281.カラッカVSソブラ(マヌセラ②)
「があああああ!クソ魔法使いが!」
手首を切断されたメーサルは私に向かって叫んだ。
「あなたのスキルの対象者って1人みたいね」
『増殖』で増えた私がノヴァにポーションを飲ませている。
「1対1なら最強かもしれないけど、私達2人と同時に戦える?」
「黙れえええ!!!そんなのがばれてもお前らに負けるわけないだろおおおお!」
「そう?じゃあやってみる?ノヴァ行ける?」
ノヴァは『増殖』した私2人に抱えられている。
「うん。全力じゃないけど、メーサルくらいなら余裕だよ」
「よかった。じゃあ行くわよ」
「うん!」
私はノヴァに風魔法を纏わせ、メーサルに向かわせた。
「くそおおおおおがあああああ!」
メーサルは私に手のひらを向けて握る。
魔法が使えなくなった。
ノヴァは海面に着水すると同時に『海獣化』してメーサルに飛び掛かる。
「があああ!」
メーサルは殴られながらも、ノヴァに手のひらを向けて握る。
『海獣化』は解除されるが、私はすぐに炎の矢を『増殖』した全員で発動してメーサルに放った。
「効くかあああ!」
手のひらを私に向けて握ったので途中で炎の矢は消えてしまうが、数本だけ消える前にメーサルに刺さる。
「ほんと器用ね。でも私の魔法を縛ってて大丈夫?後ろ見てみな」
「ああ?」
メーサルは後ろを見ると『海獣化』したノヴァが腕に回転させた水を纏っていた。
「何度も『海獣化』させるな。魔力の消費がきついんだよ」
ノヴァはそう言いながらメーサルを殴った。
腕に纏った水は刃物のようメーサルの身体を抉りながら吹き飛ばした。
ノヴァは殴ると同時に『海獣化』が解け、海面に倒れこんだ。
「リリアン。魔力切れたー。魔竿も魔力使うから、あとは頼んでもいい?」
「うん。ありがとね」
タック達の様子を見るとそっちも勝負がついたようで、こっちに向かって来ていた。
船が何隻かマヌセラに向かっているが、あの程度ならダモンとパリスに任せていいだろう。
私は『増殖』を解除して、吹き飛んだメーサルの元へ向かう。
▽ ▽ ▽
メーサルはボロボロの身体になりながらも立ち上がっていた。
さっきと雰囲気が全く違う。
メーサルを纏っている魔力がおかしい。
よく見てみると手にはあの注射器が握られていた。
「まためんどくさいことをやってくれたみたいね」
メーサルは私に気づくと風魔法を纏って猛スピードで向かってくる。
「ストーンシールド!」
私は石の盾を何枚も出してメーサルの突進を防ごうとしたが、どんどん破られていく。
「グアアアアアアア!」
メーサルの様子が明らかにおかしい。
しかも容姿もだいぶ変わっている。
頭から角が生えて背中には羽が生えている。まるで魔人族のような容姿だ。
しかも風魔法で大きな爪のようなものを作り、石の盾をどんどん破壊している。
「ググアアアガアア!」
石の盾が残り数枚になるとメーサルが呻きだした。
「いったいなんなの?ウォーターアロー」
私は『増殖』で大量の水の矢を出した。
水の矢が刺さるがまったく勢いが止まらない。
「ガアアアアアアア!」
メーサルが叫ぶと風の刃が現れ、次々と石の盾を破壊していく。
私は突っ込んできたメーサルに吹き飛ばされた。
「ぐっ!なんなの?魔法使いを嫌っているくせにあいつも魔法を使ってるじゃない」
「グギャアアアア」
雄たけびのような声をあげると、風でできた鳥を私に向けて飛ばしてくる。
それと同時にメーサルが突っ込んでくる。
「ウィンドアロー!」
私は風の矢で鳥を破壊するが、メーサルは私を殴り飛ばす。
石の盾で防御するが破られて身体が吹き飛ばされた。
威力は完全に落とせなかった。
「があっ!なんで魔法もスキルも縛らないの?」
私はがむしゃらに攻撃してくるメーサルに困惑した。
「グウォオオオオオオ!」
メーサルは身体が風に包まれていく、身体に張り付いた風は形を変えて鎧のようになった。
風の勢いは凄く、触れたら身体がえぐれてしまうだろう。
「あれに殴られたら、さすがにまずい!ストーンシールド!増殖!」
私は再び石の盾を大量に出した。
勢いを落としている間に攻撃を当て続けないと倒せない。
「ストーンランス!増殖!」
大量の石の槍を頭上に準備する。
「悪いわね。さすがにここまでしないと止まりそうもないから」
「グウォオオオオオ!」
メーサルは石の盾を破りながら私に向かってくる。
私はメーサルにストーンランスを放とうとした。
「ガアアアガガアア!」
バンッ!!
メーサルは石の槍を放つ前に爆発し、身体がバラバラになった。
「え?どういうこと?」
私は原因がわからないが、メーサルを倒すことができたみたいだ。
▽ ▽ ▽
私達はマヌセラの街に戻ってきた。
ガスター商会の船は3隻上陸していたようだ。
ダモンとパリス、それにレオのおかげで全く被害もなく街を守ることができたみたいだ。
「2人共お疲れ様。全然問題なかったみたいね」
「はい!レオがほとんどやっちゃいましたけどね」
ガルルルル!
レオが自慢げにしていたので、頭を撫でてあげた。
「メーサルとかいう奴は大丈夫でしたか?」
「うん。大丈夫よ」
ダモンの問いかけにそう答えたが、他の場所にもあの魔人族のような力を持った奴がいると少しまずいかもしれない。
「ダモンとパリス!申し訳ないんだけど、海でガスター商会のやつらが浮いてるから回収手伝ってくれる?」
「「はい!」」
「タックもお願い」
ギャウギャウ!
私は2人とタックと共に海へ向かった。




