29.ゴーレの提案
夕飯を食べ終わり、リビングには俺とお父さんとゴーレがいた。
「改めてみるとゴーレはすごい変わったな」
お父さんはゴーレを見ながら言う。
夕方にNEWゴーレとシモン達を両親に紹介した。
いつものように驚いていたが、放心時間は短くなっていた。
お母さんに関しては、まだ確認していないがシモン達が布を作ることができるかもと伝えると、笑顔でシモン達を迎え入れた。
この世界の女性は虫に抵抗がないみたいだ。
「お父さん。ゴーレから畑に関しての提案と魔力適性検査についての提案があるみたいなんだ」
「お!それはどんな提案だ?」
ゴーレが口を開く。
「まず畑についてですが、お父様の畑はお父様のスキルのおかげであと3日もあればすべての作物が収穫可能です。マスターの畑も、1番遅いもので7日後には全て収穫可能です。食べる分を差し引いても木箱15個分は収穫できると思いますので、木箱のご用意をお願いしたく思います」
「15個分も!それはよかった。木箱はおれが準備しておく」
「現在、お父様の畑では小麦・キャベツ・ネギ・ニンニク・トマト・ニンジン・ジャガイモを栽培してます。マスターの畑ではジャガイモ・ニンジン・とうもろこしを栽培していて、今後、レタス・ナス・大豆の栽培を始めます。
そこでご相談なのですが、売却予定の木箱一つ分の野菜をいただくことはできないでしょうか?」
「それは全然構わないのだが、なんでだ?」
「うちのキーが『採種』というアビリティを持っていますので、採種を行おうと思っております。魔力適性検査以降、畑を大きくしていくためには少し種が心許ないのです。
それと、ジャガイモやニンジンなど、ふたつの畑で作っているのは今後作業効率が悪くなる恐れがあります。マスターとお父様の畑を一括で管理して、畑が広くなっても対応できるようにしたいと思っております」
「なるほど……ゴーレすごいな。これも『秘密基地』の能力なのか?ライル」
「そ、そうだよ」
誤魔化せてはいなさそうだなー、まあ多少の恩恵はありそうだけど。
「ゴーレの提案に乗ろう。今後は未開拓のエリアもライルにお願いすることになるだろうし、畑はライルとゴーレに一任する!一応今みたいに相談してくれると助かる」
「承知致しました。お父様」
「ありがとう!お父さん」
「魔力適性検査についてですが、私も御者としてついていきたいのですが、どうでしょうか?」
「フリードに馬車を引いてもらうんだよな?俺が御者をしようと思っていたが、ゴーレも馬車を扱うことできるのか?」
「御者の経験はありません。そもそもフリードは人の言葉の理解力は人間やゴーレムとほとんど変わらないため、能力がある御者は必要ないと思われます。
私がお供する目的は、マスターとお父様の安全の確保とお二人が不在中の畑の管理です。
マスターとともに明日以降、レベル上げを行う予定です。最低限の戦闘力があれば、ゴーレムですのでお二人の盾になり、お二人を逃す時間を稼ぐことができます。
他のゴーレムと同期しているため、マスターとお父様の側に私がいれば、畑の状況を常に把握できます」
「ゴーレの同行を認めよう!しかし一つだけ約束してほしいことがある。ゴーレ、おれの息子をマスターと慕ってくれてるお前や他のゴーレム達はライルにとって大切な存在だ、ということはおれにとっても大切な存在だ。
だからおれらを守ろうとするのは止めないが、自分を犠牲にするような決断はしないことを約束してほしい」
「ありがとうございます。お父様。その約束は守らせていただきます」
「じゃあ、だいたい12日後を出発を目処に冒険者ギルドに依頼を出しておく」
「わかりました」
「承知致しました」
「あと、明日の夜は空けておけよ」
「ん?なんで?」
「村長にライルがエクストラスキルを取得した報告をしにいったんだが、5歳でエクストラスキルの習得と通常スキルの『テイム』を持ってるなんて村総出でお祝いだと言い出してな。そこに狩人のカリムもいてな、大量の肉を取ってくるってやる気になってしまってな」
「そうなんだ…」
「フリードやノコやゴーレム達のことも一応伝えていて、パーティに呼んでもいいと言ってた。村の広場でやるみたいだし、村長としてもテイムしたモンスターが安全ってことを村で認知しようとしてるんだと思う」
「わかりました。パーティしてもらうだけだと申し訳ないので。夕方すぎにゴーレ達と広場で手伝いに行きます」
「わかった。それにはおれもついていく。あんまり大きく捉えなくていいからな。ただの飯だ!村長はライルにスピーチさせるとか言ってたけど」
「えーーー」
「これも経験だ。5歳とは思えないくらい大人びてるのに、こういう時は年相応になるなんてな!はっはっはー」
お父さんが高らかに笑うので俺は不貞腐れた。
「お父さん、明日は早くから森に行くので、お母さんの説得お願いします。ゴーレ、もう遅いから僕の部屋で休みな!いこ!」
お父さんは引き攣った表情になったが、俺は無視して部屋に行った。ちょっとした仕返しだ。
 




