285.カラッカVSソブラ(カラッカの街①)
カラッカに到着した。
家は壊れていない。
襲撃はまだなのか。
ドゴーン!
ボーン!
そんなことはないな。
カラッカの街でこんな音は聞いたことない。
部屋から出ると、アースの仲間のコティとベボンが待っていた。
「ライルさん。お待ちしてました」
「カラッカの状況をお伝えします」
「お願い」
するとコティが話し始めた。
「現在、街の外は原因不明の暗闇に覆われています」
「え?どういうこと?」
「すみません。我々には原因がわかりません」
コティは頭を下げた。
「そうか。被害は?」
「最初に魔法での攻撃を少し受けましたが被害はほとんどありません。現在は黄盾騎士団のオステオのスキルによって街が防壁で囲われています。先ほどの爆音は防壁への攻撃の音でしょう」
「なるほど」
「オステオはスキル発動時には動けないとのことで、光剣の輝きが冒険者を率いて外の敵と戦っています」
「あいつらかー。敵は?1000体?2000体?」
「5人です」
「は?」
俺は驚いた。
たった5人で襲撃?
全勢力で来なかったのか?
俺が首を傾げていると、コティが口を開いた。
「ライルさん。5人ですが、領主のソブラとソブラ領の貴族です」
「え?貴族って強いの?」
「戦闘の基礎は学んでいるので平民よりかは強いと思いますが、冒険者よりは弱いです」
「え?じゃあ光剣の輝きで十分?」
「いえ。5人は例のマジックアイテムで魔力を身体に注いでいて、人間とは思えない姿に変貌しています」
「うわー。そういうやつね……」
俺は一気にめんどくささを感じてしまった。
「とりあえず向かうよ。うちのメンバーでカラッカの街に居るのは2人だけ?」
「いえ。アイザック様とセフィーナ様がこちらにいらっしゃいます」
「なるほど」
「それとフリードが庭に」
「え?」
庭を見ると嬉しそうにこちらを見ているフリードが居た。
「あれー。村にいるはずだけどなー」
「いつのまにかいました」
「わかった。じゃあパパっとフリードに乗って倒してくるね」
俺が庭に向かおうとすると、ベボンが口を開いた。
「ライルさん!ソブラにはお気をつけてください」
「ん?」
「ソブラは他の貴族とは比べられないような魔力を感じます」
「なるほど。わかったよー。2人はアイザックさん達の護衛をお願いね」
「「わかりました!」」
2人は家から出ていった。
俺はフリードの元に向かった。
「おいー。なんでいるんだよ」
ヒヒーン!
フリードは俺の顔を嘗め回している。
「まあ寂しかったのと、俺の手伝いに来てくれたってことだよな」
ヒヒーン!
「よし。じゃあ行くか」
俺はフリードに跨り、家を出た。
▽ ▽ ▽
街はコティ達の言うように暗かった。
変な暗雲が街を囲んでいる。
「うーん。どうしようか」
ヒヒーン!
まずはオステオさんを見に行くことにした。
「防壁はドーム状だから、中心地に居るだろう。フリード、すすめー」
ヒヒーン!
フリードはものすごいスピードで街を走った。
数十秒走ると人だかりを見つけた。
よく見ると王女にセフィーナさんやアイザックさんが座っているオステオさんの周りを囲っていた。
「アイザックさーん」
俺が手を振って近づくと、アイザックさんは飽きれたような顔をした。
「ラ、ライルさん!こんな時になにしてるんですか?」
「加勢ですよ」
「はぁー。そういうことを聞いたんじゃないんですけど……」
アイザックさんは頭を抱えた。
そんな様子を王女やセフィーナさんを含めた数人が遠くで見ている。
「オステオさんのスキルはどれくらい持ちそうなんですか?」
「本人が言うにはもって1時間ほどと」
「じゃあ大丈夫そうですね。パパっと倒してきますね」
「え?ライルさんだけで平気なんですか?」
「うーん。まあ時間稼いでいたらヒューズさんやガッツさんが来ると思うので」
「時間稼ぎってことですね」
「倒せそうなら倒しますけどね。俺もソブラにはムカついてるんで」
アイザックさんは再び頭を抱えた。
「わかりました。気を付けてください」
「はい!じゃあ行ってきます」
俺はそう言って街の外に向かった。
▽ ▽ ▽
街の外に出ると見知った顔が悪魔のような奴と戦っていた。
光剣の輝きと警備隊長のデンさんだ。
あの悪魔のような奴がソブラ領の貴族か。
「想像以上に強そうなんだが……。あのオークやワーウルフより強いんじゃないか」
俺はさっきまでの軽口を心の底から反省した。
「これは本格的に時間稼ぎだな……。とりあえず光剣の輝きと一緒に戦うか」
俺は鬼速のグローブから森帝のロッドを取り出した。
「フリード行くよ」
ヒヒーン!
フリードは俺を乗せて、悪魔のような貴族へ向かって行った。
「フリード!吹き飛ばせ」
ヒヒーン!
冒険者の頭上を『空歩』で飛び越えて、悪魔貴族を吹き飛ばした。
「ワープ!」
吹き飛んだ悪魔貴族の後ろにワープをし、森帝のロッドを振り降ろす。
「魔装して手ごたえがあるにはあるけど……。エアショット!エアショット!エアショット!」
悪魔貴族は何もなかったかのように立ち上がった。
「グワアアアアア!」
「ですよねー。俺じゃ無理かもだなー」
俺はワープで距離を取った。
「まあやるしかないよね。こいつを5体かー半分は倒しておきたいな」
森帝のロッドを構えると後ろから声をかけられた。
「おい!お前死んだんじゃないのか?」
「ジェイクか。ちょうどいい!ちょっと助けてくれ。こいつは俺だけじゃ無理だ」
「俺の質問に答えろよ!まあいい。こいつにはさっきからやられまくりなんだよ」
ジェイクは俺の横に来て剣を構えた。
「許してはないからな」
「今はいいだろ」




