33.パーティの準備
俺とお父さんはゴーレ達を連れて、村の広場に向かった。
「お父さんとゴーレ達は設営を手伝って、僕は調理の手伝いをしようと思うんだけど大丈夫?」
「問題ないが、ライルは料理なんかできるのか?」
「ちょっと興味があるんだけど、ダメかな?」
「自分で料理ができるようになるといいかもな。お父さんは全くできないけどな。ハハハ!」
広場に到着した。
広場には猟師のカリムさん・息子のカシムくん・ニーナちゃんの父のブライズさん以外の男が揃っていた。
ローファス村長と息子ルークくん
農家のガートンさんとチャールズ兄
そして俺達だ。
「おーそれが話に聞いていた、ゴーレムか!」
ローファス村長はアカ・アオ・キー・ドリーを見ながら言う。
「そうですよ村長。すごい優秀な子達なんですよ」
とお父さんは自慢げに言った。
「この年でゴーレムを従えるエクストラスキルなんて、ライルくんはすごいな」
ガートンさんが俺の頭を撫でながら褒める。
「ありがとうございます」
俺がお礼を言うとそれを見ていたチャールズ兄が近づいてきた。
「ライル。久しぶりだね」
「久しぶり、チャールズ兄」
「ところで隣にいる人は誰なの?」
とチャールズ兄が言うと、みんなの目線がゴーレにいく。
「これはゴーレと言って、俺のお手伝いをすごいしてくれる優秀なゴーレムだよ」
「ローファス村長、ガートンさん、チャールズくん、初めまして。ルークくんはお久しぶりです。私はゴーレと申します。今日はマスターのパーティと聞き、微力ながら設営のお手伝いに来ました。ゴーレムなので、皆さんから見たらおかしな行動をとってしまうかもしれませんが、その時は注意していただけると助かります。本日はよろしくお願いします」
ローファス村長とガートンさんは空いた口が塞がらなくなり、チャールズ兄とルークくんは目を輝かしていた。
「今日は僕のためにありがとうございます。僕は料理の手伝いに行くので、父とゴーレ、あとこの子達が手伝います。名前はアカ・アオ・キー・ドリーっていい、言葉は話せませんが、理解はできるのでよろしくお願いします」
ローファス村長が我に帰った。
「いや、本当にすごいんだな。じゃあカインとゴーレ達をお借りするぞ。料理はブライズの家でやってるから、そっちに向かいなさい」
「わかりました。あと知り合いになった冒険者を3名招待しちゃったんですが、大丈夫ですか?」
「5歳で冒険者の知り合いなんているのか?」
息子のおかしな発言にお父さんがフォローをいれる。
「わたしとライルの知り合いの冒険者なんですよ」
「おーそうなのか。ぜんぜん問題ないぞ。冒険の話を聞くのが楽しみになってきたぞ」
ローファス村長は久々の客人に少し浮かれているようだった。
「お肉を分けてくれるそうなので、ゴーレ、ヒューズさん達がきたらニーナちゃんの家にご案内して!アカ・アオ・キー・ドリーもお手伝いよろしくね」
「承知致しました」
アカ・アオ・キー・ドリーも頷いた。
▽ ▽ ▽
ニーナの父ブライズはカインとマイアの幼馴染で、
エクストラスキル『森の料理人』を取得し、若い頃王都で料理の修行をしていたが、ブライズの父が亡くなったことで、村に帰ってきて農家をやることになった。
王都で知り合ったマリーがあと追っかけてきて、結婚することになった。
農家はあまり向いていないようで、殆どはマリーの針仕事で生計を立てている。
俺はニーナちゃんの家に到着した。
中には村の奥様方が勢ぞろいしていた。
当然お母さんもその中にいた。
「お母さん、お父さん!ライルくんきたよ」
いつも静かなニーナちゃんが珍しく大きな声を出している。
自分の家で両親も一緒にいることで安心してるのであろう。
「カインから聞いていたけど、本当にこっちにきたのね」
「お母さんの料理も美味しいけど、僕も少し覚えたいなって思って」
お母さんが心配そうに見るが、俺には自信があった。
一人暮らしをしてたこともあったし、それなりに自炊はできる。引きこもりの夜食力だな。
「いらっしゃい。主役なのに手伝いに来てくれてありがとう」
ブライズさんが話しかけてきた。
「僕も料理を覚えたくて、手伝いに来ました。あと、知り合いの冒険者の人がなんとかボアのお肉を持ってきてくれるそうです」
「本当か?そうしたら、バリエーションが増えるぞ」
ブライズさんは台所に向かった。
▽ ▽ ▽
奥様方と子供達はリビングでサラダやすでに出来上がっているものの盛り付けを始めていた。
すると家の扉が開き、猟師のカリム家4人がやってきた!
「遅くなってすまん。この大物を解体するのに時間が掛かってしまって。でもすごいぞ!レインボーバードが3羽とウォーターコッコ1羽とウォーターコッコの卵だぞ!」
カリムさんが言うと、家にいる全員が声を上げた
「レインボーバードなんて久々に食べるわ」
「レインボーバード3羽だけでもご馳走なのに、ウォーターコッコも!」
「卵なんて久々だわ!」
みんなが思い思いのことを発しているとブライズさんが
「ありがとう。カリム、マールさん。それにカシムくんとシャルちゃんもありがとね」
ブライズさんは肉を受け取り、台所へ向かった。
「じゃあ俺らは、着替えてから設営の準備を手伝ってきます!」
といい、家から出ていった。
▽ ▽ ▽
「うーん」
ブライズさんがわかりやすく悩んでいた。
「どうしたんですか?」
「レインボーバードとウォーターコッコはどうするか決まったんだけど、卵をどうしようかと」
それを聞いた俺は閃いてしまった。
「ブライズさん。お塩とお酢と油はありますか?」
「質はあんまり良くないけどあることにはあるよ」
「卵を僕に使わせてもらえませんか?」
「本当かい?料理したことあるのかい?」
「したことないけど作りたいです」
納得させる材料がないから無邪気さで戦うしかない
「たまごはなかなか高級品なんだよ?本当に平気かい?」
「大丈夫です!!」
「まあライルくんのパーティだしね、失敗したらおじさんも一緒に謝るよ」
「ありがとうございます」
俺は卵を受取り、調理を始めた。
また家の扉が開いた、そこにはゴーレがいた。
「マスター!ヒューズ殿からお肉を預かってきました」
ヒューズさんが持っている肉は思っていたよりも多かった。
「こんなに?」
「我々と別れたあとに、ストロングボアを2頭狩ることができたそうです」
「なるほど、これはどうしますか?」
「あ!忘れてた。お肉がくるんだったよね。どうしようかなー間に合うかなー」
「ブライズさん。半分はスライスして、野菜と一緒に炒めてください!味付けはブライズさんにおまかせで!残りはこのくらいのブロックにしてください!こっちは僕が作ります」
「わかったよ。なんかあったら一緒に謝るから、好きなようにやりなさい」
「ゴーレ!お願いがあるんだけど、シモン達に布を作ってきてもらえる?この肉を2重に包めるサイズで、できるだけ魔力を込めて欲しいって伝えて」
「承知致しました」
ゴーレは急いで厩舎に向かっていった。
「ライルくん、今の人は?」
「ブライズさん、今は調理に集中しましょう」
ブライズさんと俺は黙々と調理を続けた。
▽ ▽ ▽
「やっと終わった!」
「ライルくんお疲れ様!」
二人はなんとか料理を間に合わせた。
久々に疲れ、俺とブライズさんは床に座り込んでいた。
「僕はテイムした仲間を呼びに一旦帰ります」
「そういえばライルくん、主役だったね。色々とありがとね」
ブライズさんは立ち上がりみんなに声をかけた。、
「みなさん!料理を会場に運びましょう!」
それを聞き、みんなは料理を運び始めた。
すると俺のもとにニーナちゃんがきた。
「ライルくん、パパみたいに料理上手でかっこよかったよ」
「ありがとうニーナちゃん」
俺は立ち上がり、ブライズ家から出て、フリード達を迎えに厩舎へ向かった。




