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289.従業員達の報告①

最初に部屋に来たのはヤルク村の冒険者ギルドマスターのマリーナさん。

それにライル商会から冒険者ギルドに派遣した、カシムとシャルの両親のカリムさんとマールさんも一緒にやってきた。


「ライルくん!!!!よかったわ!!」

「心配したぞ!」

「よかったわー」

マリーナさんは目に涙を浮かべながら俺の頭を撫でまわした。

そんな様子をカリムさん達は微笑ましそうに見ていた。


「ご心配おかけしました」

「本当よ!でもよかったわ。身体の方は?」

「元気です!ただ成長した身体にまだ慣れない感じですね」

俺は腕を回しながら答えた。


「少しずつ慣らさないとね」

「そうですね。俺が寝てる間、問題や不都合ありました?」

俺が仕事モードになったせいか、マリーナさんの顔つきが変わった。


「起きてばっかりで申し訳ないんだけど、ダンジョンコインの在庫がだいぶ前からなくなってるから補充してほしいわ」

「それは急がないと」

ダンジョンコインが無ければ、安全に攻略ができない。

これは冒険者が村から離れてしまう可能性がある。


「規制をしてるから問題はないんだけど、やっぱりより深くまで潜りたいって言ってる冒険者もちらほらいて。2年前よりも村を拠点にしている冒険者も増えたの」

「そうなんですか?」

「うん。ヤルクダンジョンは難易度が高くて冒険者に人気なのよ。宿屋や温泉施設もあるし食事も美味しいから、長期滞在してダンジョンに何度も潜るみたい」

「なるほど。色々頑張ってよかった」

マリーナさんからの報告で、2年前にやれることをやっておいてよかったと心から思った。


「帝国の話は聞いた?」

「はい。聞きました」

「元帝国領の危険地域へ行く冒険者は、ヤルク村をわざわざ経由するらしいわ」

「危険地域の近くには村とか街はないんですか?」

「ほぼ廃墟に近いわ。だから冒険者がテントを張ったり、ギルドで仮設の小屋を建てたりしているわ」

「結構大変そうですね」

「そうね」


マリーナさん曰く、危険地域で一番活躍している冒険者はライル商会の冒険者らしい。

ガッツさんを筆頭に弟子達が頑張っているみたいだ。


この2年間で冒険者ランクがかなり変動したらしい。

鬼将軍の剱・剛角・強弓は個人もパーティもCランク。

ジョシュ・ベラ・ララは個人Cランク、カイリ・ネネ・ビッツが個人Fランクで鋭牙はDランク。

ガッツさんは個人Aランク、ダモンとパリスは個人Dランクになり、雷虎の拳はCランク。

巨人族のガボガ達はDランクになり、海獣の高波はDランク。

ライル商会所はだいぶ戦力が上がったみたいだ。


▽ ▽ ▽


次にやってきたのはドワーフで鍛冶部門代表のガルスタンとマデリンとイルデン、鍛冶を手伝っているエルフのソーバス。

それに木工をしているエルフのケルバン夫妻だ。


「「「「「ライル様―!!」」」」」

ガルスタン達はすごい勢いで近づいてきた。


「おお!!心配かけたみたいだね」

「そうですよ!オラ達心配で心配で」

ガルスタンは何とも言えない表情になっていた。


「旦那がすみませんねライル様。ライル様が眠られている間やれることはないかと考えたんですが、私達にはライル商会に利益を与えるのと、従業員を守るための商品開発しかできず」

「いやいや十分すぎるよ。寝ている間に新しい物出来たりしたの?」

「「「しましたよ!見てください!」」」

そう言いながらガルスタン達はマジックバックから次々物を出してくる。


「ちょっと待って!1人ずつ!1個ずつ!」

「「「「「す、すみません」」」」」

俺に見せたかったんだろう。

その気持ちが伝わってきて嬉しかった。


「まずは私達が」

そう言うとケルバン夫妻がマジックバックからいろいろな家具を取り出した。

椅子や机、棚やタンス。

2年前も作っていたが、デザインがおしゃれになってる。


「アースからアドバイスをもらって作りました。貴族向けの家具です。アイザックさんが宣伝してくれているおかげで、結構注文が来ています!」

「それはいいね!おしゃれだし。俺の部屋のも作ってよ」

「いいんですか!!任せてください」

ケルバン達は嬉しそうに言った。


アースがアドバイス。

転移者だからできて当然ではある。

寝ている間に、アースもしっかりライル商会に貢献してくれているようだ。


「次はソーバスとイルデンがいいか?」

「いいんですか?」

「ああ。お前達が作ったようなもんじゃろ」

「ありがとうございます」

ソーバスはガルスタンに頭を下げて、マジックバックから何かを取り出した。


「ん?これは?シモン糸?」

「はい。そうです、前にエルフの鎧を作ったの覚えていますか?」

「ああ。エルフの秘薬とエルダートレントの繊維とミスリルを織り交ぜて布を作ったやつ?」

「そうです。その技術の応用に挑戦してたんです。でも私だけじゃ失敗続きだったんですが、イルデンに協力してもらったおかげでシモン糸とミスリルを混ぜることが出来たんです」

「おー凄いじゃん!それがこれ?」

「はい。ミスリルよりも強度が高く、シモン糸より伸縮性が高いです。肌触りもよく、効果を付与しやすい素材です!!」

俺は渡された糸の束に触れてみた。

ソーバスの言うように、肌触りがいい。


「実はこれを使って・・・」

「それは裁縫部が来てからがいいんじゃないか?」

ソーバスが何か言おうとしたら、ガルスタンが割り込んできた。


「そうですね」

「ライル様。いろいろ見せようと思ったんだが、裁縫部門とまた来ます」

「わかったよ。楽しみにしてる」


ガルスタンが部屋を出ようとすると、マデリンが口を開く。

「ライル様。ライル商会の冒険者達が既に持っている防具はこの糸で強化してありますので」

「助かるよ。ありがとう」

「いえいえ」

マデリン達は頭を下げ、部屋を出た。


▽ ▽ ▽


次にやってきたのは、少し痩せたアイザックさんだった。

エルフのビューロとバイロも一緒だ。

ビューロとバイロも少し痩せたみたいだ。


「ライルさん。お元気そうでよかったです」

「ライル様、本当によかったです」

「無事で何よりです」

「心配かけてすみません。アイザックさん、それに2人も」

「本当によかったです。本当に」

アイザックさんは異様なほど喜んでいるようだ。

後ろの2人も喜んでいる。


「俺が寝ている間になにかありましたか?」

「はい。たくさん」

何かを思い出しのか、目に生気が無くなっている。


「まずライル商会は大黒字です」

「おお!凄い!」

「2年前の皆さんの活躍でライル商会の株が上がりました。それにより各地域の商人ギルドからの問い合わせ、カラッカ領主である父に繋げてほしいとの連絡、新商品の催促の連絡、レシピを盗むために村に訪れる料理人やゴロツキ冒険者。本当に大変で!」


これは報告ではない。悲鳴だ。

アイザックさんの言葉に合わせてビューロとバイロが首を縦に振り続けている。


「カラッカの店舗も大繁盛。マヌセラの街も大繁盛。ですが新商品がほとんどない。アースさんが他国から珍しい植物を持ってきてくれたり、ブライズさんが新しい料理を作ったりしてくれてはいますが、足りないんです!!ライルさんの発想が足りないんです!!」

アイザックさんはほぼ半泣き状態。


「わかりましたよ。情報整理が終わったら、色々やってみますから」

「本当ですか?目覚めたばかりのライルさんに無理強いさせてしまって申し訳ないんですが」

「まあ俺が始めたことですから。宿屋とか店舗の人手は足りていますか?」


俺がそう言うとビューロが口を開いた。

「それは大丈夫です。アースさんが保護したエルフと獣人を連れてきてくれて、その人たちが手伝ってくれてます。ライル様が目覚められたので、一度挨拶をしたいです」

「わかった」


アイザックさんや商人ギルドに派遣しているエルフ達にはだいぶ迷惑をかけたみたいだ。

早く本調子になって、稼働しないとな。



それにしてもアースはいろんな面で活躍してくれているみたいだ。




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