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296.復帰祝いパーティ

今日はライル商会の料理店が終日休みになった。

俺が復帰祝いパーティに向けて試作をすると聞いたブライズさんが全員に指示を出した。


食品工場にライル商会の料理人が集まった。


「さあライルくん。まずは何をするんだ?」

「まずはタラン米あります?」

「アースさんが持ってきてくれたやつがあるよ」

ブライズさんはマジックバッグからタラン米を取り出した。


「やっぱり・・・」

タラン米はタイ米のような米だった。


「じゃあ予定通りいけるか。まずはこれのアラを煮込んでください」

俺はレッドスナッパーを取り出した。

「よしそれは俺がやります」

「煮込むときはタマネギとネギとショウガを入れて」

「わかりました!」

そう言ってモズドさんがレッドスナッパーを持って行った。


「そしたらタマネギとニンニクをみじん切りにして。あとトマトをジューサーで液化させて」

「「はい!」」

ピエナとポーソンが元気に返事をした。


「よし。そしたら他の人は別の料理を作りましょう」

「はい!」

俺は昨日取った魚やシーナッツを取り出した。


▽ ▽ ▽


試作はうまくいき、大量の料理がマジックバックに入っている。

さすがにこれだけ料理人が居たら、パーティ用の料理もすんなりできた。


休憩をしていると、ワーがパンを持ってきた。

「ん?どうしたの?すごいいい匂い」

「ああそれはカラッカの店で出しているニンニクトーストです」

「美味そう!」

「アースさんに相談して、ガーリックオイルというものを作ってみたんです」

そういえば鬼将軍の調理場で働いているアルゴットはニンニクとショウガに魅了されていた。


「ガーリックはニンニクの別の言い方だね。いい物作ったね」

「ありがとうございます!」

「これは商品化あり!アイザックさんに相談して!それに作るときに使ったニンニクもサラダとかにかけてもいいから、それも商品化狙って」

「はい!ありがとうございます!」

アルゴットは嬉しそうに返事をした。


「俺も食べてほしいものが」

そう言ってズサスさんが魚の刺身を取り出した。


「これは?」

「アースさんにアドバイスもらって作ったスナッパーのコブ締めです」

「コブ締め!!」

俺はコブ締めを口に運んだ。


「これはもう完璧。合格!」

「ありがとうございます!!」

ズサスさんも嬉しそうにしていた。



そのあとも料理人がこの2年で作った試作品の試食をした。


ブライズさんはオークメンチカツ。

フィアダはコーンスープ。

ポレットはカルパッチョ。

ピエナとポーソンは燻製卵と燻製サーモン。

全員アースからアドバイスをもらったらしい。


俺があんまり使えていなかったマジック燻製機を上手く使ってくれたのは嬉しかった。

食品工場の出入りを自由にしておいてよかった。


まだまだ有効活用できてないマジックアイテムがいっぱいある。

マジック分離機も生クリーム作る時しか使わないし、宝の持ち腐れ感はすごい。

『ガチャ』が使えなくなった今、整理を業者さんに勧められているのではないか。


▽ ▽ ▽


料理はみんなに任せ、俺はゴーレと共に久々に家の倉庫に来た。


「たぶんゴーレが一番この倉庫使ってるよね?」

「はい。戦いで使えそうなものをこちらからお借りしています。それに農業関係のものもありますので定期的に整理しております」

「そうだったんだ」

「はい」


ゴーレに倉庫の中身を聞いてみた。

『採種』で作った種や苗。

光樹の苗も大量に入っていた。


モンスターの素材は上位種や珍しい物を倉庫にいれ、あとは各部門か冒険者ギルドに降ろしている。

魔石は使いどころが多いため、基本は倉庫に眠らせている。


「このボックスがマスターではないと使い道が見出せそうにないマジックアイテムが入っております」

「何が入ってるんだ?」

中に入ってたのは、マジックコーヒーメイカーと調合セット(超級)。

ごめん。これはまだ眠ってもらうことになる。

俺は心の中で詫びた。


「あとこちらは武器類ですね。私はいつもこちらからお借りしております」

『ガチャ』で手に入れた武器は分別しているらしい。

木の武器は学び舎、鉄の武器はガルスタン、能力がありそうな武器は倉庫。


「今入ってるのは、エルダートレントの木鎧と罪人の首斬り斧。あれ?この木鎧って誰か着てなかったっけ?」

「オリバーが着ておりました。戦い方にあまり合っていなかったようで、現在はガルスタンが作った鎧を着ています」

「なるほどね。こういうのもうまく再利用する方法を考えないとね」


俺は宝の持ち腐れをしみじみ感じた。


▽ ▽ ▽


夜になり、広くなったレストランに従業員が集まった。

弟子達やフリード達とガッツさん達が居ないのは残念だ。


「じゃあみんな始めようか」

俺はみんなの前に立った。


「えーライルです。2年間、ご心配をおかけしました!」

「心配したぞ!」

「本当によかった!」

「よかったです!」

従業員が声をかけてくれる。


「明日、カラッカ領主に会うことになりました。正直、行きたくない。まあアイザックさんとセフィーナさんが何とかしてくれるでしょう」

「出来る限りは」

「がんばります」

2人は申し訳なさそうに言った。


「今日は気合を入れるためのパーティです。新作も結構作ったので、みんな食べてください!乾杯!!」

「「「「「「「「「「「乾杯!!」」」」」」」」」」」


▽ ▽ ▽


パーティは大盛り上がり。

一部を除いては。


「ライルくん。そろそろいいかなー?」

「ダメです。そのまま正座」

「は、はい」

みんなが盛り上がっている中、クララさんは床に正座している。


「何がダメかわかってます?」

「わかってるよー。わかってるけどさー。みんなが一緒に戦いたいって言うからー」

「その場の空気とかもあると思います。従業員を戦わせたことは、まあ許してあげます」

「じゃ、じゃあ食べてもいーい?」

「はい?クララさんが怒られてるのはそこじゃないですよ。なんで戦わせたことを報告してないんですか?」

「そ、それはー」

説教されているクララさんを心配そうに従業員達が見ている。

自分達から戦いたいと言って、クララさんが怒られているのが申し訳ないのだろう。

自分達の家を自分で守りたい気持ちはわかる。

だけどそれとこれとは話が違う。


「なんで報告をしなかったんですか?」

「えーっと。忘れてました」

「はぁ。今日はご飯なしです」

「そんなーライルくんー!!」

クララさんは涙目だ。


まあ涙目にもなる。

今回もだいぶ気合を入れて料理を作った。


今回のメインはタラン米を使ったパエリアだ。

レッドスナッパーと灰色のシーナッツのミソを出汁にして、具材はシーバナナとコッコ肉。

味見をしてみたが、だいぶ良くできていた。

ガルスタンに専用の大きなフライパンも作ってもらったから、見栄えもとてもいい。

シーバナナは完全にエビだ。

これからはバナナエビと呼ぶことにした。


灰色のシーナッツのミソ、通称灰ミソを木の実の殻に入れたままに焼くのもとても美味かった。

完全にカニ味噌の甲羅焼きみたいだ。


赤色のシーナッツのウニ、通称ナッツウニはクリームパスタにした。

高いウニを食べたことがないが、たぶん元の世界だと高級品と同じくらい美味しいだろう。


そして黒色のシーナッツの中身、通称ナッツ海苔はだし巻き卵にいれた。

マヌセラで乾燥させて、板海苔を作らせてみようと思う。


あと作ったのはホウレンソウのおひたし・ツッオのたたき・ナッツ海苔のポン酢和えだ。

こちらも好評のようだ。


肉は当然、極上と特上だけ。


2年前に作らせたままだったオールドヴィンテージワインをみんなに配った。

食事の美味さも相まって、お酒のペースがだいぶ早まっているみたいだ。


子供にはパインジュースとマンゴーミルクを作ってあげた。

やはりジュースは最強だ。


「ねーライルくーん」

クララさんはもう限界の様だ。


「ちゃんと報告します?」

「はい」

「俺に絶対しろとは言いませんが、ヒューズさんには必ずしてください」

「はい」

「じゃあ食べていいですよ」

「ありがとー」

クララさんはすぐに立ち上がり、パエリアに一直線に走って行った。


「すまんな」

ヒューズさんが申し訳なさそうにしていた。

「ちゃんと注意してくださいよ」

「ああ。必ず」

「まあもういいんで、美味しいご飯を食べちゃってください」

「おう」

俺とヒューズさんもパエリアに向かって行った。




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