293.2年ぶりのヤルク村②
「この後は?」
「冒険者ギルドと商人ギルドの様子を見に行こうかな」
「承知しました」
俺とゴーレ冒険者ギルドに向かった。
冒険者ギルドに向かっていると、たくさんの人とすれ違った。
村が確実に2年前よりも栄えている。
特に冒険者が多い。
冒険者ギルドに到着した。
ギルドの中もだいぶ賑わっている。
カウンターの中には見知らぬ人がちらちら居るが、セフィーナさんが言っていたアースが連れてきたエルフと獣人だろう。
俺の姿を見つけたマリーナさんがやってきた。
「ライルくん。身体の調子は?」
「まだ慣れないですが、問題ないですよ。これ約束していた物です」
俺はマジックバッグからダンジョンコインを取り出した。
「これいっぱいあるよね?」
「はい。信じられないくらい作ってきました」
「それじゃ、裏で出してもらえる?」
「わかりました」
マリーナさんに裏に案内される。
「ここでいいわ」
「はい」
俺は大量のダンジョンコインを出した。
「そういえば」
「どうしたの?」
「俺、今機嫌がよくないんですよ」
「え!?」
まだ内容を話してないのに、マリーナさんの顔が引きつっていた。
「なんかあったの?私は関係ないよね?」
「うーん。どうでしょうね」
「関係ないって言ってよ!!怒ったときのライルくんはちょっと怖いのよ」
「関係ないといいですね」
「なんでそんな言い方するのよ!」
「2年前の防衛でこっそり戦ってなければ大丈夫だと思いますよ」
「え!?」
俺の発言でマリーナさんは顔が青ざめた。
「い、いやあれは・・・」
「まあ村の人やマリーナさん達を怒るつもりはないですよ。責任者に責任を取ってもらうので」
「クララもみんなに頼まれて仕方なくだったのよ」
「うーん。だとしてもですね。それに今の今まで、ゴーレも知らなかったんですよ。報告ができてないのはダメですよね」
「それはそうだけど・・・」
「まあマリーナさんも今後報告忘れとかはしないように」
「は、はい」
俺はそう言って、冒険者ギルドを後にした。
▽ ▽ ▽
商人ギルドに入ると、エルフの従業員が声をかけてくれた。
「ライル様。アイザックさんに御用ですか?」
「うん。いる?」
「はい。すぐご案内します」
2年前から思っていたが、従業員の質がいい。
カラッカの商人ギルドに初めて行ったときは、だいぶひどい対応された。
だから自分の商会から派遣されてる人が優秀だと、本当にうれしい。
エルフの従業員に案内され、部屋で座って待っているとアイザックさんがやってきた。
「お待たせしました」
「すみません。いきなり来ちゃって。身体を慣らしながら村の様子を確認してて」
「なるほど。だいぶ人が増えたと思いませんか?」
「増えましたね。特に冒険者」
「やっぱりダンジョン効果ですね」
ダンジョンと言われて思い出した。
「アイザックさん。ライルダンジョンにコアを吸収させたらモンスターを進化させることが出来たんですよ」
「え?進化ですか」
「はい。そしたら質の高いドロップアイテムが出るようになったんです」
「え!!」
俺は肉や毛皮を出した。
「肉も毛皮もランクを付けて売ればいいかなと」
「なるほど」
「今日はダンジョン頑張ったからランクの高い肉でも食うか!みたいなことができるかと」
「いいですね!」
「並・上・特上・極上みたいなランクにしてみようかなと思います」
「わかりました。商人ギルドでもそのような形で販売するようにします」
「近いうちに食事会を開こうと思うんで、その時に味を確かめてください」
「期待してます!!!」
ニコニコになったアイザックさんと別れ、商人ギルドを出た。
▽ ▽ ▽
次に向かったのは学び舎だ。
学び舎ではエルフのフォーリアさんが授業をしていた。
生徒はマヌセラの従業員の子供だと思う。
庭ではエルフの双子フィンとフォンがヒューズさんと組み手をしてた。
俺は一区切りつくまで見学することにした。
フィンとフォンは確か5歳だったから、今は7歳のはず。
2年前はエクストラスキルを取得してなかったが、今はしているのだろうか。
フィンとフォンは剣でヒューズさんを攻撃するが、すべて防がれていた。
2人の剣術の実力は同じくらいだろう。
そんなことを思いながら組み手を見ていたら、授業が終わったフォーリアさんがやってきた。
「ライル様。お久しぶりです。お目覚めしたと聞いて安心しました」
「久しぶり!俺が居ない間も学び舎を稼働させてくれてたみたいだね」
「はい。最近は従業員の方で授業を受けに来る方も居て」
「え?」
「子供の時に学べなかったから学んでみたいと言って、仕事がお休みの時に来たりしてます」
「そうなんだ。大変じゃない?」
「いえ全然です!むしろ楽しくて」
フォーリアさんは嬉しそうに語っていた。
「そういえばフィンとフォンはどんなかんじ?」
「無事にエクストラスキルを取得しました」
「本当に?」
「はい。エクストラスキルが特殊なので、2年前と変わらず冒険者を目指してます」
「うーん。それなら俺が直接みたほうがいいか」
「はい。喜ぶと思います」
俺はそう言ってヒューズさんと2人の元に向かった。
「3人共!ちょっと口出していい?」
「おう。いいぞ」
ヒューズさんは武器を降ろした。
「「ライル様!僕達、冒険者になれますか?」」
俺に気付いたフィンとフォンは凄い勢いで詰め寄ってきた。
「それを確認しようかなって。2人はどんなエクストラスキルだったの?」
「「『変動する双子』です!」」
「見てもいい?」
「「はい」」
俺は2人のステータスを見てみた。
○変動する双子Lv3
能力が変動する。
→イコール
双子の能力を等しくする。
→ニアリーイコール
双子の能力をほぼ等しくする。
→ノットイコール
双子の能力を等しくなくす。
「ん?どういうことだ」
俺は理解できなかった。
するとヒューズさんが口を開いた。
「こいつらのエクストラスキルは面白いぞ」
「そうなんですか?」
「普段はフィンが剣が得意でフォンが魔法が得意なんだ。だけどスキルを使うと、2人の力がほぼ同じになったり、剣術や魔法が異常に強くなったりしてるんだ」
「あーステータスを共有してるってことですか?」
「ああ。『ニアリーイコール』を使うといつもの2人。『イコール』を使うと差分を片方のステータスで補う。『ノットイコール』を使うと完全近接特化のフィンと完全魔法特化のフォンが出来上がる」
「なるほど」
中々面白いエクストラスキルみたいだ。
「よし。色々終わったら特訓しよう!」
「「やったー!」」
この村の子供はなんで特訓と言われて喜ぶんだろう。
「領主との謁見とかもあるので、落ち着いたらで。それまでの時間がもったいないから、カラッカの冒険者ギルドで冒険者登録してくること。引率はヒューズさん」
「なんでわざわざカラッカに行くんだ?」
「俺が寝てる間に、子供を舐める冒険者が現れている事を期待して」
「お前ってやつは本当に」
ヒューズさんはやれやれといった表情を俺に向けていた。
「そういえばヒューズさん」
「ん?」
「2年前の村の防衛で、従業員全員がモンスターと戦ってたの知ってました?」
「は?」
ヒューズさんは驚いていた。
俺の怒りが込められた笑顔を見たヒューズさんは頭を掻きながら口を開く。
「あのバカ」
「罰は与えますんで」
「ああ。さすがにそれは止められない」
「報告がないのが一番ダメです」
「ああ。そこは罰が終わったら俺の方からも説教する」
「お願いしますね」
俺はそう言って学び舎を後にした。




