2.スキルと魔法適性
部屋に朝日が差し込み、眩しくて目が覚める。
「もう朝か、この早くに目が覚めるなんて、前世の俺だと考えられないな」
俺は前世の自虐をボヤきながらリビングに降りた。
俺の家は貧乏だが家はそこそこ大きい。
2階には両親の寝室と俺の部屋、1階にはリビングとキッチンと畑と繋がっている倉庫のような部屋がある。
俺の先祖がこの村で1番の農家ということもあり、村でも広大な土地を所有していた。
しかし畑仕事をできる人が両親しかいないため、手付かずの土地が大半だった。
リビングに降りるとキッチンでお母さんが朝食を作っていた。
「お母さん、おはよう」
その声に気づき、優しく笑顔を俺に向けてくれる。
「おはようライル。今日もちゃんと起きられて偉いわね。そして5歳のお誕生日おめでとう」
「ありがとう、お母さん。僕も朝食の準備手伝うよ」
俺はお母さんの手伝いをするため、食器を並べ始めた。
「今日は奮発して朝からお肉があるからね。いっぱい食べてね」
「うん。ありがと!」
うちは基本自給自足で生活をしており、
食事は野菜中心で、たまに来る行商人に野菜を売り、そのお金で日用品や肉を購入していた。
前世の記憶が戻り、いろいろ事情を理解できるようになった俺は、両親からの愛情をとても感じることができた。
前世の両親も俺のことを愛してくれてたんだろうな。前世では結局親孝行できなかったから、この世界では絶対に変わってやる。
変わらなきゃだめだ。
「おはよう!ライルお誕生日おめでとう」
「おはようお父さん」
お父さんがリビングへ降りてきて、朝食が始まった。
食事をしているとお父さんが口を開いた。
「ライル、5歳になったのなら知っておかなくてはならないことがある」
そういうと、お父さんはこの世界の常識を教えてくれた。
5歳から10歳の間に、エクストラスキルというものを1つ取得すること。
エクストラスキルは取得する人に適正なスキルが与えられるということ。
「ライルは将来俺の跡を継いでこの畑で仕事をすることになるだろう。だが、もしエクストラスキルが農家向きじゃなくても心配するなよ。農家の仕事なんて慣れればスキルなんかなくてもやれるんだからな」
お父さんは俺が変なスキルを取得しても凹まないように気使ってくれているようだ。
「それにスキルにはエクストラスキルとは別に通常スキルというのがあって、それは鍛えてたら取得ができる可能性がある。まあ通常スキルは1つ持ってたら優秀、複数持っていると天才と言われているからな。
まだエクストラスキルが取得できるまで最長でも5年あるからな。あせらず少しずつ畑仕事を手伝ってもらうからな」
「はい、お父さん」
なるほど。あれ?でも、昨日ガチャでスキルが当たったのはなんなんだ?これは確認しなくちゃだな。
俺はスキルについて気になり、質問をした。
「お父さんとお母さんはどんなエクストラスキルを持ってるの?」
「お父さんはな『野菜の王様』といってな、野菜を育てる時間が普通の人が育てるよりも倍は早くなって、味も良くなるんだ。
そしてお母さんは『炎の癒し手』といって、癒しの炎を使って疲労などを回復したりちょっとした怪我を治したりできるんだぞ」
お父さんは言い終わると自慢げにこっちを見ていた。
「お父さんもお母さんもすごい!」
野菜の王様とかふざけた名前だけど、そのエクストラスキルがあったおかげで今まで生活できてきたんだな。
「ほかにどんなスキルがあるの?」
「いっぱい種類があるからお父さんも全部知ってるわけじゃないけど、
王都にいる騎士団長は『守護の剣』っていうエクストラスキルを持っていて、通常スキルも剣にまつわるものを3つ持ってるという。
他にも『小鬼の友人』というエクストラスキルを持ってる人は、ゴブリンをテイムして傭兵団を作ってるとか。
『テイム』って通常スキルを持ってるやつはちらほらいるらしいが、1つの種族に特化してるのはエクストラスキルだからなんだろうな」
スキルか。まだ全然わかんないから、前世でやってたゲームみたいにいろいろ試していくしかないな。
「ほんとにいっぱいあるんだね。お父さんいろいろ知っててすごいね」
嬉しそうににやけるお父さんに呆れているお母さんが
「カイン、スキルの話だけではなく魔法のお話もしてあげないとでしょ」
「まほう!!!!!」
お父さんは姿勢を正してしゃべり始める。
「そうだな魔法の説明もしないとな。
まず魔法には火・水・土・風・雷・聖・闇・無の8種類がある。
人は魔法適性というものがあり、生まれた時から使える魔法の種類が決まっている。
お父さんは土、お母さんは火と聖だ。
魔法適性はエクストラスキルを取得したら教会で調べてもらうんだ。
魔法適性が全くない人や、魔法適性が1〜3個ある人もいる。
適性がある属性は努力すれば使えるようになるが、適性がない属性はどんだけ努力しても使えるようにならない」
ん?じゃあスキルの風魔法はいったいなんなんだ?
「お父さん。スキルに魔法ってないの?」
お父さんはニカっと笑う。
「いい質問だ。スキルにも魔法はある。詳しくは知らないが、あるエクストラスキルで全属性魔法を使えるようになった人や、風の魔法適性しかなかった人が突然『火魔法』の通常スキルを手に入れて火魔法を使えるようになったらしい」
通常スキルの取得方法も不明となると『ガチャ』で手に入れたスキルは一体どうなるんだ?
「私もカインもエクストラスキルと魔法の相性がいいからうまくやってこられたのよ。ライルもライルにあったエクストラスキルと魔法適性があればいいわね」
「まあ心配するな。お父さんとお母さんの子供だから大丈夫だ。変なスキルだとしてもうまく扱えるさ」
「カイン!縁起でもないこと言わないの!」
とりあえずガチャで手に入れたスキルとアイテムの確認をしなくちゃダメだな。あと、詳しくわかるまではエクストラスキルを取得したことは黙っていないとな。
「話し込んでしまったな。せっかく今日の朝食は肉が入ってるというのに。ライルもマイアもご飯を食べよう」
俺達は再び食事を始めた。