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298.カラッカ領主との謁見②

謁見はまだまだ続いていた。


2人の印象が大きく変わった。


最初のカラッカ辺境伯は傲で横暴な貴族。今は気のいいおじさん。

ヤリネさんは事務的で何を考えているかわからない商人、今は優しいおじさん。


話していると本当に色々バレていたことを知った。

秘密の通路自体はバレていないが、一瞬で街を行き来できること。

俺がダンジョンマスターなのはバレていないが、ライルダンジョンの存在とそこで素材を手に入れていること。

ダンジョンボスをテイムしたと思われているみたいだ。


「そういえば学園はどんな感じなんですか?セフィーナさんが飛び級で卒業したところですか?」

「そうだ。転生者のライルなら飛び級するだろう」


学園について詳しく話を聞いた。


王立学園。

6歳から18歳まで通える基本6年制で留年あり。

春と秋に入学可能で、卒業試験は夏と冬に受けられる。

過去最短卒業は春に入学して冬卒業したらしい。

1-5年の授業内容は計算などの基本的なもので試験の結果で飛び級可能。

進級試験は春・夏・冬の長期休み後に受けられる。


6年は選択授業制で授業を3つ選ぶ。

帝王学・経営学・武術・魔法学・魔物学・薬学。


「案外面白そうですね」

「そうだろ!」

「最短卒業がセフィーナさんと第3王女?」

「そうだな。ライルなら春入学の夏卒業も可能なのでは?」

「村の発展が俺の一番したいことなんで、さっさと卒業しますよ」

「ははは!逆に目立ちそうだな」

ラドニークさんは高笑った。


話しているうちにカラッカ辺境伯のことをラドニークさんと呼ぶように矯正された。

貴族っぽくないってのは本当みたいだ。


「いつから学園ですか?それに国王との謁見も」

「春の入学だから、80~90日後だな」

「わかりました。それまでに色々します」

「ああ。頼んだ」

「それよりそろそろアイザックさんとセフィーナさんを連れてきてもいいんじゃないですか?」

「忘れていた。ヤリネ、隠れる準備はできてるか?」

「大丈夫です」

ヤリネさんはそう言うとマジックアイテムを使い姿が消えた。


「ライル様。後ほど奴隷商に来てもらえますか?」

「はい。わかりました」


扉が勝手に開いて、勝手に閉まった。


▽ ▽ ▽


アイザックさんとセフィーナさんが部屋に戻ってきた。


「大丈夫でしたか?」

セフィーナさんは小声で問いかけてきた。


「問題ないですよ。ラドニークさんとたくさん話したら上手くいきました」

「「ラドニークさん!?」」

2人は俺が領主を名前で呼んでいることに驚いていた。


「私がそう呼んでいいと言ったんだ」

「そ、そうでしたか」

「2人共。さっきは感情的になってすまなかった」

ラドニークさんは2人に頭を下げた。


「いえ。私達も父上に対する態度ではなかったです。申し訳ありません」

「申し訳ありません」

2人も頭を下げた。


「えーっと仲直りってことで話を進めましょう。はいはい!頭は上げてください!」

俺が話に割り込むとなぜか3人はクスクス笑いだした。



俺は2人に後ろ盾の内容を伝えた。


「これなら全然問題ないです。お父様はなんであんな横暴なことを?」

「ライルの力量を試したんだ」

ラドニークさんはそう言うが、本当は2人を試していた。


「ライル様は問題ない方だと何度もお伝えしましたよね?」

「そうです。私も伝えました」

2人は何か引っかかっているのか、少しヒートアップしていた。


「それはすまなかったと頭を下げただろ」

「そうですが。あれは父上らしくないです!」

「そうです」

ラドニークさんがかわいそうなので助け船を出すことにした。


「2人共!重要な話がまだあって、それは2人にも大きく関わってくるから話を進めましょう」

「わ、わかりました」

「すみません」


俺は落ち着いた2人に危険地域の近くに街を作る件と、国王謁見と学園入学を伝えた。


「「え?」」

2人は驚いている。


「学園の入学と国王の謁見までに街を作らないと。すぐにでも取り掛かりたい」

「そうですね。これは私達の仕事も多くなりそうですね」

「あー本当だ」

セフィーナさんはやる気に満ち溢れていたが、アイザックさんは仕事が増えること感じ、意識が少し遠のいていた。


「危険地域近辺に作る街の領主もセフィーナに任せる」

「え!ヤルク村、ヤルクの街と新たに作る街をですか?」

「ああ」

「でも距離があるので2つの街を完璧に見ることが私にできますでしょうか」

「ん?お前達も一瞬で移動できるんだろ?」

「「え!?」」

急な追及に二人は声を出してしまった。


「ラドニークさんにはバレているみたいです。どういう風に移動しているかまでは知らないようですが」

「知っていたのですかお父様!」

「ああ。お前達がカラッカにちょくちょく来るのに、街の門でお前達を見た者がいないし、毎回馬車がない」

「「あ!」」

2人は申し訳なさそうに俺を見た。


「大丈夫ですよ。自分の子供の事だから必要に調べただけですよ。他の人には簡単にバレませんから」

「より一層気を付けます」

「私も気を付けます」

2人は少し反省しているようだ。



話も雑談に代わり、俺は飽き始めていた。

「あっ!」

「どうしましたか?」

「ヤリネさんの奴隷商に寄りたいんだった」

「それはすぐにでも行きましょう」

セフィーナさんも飽きていたようだ。


「お父様。私達はこれで失礼します。また報告などありましたらすぐに来ますので」

「期待してるぞ」


俺達は頭を下げ、応接間から出て行った。


▽ ▽ ▽


アイザックさんとセフィーナさんはやりたいことがあると言うので途中で別れた。


1人だと寂しいので、一度家に帰ってゴーレを連れてきた。

道すがらゴーレには今日のことを全部伝えた。

「興味深いですね」

「なんか色々あるみたいなんだよね。ちょっと怪しいけど、2人共悪い人間じゃないから信じてみようと」

「何かあったらすぐにお助けしますので」

「よろしくね」


ヤリネ奴隷商に到着した。

従業員は俺の姿を見るとすぐに客間に案内した。


少し待つとヤリネさんがやってきた。

「お久し振りです」

「あっ!ゴーレには全部話しました。さっきぶりですね」

「そうでしたか」

「それで用があるんですよね?」

「はい。2つあります」

そう言うとヤリネさんは従業員に指示を出した。


「1つは奴隷を買って頂きたいのです」

「また解放しちゃいますけど、平気です?」

「はい。問題ありません。ライル様のことは話していて、本当にそんな場所があるなら働きたいと言っております」

「訳アリですか?」

「そうですね。獣人16名なんですが、元は帝国の奴隷だったんです。あの騒動で主人が死んで、私の所に奇跡的に流れ着いた感じですね。体調などはこの2年間で万全の状態にしています」

「なるほど」

「ライル様が気に入りそうなスキルを持ってるもの達なので、ご紹介しようと思ったんです」

「わかりました。1度会ってみます」


従業員が獣人達を連れてきた。

悪い感情は感じないが、俺の姿を見て疑っているようだ。

中央に居る男性はゾウの獣人だろう。

3mくらいの身長とガタイがものすごくいい。

そしてゾウのような鼻が付いてる。


「えーとこの16名?」

「はい。どうなさいますか?」

「うん。いつも通りでお願いします」

「わかりました」


ヤリネさんが作業をしている間、ゴーレに説明などは任せた。

ここで解放されたい人ももしかしたらいるかもしれない。


「マスター。全員ライル商会で雇ってほしいそうです」

「まじ?じゃあ奴隷解放が終わったらヤルクに連れて行って、お風呂とご飯をお願い。ヤリネさんがスキルの話してたから、全員から聞いておいて」

「了解しました」

ゴーレはそういって、獣人達の元へ向かった。



奴隷解放が終わり、ゴーレが獣人達を連れて行った。


「2つ目は?」

「こっちは完全なお願いになってしまうんですけど」

「はい」

「ヤルクの街に教会と孤児院を作れないですか?」

「え?」

俺は話が見えなかった。


「元ソブラ領にあった教会と孤児院なんですが、2年経った今もなかなか生活が厳しいみたいで」

「えっとエサトス領かカラッカ領になったんですよね?」

「はい。エサトス領主も尽力しているようですが、ソブラの仕事はひどいものだったようで、他の所に手がかかりきりで孤児院にまで手を回せてないみたいなんです」

「なるほど」

「約20名の3歳から6歳の子供と3名のシスターなんですが。どうにかなりませんか?」

「ヤルクで保護はできますが、教会かー。こっちの宗教わからないんですよね」

俺がそう言うと、ヤルクさんは納得したような表情をした。


「ワイアット王国は九神教という宗教です。この世界は9の神が作ったと言われています」

「なるほど」

「他国も基本的には九神教なんですが、九神の内の一神を崇拝している宗教や、九神以外の神を崇拝している国もあるにはあります」

「あれ?ゼンドー教国ってありませんでした?」

「あの国についてはあまりわかっておりません。神を崇拝しているのか、教皇を崇拝しているのか、信者が何を信じているのか、本当に不明です」

「そんな国もあるのか」

俺は隣国にそんな国があることが少し怖かった。


「それでどうでしょうか?」

「うーん。わかりました。やってみます」

「ありがとうございます!」


俺はヤリネさんと今後の流れを相談し、ヤリネの街に戻った。




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