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32.初めての冒険者

3人の冒険者はゴーレが突然叫んだことで、キョトン顔で俺を見ている。


謎の空気が漂っているところを、ゴーレが話し始める。

「私はこちらにいらっしゃるライル様にお仕えしているゴーレムのゴーレと申します。見た感じ冒険者と見受けられますがあなた方は?」


ゴーレの問いに、我に帰った3人は跪き首を垂れながら、自己紹介をし出す。

「俺はBランクパーティ疾風の斧のリーダーのヒューズと申します。隣にいる二人はリリアンとクララと言い、私のパーティメンバーです」


「矢を我々に放ったのはあなた達で間違いありませんか?」

その問いにヒューズさんは身体が強張る。

「まことに申し訳ありません!モンスターに子供が乗っていると気づかず、討伐しようと私が独断で矢を放ってしまいました」


するとクララさんが叫んだ

「違います!矢を放ったのは私です!私に全責任があります。罰するのであれば私だけを!」

リリアンも立て続けに、

「このクララは冒険者にしては若く、この先貴族様のために働くことができます。ヒューズもBランク冒険者としてとても優秀な男です。ですので今回の責任はわたしにお与えください!」


3人の冒険者がお互いに罪を受け入れあっていた。


「あの?ちょっといいですか?」

俺は頭を下げるヒューズさんに話しかけた。

「何でしょう、ライル様」

「あの、勘違いしてませんか?僕は普通の農家の息子ですよ?」


「え?」

3人は力が抜けて倒れ込んでしまった。



▽ ▽ ▽



水筒の水を飲み、落ち着くクララさん。

「あーよかった!貴族様に矢を放ってたら、多額の慰謝料か最悪不敬罪で死刑だったよ!よかったー」


それを聞き、怒鳴るリリアンさん。

「クララ!馬鹿なことを言ってないの!貴族以外の人も怪我させたらダメでしょ。ライルくんとゴーレさんがその場を収めてくれたからよかっただけだからね」

リリアンさんのクララさんへの説教は続いた。


「リリアンの言った通りだ!本当に今回は申し訳なかった」

頭を深く下げるヒューズさんをみて、リリアンさんとクララさんも頭を下げる。

「大丈夫ですよ。怪我もありませんでしたし」

「私もマスターを守るためとはいえ、大変失礼な物言いをしました。申し訳ありません」

頭を下げるゴーレ。

「いやいや、今回のは完全にこっちの責任だ。冒険者ギルドに報告してくれても構わない。間違って子供に怪我させそうになったんだからな」

「報告したらどうなるんですか?」

「未遂だから、ランク降格と罰金で済むと思う」

「うーん。じゃあ報告しないです。そのかわりひとつお願いを聞いてください」


驚いた表情の3人はすぐに真剣な顔になり、

「俺達ができることなら何でもしよう」


「今日の夜、村で僕が5歳でエクストラスキル取得したことを祝うパーティがあるんですが、それに参加して僕や村のみんなの話し相手になってくれませんか?」

「そんなことでいいのか?」

「村は人口が減って廃村間際で、娯楽も何にもないんです。できれば冒険者の話をしてもらえると」

「よし!その話乗ったぞ」

「ライルくんほんとにありがとね」

「でもタダでご馳走してもらうのは申し訳ないわね。ヒューズ、マジックバッグにストロングボアのお肉いっぱいあったはずよね?それをパーティに使ってもらいましょう」

「そうだな!そうしよう」


これで、矢の誤射事件は決着した。



▽ ▽ ▽



「ライル、お前の村は宿とかあるのか?」

「宿もお店もないです、泊まるところを探してるのなら心配しなくていいです。パーティにわざわざ来てもらうので空家をお貸しするつもりでしたよ。家具とかはないので、申し訳ないのですが」


「いや、それはありがたいんだが。やっぱり明日には街の方に移動して街を拠点にしないとダメそうだな」

「どういうことですか?」

「俺らがこの森にいた理由は、この森での依頼を2つ受けていたからなんだ。街よりもライルの村の方がこの森に近そうだから拠点にできればと思ってたんだが、宿がないとは」

「そしたら、お貸しする家を使ってもらっていいですよ。その代わり、森で討伐したモンスターのお肉を少しでいいんで村に分けてもらえたら嬉しいんですけど」

「全然問題ない。本当にいいのか?」

「いいのライルくん!」

「ライルくん本当に5歳?」

「5歳ですよ」

合計33歳ですけどね


「じゃあ、僕はパーティの準備があるので。ゴーレ、村の行き方をヒューズさんに教えてあげて」

「承知しました」


ゴーレがヒューズさんに村への行き方を教え、

俺とゴーレはフリードに乗り村へと向かって進んでいった。




▽ ▽ ▽

[疾風の斧 side]


ヒューズ達は去っていくライルを見つめていた。


「すげぇなあの子。同世代くらいのやつと話してるって錯覚してたよ」

「本当にすごかったね。拠点も確保できたんだから、幸運をもたらす天使みたいな子に出会ったってことにしましょ」

「わたしがその天使を射止めたってこと?」

クララが調子に乗って言うと、リリアンの雷が落ちた。

「あなたはほんと、いい加減にしなさい!!!」



▽ ▽ ▽



「リーダー!スライムもゴブリンもいるっちゃいるけど、本当に大量発生してるの?」


3人は依頼内容について話していた。


「間違いない。Eランクパーティが採取依頼を受けてこの森に入ると異常な数のスライムがいたとギルドに報告が入ったんだ。スライムといえど、異常な数だと低ランクパーティでは対応できない可能性があるから、原因調査と可能なら原因の排除を俺らが受けたんだぞ」

「いや、でもー!スライムもいるにはいるけど、むしろ少ないくらいだよ!」

「クララに同意はしたくないけど、その通りだと思うわ。もうひとつの依頼もおかしいし」


「もうひとつは、近道にしようと森を横切っていた商人とその護衛をしていた冒険者が数体のゴブリンに襲われ、逃げていると森の中に集落があったと護衛していた冒険者がギルドに報告した。

これも本当に集落があったら、低ランクパーティでは対応できない可能性があるから、原因調査と可能なら原因の排除をということだ」

「ゴブリンも少ないよリーダー!」

「ゴブリンの集落があると思われるエリアはもうちょっと離れてる。ライルの村を拠点にすれば、どっちも行きやすくなるだろう」

「村の皆さんにお世話になるんだから、ちょっとお肉になりそうなモンスター探しましょ」


疾風の斧は森の中へ入っていった。




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