280.カラッカVSソブラ(マヌセラ①)
「リリアン!ガスター商会の船がマヌセラに向かって来てる」
ノヴァから報告を受けた私は大声でみんなに指示を出した。
「予定通り、海獣の高波はタックに乗って船の破壊!雷獣の拳は街で防衛!私はあの女の対応をする」
「「「「「はい!」」」」」
海獣の高波と雷獣の拳は動き出した。
アースからの情報で、あのメーサルという女が指揮を執っているのはわかっている。
懲りてないなら、私が再度ジャーマンスープレックスで沈めてあげる必要がある。
私は風魔法を纏って、タックと並走して船に向かった。
▽ ▽ ▽
船は30隻。
「ノヴァ!全力でやっちゃって!」
「了解!行くよみんな!」
ギャウギャウ!
タックは船に突っ込んでいった。
ギャーウ!
タックは船に噛みつく。
「おい!このモンスターをどうにかするぞ」
噛みつかれている船の船員は叫んでいた。
矢や魔法でタックを攻撃しようとするが、私が水の盾を出して防いだ。
他の船が近づいてくる。
「ガボガ、ミゲミ、ネゾネ!行ってきな!」
「任せろ!ライル商会に恩を返すぞ」
「「おう!!」」
人間サイズの3人が寄ってくる船に飛び乗った。
「1人で乗り込んでくるなんてアホだな」
ガボガは船員の言葉を無視して、巨人の輪に魔力を込めた。
すると身体がどんどん大きくなり、船はミシミシと音を立てて崩壊していった。
ミゲミとネゾネが乗り込んだ船も同じように崩壊し、船員の叫び声と共に沈んでいった。
「みんな、次の船に向かうよ!」
「「「了解!」」」
ガボガ達は身体のサイズを小さくしてタックに乗り込んだ。
私は周りを見渡した。
「あの女はまだ現れないようね」
▽ ▽ ▽
海獣の高波は次々に船を破壊していた。
「あと10隻!どんどん行くよ!」
ノヴァが船を壊して海に浸かっているドグド達に声をかけた。
バリバリバリッ!
海中に雷が広がり、大量の魚が海面に浮かび上がってきた。
「ぐっ!」
ドグド達も船員も身体が動かなくなっているようだ。
「メ、メーサル様。なんで俺達まで……」
船の破片が漂う海面が盛り上がり、メーサルのテイムモンスターのグラーモが海面に現れた。
「ミャハハハ!あんた達を犠牲に巨人共を倒せたんだからいいじゃない」
グラーモの背中に乗るメーサルは笑っていた。
「残るはノヴァとキャリータートル、それにぷかぷか空を飛んでるクソ魔法使いだけね」
「またやられに来たのね」
「ミャハハハ!今回はあんた用に素敵なものをガスター様から頂いてるの。仲間が暗殺されて悔やんでいるところ悪いけど、マヌセラはぶっ壊しちゃうね」
「やれるものならね」
メーサルはニヤニヤしながら私を見ていた。
「とりあえず、魔法は使えなくしておきましょうか」
メーサルは私に手のひらを向けて、ぎゅっと握る。
私は予想通り魔法が使えなくなり、海面に向かって落下した。
「え?魔法は使えないはずなのに!」
メーサルは驚いていた。
私は海に落ちず、海面に立っていた。
「あんたのスキルを知ってて対策しないはずがないでしょ」
私は水面を歩けるようにガルスタンとマデリンに特注でブーツを作ってもらっていた。
「マジックアイテムか。まあいいわ。それよりもめんどくさいのはこっちだからね」
そう言うとメーサルは再び手のひらを向け、拳を握る。
「エクストラスキルも使えないってことね……」
『増殖』も使えないみたいだ。
「グラーモちゃん!あのキャリータートルとノヴァを倒しちゃって!私はこの魔法使いをボコボコにするから」
グラーモから飛び降りると、メーサルは宙を歩いていた。
「私もちゃんと対策済みだから」
そう言いながらメーサルは私に向かって突っ込んできた。
私は突っ込んでくるメーサルを掴んで投げ飛ばそうとするが、想像以上にメーサルの力が強くて投げ飛ばせない。
「ミャハハハ!魔法は縛っちゃうの決定だから、今回は身体強化のマジックアイテムたっぷりよ」
メーサルの力に耐えられなくなり、海面に叩きつけられた。
「海面を歩けるマジックアイテムは靴だけみたいね。じゃあこれは痛いかも」
メーサルの人差し指につけている指輪が黄色に光って電流が海に流れる。
「ぐっ!」
電流を私に直撃した。
身体がマヒしてまともに動かせない。
「ニャハハハ!何もできなくなっちゃったねー」
ニヤニヤしながら私を見るメーサル。
何度も人差し指から電流を出して、叫んでいる私を見て楽しんでいる。
「まだ耐えられるかな?どうかな?」
またニヤニヤしながら電流を出そうとしたメーサルが何かにぶつかって吹き飛んだ。
「ぎゃっ!」
「リリアン、大丈夫?」
私を抱えてくれたのは海獣化したノヴァだった。
「あ、あのテイムモンスターは?」
「タックとミゲミが押さえてるよ」
グラーモを見てみるとタックと岩を身体に纏ったミゲミが戦っていた。
「ミゲミは電流が来る前にギリギリ身体に岩を纏ってて気絶してなかったんだ」
「そうなのね。ごめんノヴァ。もう動けない」
「うん。任せて、私があいつを倒す」
「お願い」
ノヴァは私にポーションを飲ませて海面にそっと浮かせると、メーサルの元へ向かって行った。
▽ ▽ ▽
「あいつにはうちもガツンとやってやりたかったんだよね」
メーサルにはマヌセラをかき乱された借りがある。
だけどリリアンがあんなにボロボロにされるとは思ってなかった。
スキルやマジックアイテムについては聞いている。
気を抜いちゃいけない相手だ。
メーサルは既に立ち上がっていた。
「ノオオオヴァアアアア!邪魔すんなああああ!」
人差し指をうちに向けて電流を飛ばしてくるが、海面を跳び上がり避けていく。
魔竿を構えて回転盤を回す。数字は5だ。釣り針は黒い鉄球に変わった。
「よし!」
魔竿を振って、メーサルにひっかける。
「くらえ!」
回転盤を回すと数字は1。
黒い鉄球から大量の針が飛び出て、メーサルの身体を突き刺す。
「がああああ!何してんだあああ!」
メーサルはうちに手のひらを向けて握った。
うちは気にせず魔竿の回転盤を回す。数字は6。
「いいねー!くらえ!!!」
魔竿を振るが、釣り針が変化しない。
「え?あれ?」
「ニ、ニャハハ、なんでマジックアイテムの能力も縛れないと思ったの?」
再びメーサルがうちに手のひらを向けた。
「まずい!」
うちは全力で泳いだ。
「無駄無駄!」
メーサルが手を握ると、海獣化していた身体が元に戻ってしまった。
「くらえ!」
メーサルは人差し指から電流を飛ばしてきた。
「ぐあっ」
体中に電流が走る。
痺れる身体を無理やり動かそうとするが全然動かない。
「ニャハハハ!海獣のノヴァもこんなに弱いなんてね」
メーサルはうちの胸ぐらを掴んで持ち上げた。
「魔法使いじゃないから、身体は鍛えてるんでしょ?」
メーサルは何度もうちの腹を殴り続ける。
「全然平気よね?拳なんて私が食らった針に比べたら全然よね?」
メーサルは何度も殴ってくる。
「そろそろ死んで」
メーサルは拳を振りかぶった。
うちは諦めて目をつぶった。
バシャン!
なぜかうちは海に落ちた。
目を開けると胸には切断されたメーサルの腕が。
「「「「「「「「「「「「「ごめんねノヴァ。遅くなったわ」」」」」」」」」」」」
声の主はリリアンだった。
しかもリリアンが数十人もいて、全員空を飛んでいた。




