303. 大大大改造③
今日は宿屋の細かい修正をしに来た。
街唯一の宿屋なので、ものすごく広くした。
そのせいで修正が大変だ。
まずは外で馬車置き場と厩舎の修正。
まだ街に来る人はみんな馬車で来ている。
今も冒険者の馬車が数台置いてあった。
部屋は4階だけ少し豪華になっている。
貴族用のつもりだが、この街に来る貴族はセフィーナさんに用事があるから宿屋は使わない。
俺が修正をしていたらガルスタンが居た。
「あれ?どうしたの?」
「ああ。ライル様。部屋が増えたみたいなので、鍵を取り付けてます」
「え?もしかして毎回してくれてたの?」
「はい」
俺が好き勝手に改造した建物の鍵をガルスタンが取り付けてくれていたとは知らなかった。
「ごめん!今後は相談してからするよ」
「大丈夫です。初めは戸惑いましたが、今では何があってもいいように鍵などは大量に在庫を作っているんで」
「いやマジでごめんね」
ガルスタンの優秀さには感謝だが、俺は少し反省した。
▽ ▽ ▽
続いては工場エリアだ。
ここはちょっと考えがあってものすごく広くした。
中に入ると両サイドに大きな部屋が何個もあった。
事業が増えた時ように部屋は多めにしている。
食品部門の部屋はマジックアイテムとマジックボックスが置いてある。
試作品を作れるように厨房もある。
「よし。『秘密の通路』を設置するか」
俺は秘密の通路の配置場所を悩んでいた。
今までは適当に配置したせいで、従業員達は二度手間みたいな移動が多かった。
なのでどの街の従業員もこの工場エリアを経由するようにすればスムーズなのではと思っている。
とりあえず食品部門の部屋には、レストランライル・パン屋・焼肉屋・鶏舎・牛舎・ワイン酒造所・鬼乃屋・海鬼の調理場・ライルダンジョンの最下層・マヌセラ支部と繋げた。
食品を売る店舗の修正が終わってないので、出来上がったら繋げよう。
裁縫部門の部屋にはマジックボックスと机や椅子などの家具が置いてあり、奥にはマジックマネキンが置いてある。
秘密の通路はシモンキリーのヤルク店とマヌセラ店に繋いだ。
温泉施設にも繋ぎ、シャンプー類もここに置くことにした。
鍛冶部門と木工部門と陶芸部門は3部門で1部屋。
店舗に大きい作業場があるから、この部屋にはマジックボックスしか置いてない。
各店とマヌセラ支部に『秘密の通路』繋いだ。
「とりあえずこんなもんでいいでしょう」
工場エリアを出ようとすると、『秘密の通路』の扉からブライズさんが出てきた。
「あれ?どうしました?」
「食材の在庫が切れちゃって、こっちにあるかなーと思って」
「なんの在庫が無いんですか?」
「冒険者に大人気のホルモン」
「あーライルダンジョンでドロップしないんでしたっけ?」
「見たことないね。前にライルくんがくれた分でやりくりしてたんだけどね」
「あー。わかりました。俺の方でも探してみます」
「まあ無くてもメニューから消すだけだから平気だよ」
そういってブライズさんはレストランに戻って行った。
工場エリアを出るとゴーレが待っていた。
「お疲れ様です」
「さすがゴーレ!」
「どうしましたか?」
「お願いがあって」
俺はゴーレにお願いをした。
1つは『秘密の通路』を繋いだので、各部門の代表に伝えること。
もう1つは冒険者になる獣人4人を鍛冶屋に連れてくることだ。
ゴーレはすぐに動き出し、俺は鍛冶屋へ向かった。
▽ ▽ ▽
鍛冶屋にみんなが集まった。
「みんな、簡単に自己紹介をしてもらえる?簡単なスキルの説明もお願い」
俺は獣人達に言った。
するとゾウの獣人が前に出た。
「エルデオです。30歳のゾウの獣人です。『武勇の獣』は戦闘系のスキルが覚えやすいです。奴隷時代に『剣術』と『棒術』と『棍術』と『盾術』を取得しました」
「ロブです。27歳。アルマジロの獣人です。身体の甲羅がとても堅いです。『剣術』と『拳術』を取得しています。『灼熱の獣』は身体の温度をあげれます。炎は出せませんが、熱に弱い金属なら溶かせます」
「フゾート、クマの獣人です。26歳です。『装甲の獣』は身体がとても頑丈になります。装備も頑丈になります。『剣術』と『槌術』を取得しています」
「えー名前はジャボです。オオカミの獣人です。歳は22です。『酒豪の獣』の能力で酒に強いです。あと酒を飲むと身体能力が上がります。『酔拳』というスキルを取得しています。それと『斧術』も取得してます」
無事に4人の自己紹介が終わった。
「うん。ありがとう。今日呼んだのは、隣にいるガルスタンに装備を作ってもらうためです」
「「「「はい」」」」
「明日、実力を見るためにダンジョンに行きます。そのときは仮の武器でいいけど、自分がどんな戦い方ができるのか、どんな武器がしっくりくるのかを前もってガルスタンに共有しておいて」
「「「「わかりました」」」」
そこから俺はガルスタンに丸投げした。
「ライル様。ダンジョンに行くのは明日の午後でもいいですか?」
「うん。でもどうして?」
「仮の装備なんて使わせませんよ。ちゃんとした物を全員分用意します」
「本当に?」
「はい。任せてください」
本当にガルスタンは優秀だった。
「ってことだからガルスタンと話して、装備を作ってもらって」
「「「「はい」」」」
「身体を動かしたい人は、疾風に斧のヒューズさんが組み手とかしてくれるから声かけてみて」
「「「「ありがとうございます」」」」
4人は俺に頭を下げた。
まだ奴隷の感覚が残っているんだろう。
俺はその場をガルスタンに任せて、家に戻った。
▽ ▽ ▽
家に戻る前に牛舎と鶏舎に寄った。
ハーマンの要望通り、牛舎と鶏舎のエリアは前よりもだいぶ広くしてあった。
エリアに入ると大量のクリーミーカウとウォーターコッコにいた。
気になるところを修正しながら、ハーマンを探した。
牛舎の小屋の中に入るとハーマンが居た。
「ハーマン。ゴーレから『秘密の通路』のこと聞いた?」
「聞きました。ギューとケーも楽になると思います」
ハーマンは頭を下げた。
「広さはどう?」
「問題ないです。トサカとルビー達がいつの間にか卵を産んじゃうんで、だいぶ助かります」
「卵って、いつも食べてるものとは違うの?」
「はい。元々はいつもの卵と一緒なんですが、孵そうとしている卵は回収を拒んできます。時間が経つにつれてその卵が変化するみたいです」
「あーなるほど」
モンスターと卵の関係性はいまだに理解していなかった。
哺乳類のような見た目のモンスターも卵を産む。
やはり動物とは違うということなんだろう。
魚のモンスターはどうなんだろう。
魚の卵とか気になるな。
▽ ▽ ▽
今度こそ家に帰ろうと思ったが、ワイン酒造所へ行くことにした。
王様の謁見もあるし、ラドニークさんに送る物の候補を考えたかった。
オールドヴィンテージワインと各種ワインは多分喜ばれるはず。
ワイン酒造所に入ると、マネージャーゴーレムのエリムが出迎えてくれた。
「マスター。お久し振りでございます」
「久しぶりだね。『秘密の通路』については聞いてる?」
「はい。共有されております。私達が素材やワインを運べないのが申し訳ないです」
ワイン酒造所にいるゴーレムはここから出ることができない。
「エリムは他の部門で働いているゴーレム達と共有されてるんだっけ?」
「はい。しております」
「じゃあなんか新しくワイン出来そうなものあった?」
「マンゴーとパイナップルですかね。あとロゼなどを作るのはどうでしょうか。あとスパークリングワインの品数を増やすのもありかと」
「いいね。ちょっと手伝ってもらえる?」
「お任せください」
俺はエリムと相談しながらディスプレイをいじってワインを作っていった。




