライムもいる。

なぜかフリードも付いてきた。


「よーしやるか。何を鍛えるんだ?」

「とりあえず『体術』取得を目指します」

「なら俺だな」

そう言ってガッツさんが前に出た。


「ゴーレさんはどうする?」

「私は大剣でお願いします」

「じゃあ俺もこいつを使うか」

ヒューズさんは斧を構えた。


「とりあえず飽きるまでやるか」

「お願いします」


俺は拳を握ってガッツさんに向かって行った。


▽ ▽ ▽


筋力が低いせいで、どんだけ殴ってもガッツさんには効いていない。

魔装してもダメとは情けない。


「ライル!正面での戦いならゴトフ様に負けるぞ」

「知ってますよ!」

俺はガッツさんに掴みかかり、全体重を使って倒そうとするがうまくいかない。


「投げ技か?自分よりでかい相手の場合は懐に入るんだよ」

ガッツさんはそう言いながら俺を片手で投げ飛ばした。


「くっ!」

いつもなら風魔法かワープで着地するが、今は魔法禁止だ。

魔装のように魔力を使うだけだ。


俺は思いつく打撃を手あたり次第繰り出すが、ボコボコと回復を繰り返すことになった。


▽ ▽ ▽


「ガッツさん。一旦休憩良いですか」

「ああ、良いぞ」

俺の体力は限界だった。


座り込む俺の横にガッツさんが座った。


「魔装で筋力をあげたりできないんですか?」

「は?魔装で?聞いたことないな」

「そうですか」

「それに近いのが『身体強化』とかだと思うぞ」

「それって魔法ですか?」

「いや、スキルだ」

「じゃあ魔力は使ってないのか・・・」


バフやデバフをかける魔法はある。

でも自身魔力で筋力をあげたりする方法はない。


身体に魔力を纏って強度をあげる魔装はあるから、応用すれば『身体強化』に近いことができるんじゃないか。


身体強化の魔法をかけてもらうのと、自分の魔力を使って身体強化させるのは多分原理が違いそうだ。

後者が可能なのであれば、俺はそれが出来るようになりたい。


俺は目をつぶって集中した。

魔装のように魔力で身体を覆うのではなく、身体の内部に循環するようなイメージで広げていく。

広げている最中に集中力が切れ、うまくはいかなかった。


魔力を体内に循環させたら、身体強化になるかは正直微妙だ。


「おーい。そろそろやろうぜ」

休憩に飽きたガッツさんが俺を呼んでいる。

「わかりましたよ」


俺は疲れた身体に頑張って起き上がらせた。




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