328.天空の調教師
久々に午前中はフリード達とダラダラした。
少ししたらデスヘルに行くつもりだ。
極楽花の様子も見たいし、冒険者がどれだけいるか確認したい。
まあ一番の目的はゴトフだ。
鞍を作ろうとしてるということは、乗って移動を考えているということだ。
『秘密の通路』は俺の土地から土地にしか行けないが、グリフォンに乗って移動が出来れば行ったことない場所に行ける。
郵便や配達やタクシー事業ができるかもしれない。
まあ今はフリードの毛並みを楽しむことだけ考えるか。
▽ ▽ ▽
極楽花に来た。
作って以来だったが、なんか香水の香りがする気がする。
「ヴァイオレットはいる?」
「あっ!呼んできます」
たまたまあった戦場の毒花の女の子にヴァイオレットを呼んできてもらう。
「せんぱーい!」
ヴァイオレットはテンションが高かった。
「営業始めたんだよね?どう?客入りは」
「えぐいです。マリーナさんが言うには、想像以上にコインにしていく冒険者が多いみたいで」
「まあ大成功ってことかね」
「そうっすね」
ヴァイオレットは嬉しそうだ。
「まあこれから考えるのは、コインの転売とか?」
「それは大丈夫っす!うちでは顧客名簿を作ってて、冒険者ギルドではコインにした人をまとめてくれてるので、怪しかったらすぐ調べられます」
「なるほどね。頭いいね」
「マリーナさんと考えました!」
水商売の面倒事はまだ無さそうだ。
「なんか困ってることは?」
「うーん。ないっすね」
「なんかあったらすぐ言って!そろそろ王都に行っちゃうけど、拠点作ったら『秘密の通路』繋ぐから」
「おけっす!」
「あーあと、俺と一緒に弟子が半分くらい学園に入学することになったから、冒険者としてのお願いもちょっと増えるかも」
「わかりました!任せてくださいっす!」
ヴァイオレットは転移者ということもあり、本当に頼れた。
冒険者ギルドに向かう途中、数組の冒険者達とすれ違った。
やはり増えているみたいだ。
ギルド内にもちらほら冒険者が居た。
俺はギルド職員にマリーナさんを呼んでもらった。
まあ職員と言ってもうちから派遣された人なんだが。
少し待つとマリーナさんがやってきた。
「あれ?どうしたの?」
「冒険者の状況を聞きたくて」
「ああ。ここ数日、一気に人数が増えたわ。誰かさんのおかげね」
「誰でしょうね」
マリーナさんはニヤニヤしている。
「頑張ってる冒険者パーティってわかります?」
「なんで?」
「家をあげるって言ってるので」
「あーなるほど。細かい数字はわからないけど、1番は【光剣の輝き】かな、次点で【大獅子の牙】と【雷虎の拳】と【鬼将軍の重鎧】かなー」
「知らないパーティはいないか」
「そうね。冒険者が増えたのもここ数日だし、ランクも高くてCだからね」
俺はマリーナさんと話してて良い事を思いついた。
「順位表を作りません?」
「え?」
「デスヘルの貢献度の順位をギルド内に張り出せば、みんなやる気になるんじゃないですか?」
「いいわねそれ!労力面以外は」
俺はとりあえず無視をした。
「凄い楽しみにしてますね」
「ライルくん!やるとは言ってないからね」
俺は聞こえないふりをして冒険者ギルドを出た。
▽ ▽ ▽
危険地域に来た。
ゴトフ達の居場所はすぐわかった。
空に大量のグリフォンが飛んでいるところだ。
俺はダラダラ歩きながらその場所へ向かった。
「ライル!」
俺に気付いたゴトフがキンググリフォンに乗ってやってきた。
「あれ?『騎乗』取得してないのに乗るの上手いね」
「いや『天空の調教師』のレベルが上がって、『騎乗』と『騎乗剣術』と『騎乗槍術』を取得したんだ」
「え!」
傭兵団事業が頭をよぎる。
「よかったね」
「サジュムは前から『騎乗』を取得してたんだけど、ターティーが取得してないから、今はライル式をやってる」
「ライル式?」
聞きなれない単語が出てきた。
「ほら!室内にいるとき以外はずっと乗ってるんだ」
ゴトフが指差す方向を見てみると、グリフォンに跨っているターティーがいた。
「スキルの取得のためにやってるってことね。それがライル式?」
「そう。僕もライル式でたくさんスキルを取得したからね」
ゴトフが嬉しそうに話すせいで、複雑な気持ちになった。
「モンスターとは戦った?」
「うん。ジェイクさんにいろいろ教えてもらいながら、グリリ達と連携してるよ」
「グリリ?」
「この子の事」
ゴトフはキンググリフォンを撫でながらそう言った。
「ちょっとジェイクと話してくるから、引き続き頑張ってよ」
「うん。じゃあちょっと行ってくるね」
ゴトフがそういうと、グリリは地面を蹴ってものすごいスピードで浮上した。
「あれは『騎乗』がないと無理だ」
俺はジェイクの元に来た。
「どう?」
「どっちだ?」
「うーん。ゴトフ達」
「聞いてねーぞ。ゴトフ様が魔装を使えるなんて」
「まだ完璧じゃないでしょ?」
「だとしてもだよ」
「だって数日前までヒューズさんとガッツさんにボコボコになるまで稽古つけてもらってたんだから」
「聞いたよ。何してんだよお前は」
ジェイクは飽きれていた。
「それでどうなの?」
「ああ。ゴトフはそれなりに戦える。経験不足なだけ。サジュムさんとターティーさんはもう少し時間がかかる」
「いいね。ありがと」
俺がお礼を言うとジェイクは嬉しそうにした。
「合成魔法の方は?」
「なかなかうまくいかない」
「俺も」
俺も何回か試したが合成と言えるものはできなかった。
「今度リリアンさんとかも呼んでみるか?」
「本当か?」
「うん。もう少し2人でやってみて、無理そうなら魔法を本職にしている人を何人か呼ぼう」
「わかった。でも俺達で成功させたいよな」
「そうだな」
ジェイクは元クソ野郎だが、だいぶ話しやすい。
友達くらいにはなったかもしれない。
「そう言えば、大獅子の牙が結構頑張ってるみたいだな」
「ああ。頑張ってるぞ。今はCランクを目指してる」
「正直、家候補」
「本当か?」
「まだ言うなよ。俺が王都から帰ってくるまで、貢献度上位だったらだからな」
「わかったよ」
自分の後輩が褒められたのがうれしいのか、表情が柔らかくなっている。
なんでこいつはクソ野郎だったんだ。
俺は最後にゴトフの戦闘を見て帰ることにした。
目の前にはバレットアルマジロの群れ。
ゴトフが乗ったグリリはものすごいスピードで群れに突っ込んでいく。
ゴトフは多少バランスを崩しながらも槍を振り回し、バレットアルマジロを弾いて行く。
攻撃しきれなかった分はグリリや他のグリフォンが殲滅をした。
本当に傭兵団にしたくなった。




