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291.従業員達の報告③

怒りをこらえていると、怒りをぶつけてもいい相手がやってきた。

俺は森帝のロッドを取り出し、部屋に入ってきた人に攻撃をした。


「おおい!なんだいきなり」

ヒューズさんはそう言いながらしっかり俺の攻撃を防いでいた。


「ちょっと色々ありまして。八つ当たりです」

「なんだよ。元気じゃねーか。てか八つ当たりすんな」

「ヒューズさんならいいかと」

「ダメだろ」

俺達のやり取りを見ていたリリアンさんとクララさんが笑いながら部屋に入ってくる。


「ライルくんが元気そうでよかったわ」

「そうだねー。ライルくーん久しぶり!」

リリアンさんとクララさんは俺の頭を撫でた。


「おい。対応が違いすぎる」

「そんなことないです」

ヒューズさんは何か言いたげな顔をしていた。


「ところでライル。俺らからも報告はあるが、まずは2年前に何があったのか教えろ」

「そうですね。まずはそこからですよね」

俺はリリアンさんとクララさんから離れ、ベッドに腰かけた。


「まずは・・・」

俺は疾風の斧に2年前の話をした。

ソブラを殺したこと、ソブラの力を増幅させていたであろう魔石の存在、使用していた大鎌のこと。


「はぁー。本当に何が起きてたんだよ。でもライルが死ななくてよかった。お前に任せてすまなかったな」

ヒューズさん達は申し訳なさそうにしている。

多分、俺にソブラを殺させたからだと思う。


「帝国とかそこら辺の話は聞いたか?」

「ゴーレから聞きました」

「そうか。まあ一応報告だ。ライル商会に所属している冒険者のほとんどは危険地域にいる。いないのは俺達と海獣の高波だけだな」

「ノヴァ達はマヌセラに?」

「そうだ。俺達はいつ何が起きてもいいように、この村かカラッカの街に居る。まあクララはちょくちょくいなくなってるけどな」

「え?なんでですか?」

クララさんが1人行動している理由が思いつかなかった。


「家の手伝いしてるんだよー」

「家の手伝い?」

俺が首を傾げているとリリアンさんが口を開いた。


「クララは貴族なのよ」

「え!!!!!!」

今日1番の衝撃だった。

クララさんが?リリアンさんなら何となく理解できるけど、クララさんが!?


俺が戸惑っている様子を見て、クララさんはケラケラ笑っていた。

「まあびっくりするよねー。一応エサトス領主の4女なんだよ」

「ははは。ライルはエサトスについて聞いたらもっと驚くかもな」

ヒューズさんは楽しそうにしてる。


「エサトスって元々はこの国じゃなかったのよ。エサトス王国っていう国だったの。私とヒューズが5歳くらいの時にワイアット王国と合併したのよ」

「え?まってまってまって!ということはクララさんは元王族?」

「うんー!おじいちゃんが王様だったらしいよー」

クララさんは呑気に答えた。


「まあそういうことだ。合併した数年後にクララの祖父が父親に爵位を譲り、今はクララの父親が領主だ」

「少しずつ整理するんでちょっと待ってください」

俺が混乱しているのが面白いのか、ヒューズさんは話すのを止めない。


「姉と兄が優秀で、家でやれるようなことがなかったクララは冒険者になると言って家を出た。別に喧嘩別れじゃないぞ。それで頼った先が俺とリリアンの師匠だった。冒険者になってから数年ぶりに師匠の所に行ったらこいつが居て、なんか意気投合して今に至る」

「そう!あれは運命だったねー」

「お前がリリアンにくっついてただけだろ」

そう言われてクララさんはペロっと舌を出した。


「なんとなく理解してきました。だけど何の手伝いをしてるんですか?」

「手伝いは少なからずライルが関係しているぞ」

ヒューズさんはまだニヤニヤしている。


「うーん。教えてください」

「いいだろう。2年前の件でソブラの悪事が王族に伝わった。それにより行方不明扱いのソブラは爵位を失った。そうなるとソブラ領を誰が管理する?普通ならソブラ領のすべてがカラッカ領になるはずだった」

「だった?うーん。わかった!」

俺は閃いた。


「帝国の領地がカラッカ領になったから、ソブラ領のすべてを管理するのが難しいと判断された!!」

「そう!モンスターが大量発生する危険地域に接している元帝国の土地がカラッカ領になったため、ソブラ領の半分は近領で王族からの信頼も厚いエサトス領が吸収することになった」

「なるほど」

「ただエサトスとソブラは隣領ではあるが領境は山脈なんだ。そこを繋げる大規模な開拓や、貧困だった元ソブラ領民の保護など仕事はいっぱいあった。クララの兄弟は優秀だが、現場を指揮したりする能力はほとんどなかった。だからクララが一肌脱いだんだ」

「そうなのでーす!!」

なぜかクララさんは決めポーズを決めた。


「やっと理解できました」

膨大な情報をやっとまとめることができた。

さっきのマデリンの話で脳が活性化していたのかもしれない。


「まあということだ」

「わかりました」

「ライルはこれからどうするんだ?」

「報告を一通り聞いたら、いろんなところに顔を出しに行こうかなと。危険地域も見てみたいですし」

「危険地域はダンジョンが結構見つかってるから、身体を慣らすにはちょうどいいかもな」

「ですね。その時は付き合ってくださいよ」

「おう」

ヒューズさんは笑顔で答えた。


▽ ▽ ▽


次にやってきたのはセフィーナさんだ。

後ろにはポーラさんとカレンさんが居た。


「ライル様!!よかったー!!本当に!!」

セフィーナさんは泣きじゃくっていた。


「ご心配おかけしました」

「本当ですよ!!もう大変だったんですから!お兄様に聞いているとは思いますが」

「え?なんかありましたっけ?商人ギルドが忙しい話?」

「違いますよ!あーお兄様!!逃げましたね!!」

セフィーナさんは怒っていた。


「ライルさん!」

「は、はい」

「お父様がお会いしたいと」

「え!?」

今までできるだけ貴族と関わらないようにしていた。


「逃れる方法は?」

「ありません。公にはされていませんが、2年前にカラッカを救ったのはばれています」

「あー」

「私もお父様もバカではありません。さすがにあの状況でライル様が現れ、敵に向かって行き、2年も眠るような負担を受けている。これだけでも十分ライル様がソブラを倒したと導いてもおかしくないです」

「そ、そうですかね?俺がソブラにやられた後に誰かが倒したのかも」

「誰ですか?そんなことをできる人は。ヒューズ様やアースさんは帝国との国境付近、ガッツさんはササント。秘密の通路を使った人はライル様とゴーレ様、それにアースさんのお仲間のコティさんベボンさんだけ」

「え?なんで知ってるの?」

「あそこに住んでるフィーゴ様に聞けばすぐわかります!正直に言ってください」

「は、はい。俺です」

俺はセフィーナさんの勢いに負けた。


「あの優しいお父様が、私とお兄様に命令したんです。ライル様が起きたら必ず連れて来いと」

「あーこれは」

「逃げられません」

俺は腹を括った。


「わかりました。会います」

「本当ですか?」

「はい。だけど数日時間をください。この成長した身体になれてないのと、いろんなところに顔出したいんです。それに危険地域を見に行きたいです」

「危険地域は謁見後にしてください。危険地区に行ったらライル様は必ず何かします。それで時間を取られて延期延期延期延期延期」

「わ、わかりました。危険地域は謁見後にします」

「お願いします」

セフィーナさんがこんなに怖かったなんて知らなかった。


「他にも報告することがあります。もうすでに聞いていたらおっしゃってください」

「はい」

「アースさんがエルフと獣人を連れてきました。違法奴隷でしたので解放して、希望者には働いてもらっています。エルフ26名、獣人20名です。農業部門にエルフ3名・獣人8名、裁縫部門にエルフ2名・獣人1名、冒険者ギルドに派遣がエルフ6名・獣人4名、商人ギルドに派遣がエルフ7名・獣人6名、領主代行館に派遣がエルフ8名・獣人1名です」

「おお。そんなに」

「はい。アースさんが数回に分けて連れてきてくれました」

ネーミング問題はあったが、やはりアースは優秀だ。


「それとヤルク村の拡大を計画しております」

「拡大?」

「はい。人の出入りも多くなり、ライル様のスキルを使っていない場所も作り始めようかと」

「それはいいね!この村で商売したい人とかには好きにやってもらいたいしね!住みたい人が増えるたびに俺が家を作るのはめんどうだし」

「ですがライル様のスキルは私達の想像を超えるときが多々あります。なので拡大前にライル商会名義で土地を買っておきました。ですので改造をお願い致します」

「え?ありがたいけどさ、一応病み上がりだよ」

「さきほどヒューズ様からいきなり攻撃されたと聞いております。心配でしたし、生きていてくれて心から嬉しいです。ですがそれとこれとは話が違います」

「えー」

「お父様に会うまでにやっていただけると助かります」

「わ、わかりました」

俺がそう言うとセフィーナさんは立ち上がった。


「ではお父様の予定の確認を急いでしてきますので、失礼します」

そういってセフィーナさんは部屋から出て行った。


「ふー。セフィーナさんは強敵になったな」

「そうですね」

「あの人、ライル商会の人間じゃないよね?」

「正確には違いますね」

「なんか無茶苦茶だったね。誰に似たんだか」

「それはマスターじゃないでしょうか」

「え?」


俺は想像もしてない返答に驚いてしまった。




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