325.ジェイク先生
ゴーレがマリーナさんを街の外に呼んできてくれた。
「今回はなに?この大量のグリフォン?」
マリーナさんはこんなことでは驚かなくなっていた。
「えーっとまず、この子はチバラス公爵家の六男のゴトフ」
「七男です」
ゴトフはそう言ってお辞儀をした。
「え!」
さすがのマリーナさんも公爵家には驚くみたい。
「ゴトフとその従者のサジュムとターティーがキンググリフォンとグリフォンのテイムをしたので、登録をお願いしたくて」
「従魔登録するために冒険者登録をしたいってことね」
「その通りです。ちなみに3人共ライル商会に入れるから隠し事なしで大丈夫です」
「それなら助かるわ。でも戦闘はできるの?」
俺は手を広げた。
「ライルくんの時みたいにテイムモンスター込みでってことね」
「はい。模擬戦します?ちょうどいい奴ら居るし、やってみます?」
「この数のグリフォンだと冒険者ギルドの広場でも無理よ。というか模擬戦しなくてもいいんじゃないかしら」
「じゃあここに呼びます?」
「行ってまいります」
ゴーレはものすごいスピードで街へ向かって行った。
数分後、紐に括って7人を引きずりながら連れてきた。
「おい!お前の所の執事はおかしいぞ?」
「え?」
俺はジェイクを睨んだ。
「いや間違ったこと言ってないからな俺は!」
「うるさいって。用があるから呼んだんだからさ」
「なんだよ」
ジェイクは少し不機嫌だった。
「模擬戦してくれない?戦闘経験がほとんどないこの3人と」
「は?まてまて。このグリフォンの群れはなんだ?」
「はーバレたか」
「おい!この3人がテイムしてるんだろ!なんで俺達が模擬戦って言われてグリフォンの群れと戦わないといけないんだよ」
ジェイクは2年で察しが良くなったみたいだ。
「マリーナさん。模擬戦は必要ですか?」
「私さっき必要ないって言ったのに無視したでしょ!」
「あ!必要ないのか」
ジェイクをボコせると思ってたら聞き逃していた。
「じゃあさジェイク」
「なんだよ」
「この3人を自衛できるレベルでいいから、グリフォンと一緒に戦う方法を考えてあげてよ」
「は?なんで俺達がこの初対面の子供に教えなきゃいけないんだよ」
「いい話なんだけどなー」
「あ?」
俺はゴトフを見た。
「ゴトフ、自己紹介」
「え?チバラス公爵家7男のゴトフ・チバラスです」
「え?公爵家?」
「顔を売りたくない?ジェイク先生。公爵家だよ?てかさっき舐めた口きいてたよね?公爵家の御子息に。これ不敬だよね?何かで償わないとダメだよね?どうする?どうする?」
俺が喋るたびにゴトフが申し訳なさそうにしていた。
ゴトフの性格的に公爵家の力を使うのは好ましくないのだろう。
俺も普段は使わない。
ジェイクだから使う。
「わかったよ。やるよ」
「ありがと!」
俺はジェイク達の紐をほどいた。
ゴトフはジェイクの元へ来た。
「あの不敬とか全然ないので。それに僕は七男なんで顔を売るとかもできないんです」
「全然大丈夫ですよ。こいつを喋らせるとめんどくさかっただけです。それにテイムしているグリフォンと戦闘訓練ができるのは俺達にとっては得なので」
「本当ですか。すみません」
「いえいえ。光剣の輝きのジェイクと言います。ライルに煽られたから受けた話ですが、全力でやらせていただきます!」
「ゴトフです!よろしくお願いします!」
ゴトフは頭を下げた。
それに合わせてサジュムとターティーも頭を下げた。
「えージェイク!こっち来い」
「なんだよ」
ジェイクは嫌そうに俺の元に来る。
「頼んだぞ」
「わかってるよ」
「自衛できるくらいでいいんだけど、グリフォンに乗って戦うとかかっこよくね?」
「はあ?それをできるようにしろっていうのか?」
「無理なの?ジェイク先生」
「あ?やってやるよ」
「頼んだ!まあ数日だけだから、あんま期待してない」
「舐めんな」
俺はジェイクに理想の育成方針を伝えた。
「数日の間、ゴトフ達はデスヘルで生活して!家はうちを使っていいから」
「わかった」
「とりあえず冒険者ギルドに行こうか」
俺はみんなを連れて冒険者ギルドへ向かった。
▽ ▽ ▽
登録をしている間、暇だったのでジェイクと軽めの模擬戦をしていた。
「ワープ!」
森帝のロッドを振り降ろす。
ジェイクは剣でそれを防いだ。
「なんか前より強くなった?」
「そうか?」
「俺がこの身体にまだ慣れてないってのもあると思うけど!」
森帝のロッドを振り回すが、全部防がれた。
「魔法を使ってないDランクといい勝負なのは問題なんだけどな!」
「あれ?いまってBだっけ?」
「ああ」
「出会った当初のヒューズさんとかガッツさんほどの圧は感じないな」
「うるせーよ」
最近わかったが、意外と俺はジェイクを気に入っている。
俺は攻撃の手を辞めずに話しかける。
「エクストラスキルって何なの?」
「くっ!『光の英雄』だよ」
「え?エクストラスキルに負けない人間にならなきゃだめだねー」
「うるせーよ」
ジェイクは悔しそうに言った。
『光の英雄』は聖魔法と火魔法の扱いが上手くなり、武器や防具に纏わせられるスキルらしい。
俺達が模擬戦で壊した剣が纏った魔力を3倍にしてくれるマジックアイテムだったから、ほとんど敵無しだったらしい。
「聖と火って同時に使えるのか?」
「やれないこともないぞ」
「連続じゃなくて?」
「一緒にだろ?」
ジェイクは俺から距離を取った。
俺の足元を指差すと、指先から熱線が飛び出した。
「おお。合成魔法ってこと?」
「合成魔法ってなんだ?」
合成魔法ってものはこの世界には認知されていないみたいだ。
これは収穫だ
「ジェイクが使える魔法は?」
「雷と闇と無属性以外は使える」
「は?優秀だな」
「ならいいんだけどな!」
喋りながらも俺の攻撃を防いでいた。
俺は攻撃するのをやめた。
「ジェイク。ちょっと魔法を意識的に鍛えてみないか?」
「え?なんだ急に」
「例えば、土魔法で山を作ってくれ」
「ああ」
ジェイクは土魔法を使って山を作った。
「これを水魔法を使って、泥にしてくれ」
「わかった」
土の山に水が当たり、泥になっていく。
「この作業が一気にできると強くないか?」
「え?」
「ウォーターボールじゃなくて泥の球が飛ばしたり、ウィンドアローに土魔法で作った石が混じってたり。2回の魔法でできるものを1回でできたら強そうじゃない?」
「そうだな。さっき俺がやった魔法は1回の魔法だった。光の速さで火魔法を出した」
ジェイクは俺が言いたいことが分かったようだ。
「仮だけど泥魔法とか熱魔法が出来たりしないか?」
「出来そう」
「エクストラスキルで既に感覚がつかめているジェイクなら合成魔法を作れる気がするんだよね。どう?やってみない」
「やる」
ジェイクは即答だった。
「よし。最初はお互い手探りだけど、時々相談していろいろ試そう」
「そうだな」
「モンスターでも泥とか氷とか使う奴いるだろ?氷魔法も泥魔法もないのに」
「氷魔法みたいなエクストラスキルなら噂で聞いたことあるけどな」
「まあいろいろ調べてやっていこう」
「おう」
俺とジェイクは合成魔法の研究をすることを決めた。