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305. 目覚めた鬼将軍

今日、領主に呼ばれた。

なぜか商人ギルドマスターも呼ばれていた。

冒険者ギルドマスターの俺と商人ギルドマスターを呼び出すなんて何かあったに違いない。


部屋で待っていると、カラッカ辺境伯がやってきた。

「あー楽にしててくれ。簡単な確認をしたくて」

「はい。なんでしょうか」

「私達に答えられることであれば」

俺は何を聞かれるのか緊張した。


「2人はライル商会を知っているか?」

「はい。知っております。商人ギルドの登録時に少しいざこざがあり、ご迷惑をおかけしてしまったことがありました」

商人ギルドマスターは答えた。

「えー私はライル商会に所属している冒険者達を知っているくらいですかね。当然ライルも知っておりますが2年前の件以降は会っていませんね。あ、あとカラッカにある鬼将軍の調理場にはよく行きます」

「そうか。うーん」


カラッカ辺境伯はなぜか悩んでいた。

「先日、ライルが目覚めたと聞いたので呼び出したのだ。その時にカラッカ家がライル商会の後ろ盾になることになった」

「おお、それはすごい」

「だがその翌日、街にあったライル商会の店舗が無くなった」

「え!?」

俺は初耳のことでびっくりした。

最近冒険者がギルドにあまり来ないせいで、街の情報に疎くなっていた。


「その理由を調べてほしいのだができるか?」

「はい。すぐに調べます」

俺が返事をすると、商人ギルドマスターが口を開いた。


「私は理由を辺境伯の御子息から聞いております」

「本当か!」

「はい。ご子息が言うには、ライルさんは怒っているそうです」

「何にだ!?」

「カラッカの冒険者にです」

「え!」

まさかの言葉に俺の顔は青ざめた。


「元帝国の危険地域のモンスター討伐依頼をあまりカラッカの冒険者が受けていないようで、危険地域に常にいるのは鬼将軍の弟子達。なんでカラッカの冒険者はうちの冒険者に危険なことをさせて呑気に生活をしているのかと怒っていたそうです。それで腑抜けているカラッカの冒険者にはライル商会の食事や製品を使わせてやる必要はない!と撤退を決めたそうです」

「まさかそんな理由とは。ガイガット!お前はこの件に関してどう思っているんだ!」

「いやその、その件は初耳でして」


俺は困った。

冒険者達が怠けているのはわかっていた。

危険地域にはガッツが居るからと安心してしまっていたところはあるが、まさかあの鬼将軍をキレさせていたとは思わなかった。


この街を救ったのはライルじゃないかと言われている。

俺も2年前にあいつが街に居たのは知っている。

一番怒らせちゃダメだ。


前にあいつを怒らせたときはテイムモンスターを全員連れてギルドを潰すつもりだった。

これはどうにかしないとまずい。


「ガイガット!聞いているのか!」

「はい!どうにかします!必ず!!」

「すぐに対応しろ」

そう言ってカラッカ辺境伯は部屋から出て行った。


「はぁー」

俺は深いため息をついた。

「フォフォフォ!」

商人ギルドマスターの高笑いが聞こえてきた。


「おい。商人ギルドもライル商会が街から撤退したら大変だろ?ならちょっと手伝ってくれ」

「いや。商人ギルドはヤルクの街に商品を取りに行けば、今までと変わらず付き合えることになっておる」

「はぁ?まじかよ」

「フォフォフォ!まあ頑張りなさい」

そう言って商人ギルドマスターも部屋から出て行った。


「これは謝罪とか説得じゃダメだ。冒険者達の気合を入れ直さなくては。それにしても鬼将軍が目覚めやがったよ」


ライルの目覚めは嬉しいが、やはりもう少しだけ眠っててもいいと思ってしまった。




▽ ▽ ▽




俺達はレストランライルで食事をしてきた。


「本当にうまいな」

「ああ。これがほぼ無料で食えるなんて」

「でも噂は本当だったな」

「だな。でもやる気が出た」


今日俺達は雇い主のライル様と共にダンジョンで特訓をした。

この街に来て数日だが、あの人は本当に優しかった。

奴隷商で聞いた鬼将軍という二つ名は嘘だと思っていた。


特訓の途中で俺達はライル様に厳しい言葉をもらった。


奴隷をなじるような言葉でも、獣人を蔑む言葉でもない。

厳しい言葉だったが、愛のある言葉だった。


だがその言葉を発しているときのライル様の凄みに俺はビビってしまった。

いくら恩人で雇い主だと言っても人間の子供、そんな考えが頭のどっかにあったのだろう。

本気で悪意を持たれたとき、俺はライル様を倒すことはできないと本能で感じた。


「てか魔法もすごかったな」

ステーキをかじりながらジャボは言った。

「そうだね。目の前のミノタウロスが一気にいなくなったからね」

「あれは手数も凄かったがが、威力がおかしい」

「やっぱり鬼将軍の二つ名は凄いな」

「ああ」

「俺達もパーティー名を考えるようにって言われたよな?」

「そうだな」

「鬼将軍ってつけていいのかな?」

「「「え?」」」

ロブの発言に声が出てしまった。


「いやダメだろ。新参の俺達じゃ」

「だよなー。まだちゃんとライル様に恩も返せてないし」

「いやいいんじゃないか?あいつ喜ぶぞ」

「「「「えっ!」」」」

振り返るとそこにはヒューズさんが居た。


ヒューズさんはライル商会の冒険者をまとめている人だ。


「いいんですかね?」

「ああ。ライルは喜ぶぞ。あいつからしたら新参とか関係ないぞ」

「じゃ、じゃあ。鬼将軍の名前をお借りしてパーティ名を考えてみます」

「いいねー。ただしその名前をつける意味は分かってるな。何かをすればライル商会の全員の顔に泥を塗ることになる」

「「「「はい」」」」

「まあそんなことにならないように俺達がいるんだけどな」

ヒューズさんはそういいながらレストランライルを出て行った。


「なんかすごい所に来ちゃったな」

「ああ」

「本当に」

「頑張んなきゃ」

俺達は急いで食事を終わらせ、パーティ名会議をするために家に向かった。




▽ ▽ ▽




「よし!いいぞー!でも隙ありー」

クララさんの攻撃をフィンくんが防ぐが、クララさんは足を蹴ってフィンくんを倒した。

「じゃあ次はフォンくん!来なー」

フォンくんはそう言われると武器を構えてクララさんに向かって行った。

私はすぐにフィンくんの元へ行き、スキルを使って回復をした。


ダンジョンに呼ばれたときはびっくりした。

ライル様の優しい姿しか見ていなかったが、今日はすごく怖かった。

あれが鬼将軍という二つ名を持っている理由なのだろう。


厳しい言葉をみんなに言っていたが、私には温かい言葉に感じた。

ライル様のお母様のマイア様も心配そうに見ていらした。


ダンジョンから帰るときにはいつもの優しいライル様に戻っていた。

私は冒険者にならないし戦うこともないだろうけど、ライル様のためならこの力を有効的に使おうと思った。

ライル様は獣人とか元奴隷とか関係ない。

個人として扱ってくれる。


この環境に甘えてはダメだけど、自分を犠牲にしてもダメ。

私はこれからのことを考えさせられた。


ダンジョンから帰った後、フィンくんとフォンくんがやってきた。

訓練をしたいから、回復をお願いしたいと頭を下げられた。

私はそれを快く承諾した。


クララさんがやってくるまで2人と話した。

内容はライル様の凄さだった。

2人とはほぼ同い年なのになんであんなに凄いんだろうとか、みんなが認めているとか。

ライル様は2年眠っていたらしく、2人は今までほとんど関わることがなかったらしい。

鬼将軍の弟子と言われる人達から聞いたライル様の話をうらやましく思っていたという。


ただ今日の言葉で自分達は甘えていたと実感したらしい。

ライル様が鬼将軍と言われたときは5歳。

村も廃村寸前で、村の子供達と冒険者になったそうだ。

生きるために必死だった。

そんな言葉で片づけていいのかわからないが、ライル様も弟子の方々も本気でやっていたんだなと感じた。


「はい。次はフィンくーん」

クララさんはフィンくんを呼んだ。


私はすぐにフォンくんに駆け寄る。

「大丈夫?」

「うん。まだまだやるんで、もう少し付き合ってください。ナノンさん」

「うん。いいよ」


私はこの街でやれることをやると心に決めた。




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