287.カラッカVSソブラ(カラッカの街③)
「なんか目標みたいなのが必要だと思うんだ」
「あっ!それいいね」
「目標って?」
「うーん」
みんなの意見はすごいな。
僕もなんか力になりたい。
「共通の敵とか?」
「それいいじゃん!」
「でもそれって誰がやるの?」
「あー。そうだよね。さすがに俺達以外からはまずいだろ」
あれ?これって僕にもできる?
みんなの力になれる?
「えーっと。僕やろうか?」
「本当か?」
「う、うん。これくらいしか力になれないから」
「そんなことないけど、やってくれるのなら助かるわ」
「うん。ぼ、僕やるよ」
▽ ▽ ▽
気を失っていたのか。
それにしてもさっきの映像はなに?
俺の目の前には額を押さえて藻掻いているソブラが居た。
「ぐああああ。小童!何をした」
俺には何が起きたのか、まったく理解できなかった。
だけど今がチャンスだということは理解できた。
「エアアーム!」
俺はすぐに拳を握り、ソブラを叩きつけた。
「グアアア!何をした!何をしたんだー!!」
ソブラは大鎌を振り回し、エアアームを切り刻む。
「グアアアアア!切り刻め!」
地面から影でできた刃物が飛び出す。
しかし狙いが定まっていないのか、周りの木々を切り倒すだけだった。
「癒やしの風!癒やしの風!反動があってもやるしかない。あいつが元に戻る前にやるしかない」
すると目の前に小さなウィンドウが現れた。
「え?」
☆神ガチャ
今あなたが引かなくてはいけないガチャ。
中身は強い武器(身体への負担大)
ポイントではなくペナルティを受けることで1回引くことができる。
「は?神ガチャ?」
俺は考えた。
だけど答えは決まっている。
ソブラの強さは異常だ。
ヒューズさんやガッツさんでも倒すことはできない。
このタイミングでのガチャはガチャ業者さんの導きだ。
「お願いします!ガチャ業者さん!」
俺は[回す]をタップした。
すると目の前に真っ白な美しい大剣が地面に刺さって現れた。
「これが強い武器?俺は剣術スキルないんだけど……」
俺は戸惑いながらも自分の背丈よりも大きな大剣を地面から引き抜いた。
「え?」
俺の身体じゃ扱えないはずの大きさなのにまるで重さを感じない。
何回か振ってみるが、まったく違和感なく使える。
「すごい。それになんて言えばいいかわかんないけど、この剣凄い」
言葉にできなかったがこの剣は凄い。
凄いというかなんというか神々しい。
俺は剣を構えた。
それに気づいたソブラが叫んだ。
「またお前か!!」
「ワープ!」
俺はソブラの後ろに回り込み、剣を振り降ろした。
「グアアアアア!」
ソブラは避けようとするが間に合わず、腕を斬り飛ばした。
「またか!またか!またか!」
「うるさい。黙って斬られてくれ」
「グアアアアアアアアアア!」
俺は剣を十字に振り、ソブラは綺麗に4等分になった。
「初めて人を殺しちゃったよ。でもこれしか止める方法がなかったんだよ。ヒューズさんに怒られるかな」
4等分になったソブラを見ると額から魔石のようなものがこぼれ落ち、ソブラの身体から黒い靄のようなものが出ていった。
周りに立ち込めてた暗雲も薄くなっている。
「あとは残ってる悪魔貴族だけか………。グガアアアアア!」
身体中に激しい痛みが走った。
「こ、これがペナルティか」
激しい痛みで俺の意識は無くなった。
▽ ▽ ▽
俺とゴーレさんは暗雲の中を走った。
「ジェイクの野郎、本当にこの中にライルが居るのか?」
俺達はライルの指示で帝国との国境に向かったのだが、帝国の兵士は全く現れなかった。
アースをその場に残し、ライルの援護のためにカラッカにやってきていた。
「ゴーレさん。ライルの場所はわかるか?」
「いえ。この暗雲のせいで全くわかりません」
「くそ!この雲の原因を倒しに行ったんだろ?まだ消えてないということは戦闘中か?」
俺とゴーレさんはひたすら暗雲の中を走った。
「あれ?雲が薄くなってきてないか?」
「はい。マスターが倒したのでしょう」
「急ぐぞ。たぶん無茶してるはずだ」
ヒヒーン!ヒヒーン!ヒヒーン!
「フリード!フリードの声が」
「こちらで聞こえました」
俺達はフリードの声が走ると、ボロボロで横たわったフリードを見つけた。
「フリード!大丈夫か?」
俺はすぐにポーションをかけるが、これだけでは足りなそうだ。
フリードは首を振って何かを伝えようとしていた。
「マスターはあっちなんですね」
ゴーレさんはフリードの意思を理解したのかすぐに走り出した。
「フリード、後で戻ってくるから待ってろ」
ヒヒーン
俺はゴーレさんを追いかけた。
▽ ▽ ▽
追いつくとゴーレさんがしゃがみこんでいた。
「ライルは居たか……え?」
ゴーレさんがしゃがみこんで抱きかかえていたのはボロボロで手足がギリギリ繋がっている状態のライルだった。
「おい!ライル!ライル!」
声をかけるが返答はない。
生きているのが不思議なくらいボロボロになっている。
「す、すぐにポーションをかけてやるから、待ってろライル」
「ヒューズ殿。ポーションでは治すことはできないと思います」
「そんなことないだろ。ライムが作ったポーションだぞ」
「いえ。ライムのポーションでも無理でしょう。ですが、1つだけマスターを治せる可能性がある物を知っています」
「それはなんなんだ?」
「マヌセラでガボガさん達に使用したマジックアイテムです」
俺はすぐにマジックバッグを見たが、あのマジックアイテムはコータさんから3つしかもらっていなかった。
「すまん。あれはもうないんだ」
「いえ。あります。マスターがユイという冒険者からもらっているのです」
「それならすぐに使おう」
「わかりました」
ゴーレさんは繭のようなマジックアイテムを使うと繭がライルの身体を包んだ。
「起きるまで、俺達で商会を守らなくちゃな」
「はい。マスターが目覚めるまで、よろしくお願いします」
ゴーレさんは深く頭を下げた。
「みんなで守るぞ」
▽ ▽ ▽
目覚めると見覚えのある天井だった。
「あれ?ソブラを倒して、そのあと何したんだっけ?」
ベッドから降りて立ち上がると、身体に力が入らない。
「あれ?寝すぎた?」
部屋を出ようとすると扉が開いた。
扉の先にはゴーレが立っていた。
「あっ!おはようゴーレ」
「おはようございます!」
「また無理しちゃったよー。どれくらい意識無くなってた?てかみんなは無事?」
「2年と少しです。皆様無事に過ごしております」
「2年と少しかー。え!?!?!?!?2年???????」
「はい。マスターのお目覚めをお待ちしておりました」
ゴーレは俺の手を握った。
握られた自分の手を見て、2年の月日が経ったのを感じた。




