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279.ソブラの襲撃開始

俺達は人型のモンスターと丸2日戦った。


「くそ!全然当たらねー」

ガッツさんは悔しそうにしていた。


俺達は交代で戦っていて、今はガッツさんの番だった。

丸2日戦ったおかげで、人型のモンスターのサイズは元々の10分の1ほどになっていた。


ヒューズさんもガッツさんも攻撃が当てられないことを悔しがっていたが、俺にはとてもいい特訓になった。

風魔法の使い方や攻撃のいなし方など、参考になることが多かった。


戦っていて俺達は少し感じたことがあった。

人型のモンスターは小さくなるにつれて攻撃的になり、魔法攻撃の威力も落ちていた。

そして何か憎悪のようなものが増していた。


ヒューズさんは人型モンスターの正体が卵に込められた魔力の集合体ではないかと予想していた。

そしてその予想は卵に込めている魔力は無理やり奪ったものではないかという可能性に繋がった。


魔力を込める注射器のようなものがあるなら、魔力を抜くマジックアイテムがあってもおかしくない。

人型モンスターから感じ取れる憎悪は魔力を無理やり奪われた者の憎悪ではないかと。


事実はまだわからないが、俺もヒューズさんの予想にしっくりと来ていた。


▽ ▽ ▽


「ライル、そろそろ終わるぞ」

人型のモンスターを見ると、もうほとんど動いていない。

ガッツさんの攻撃をギリギリ防いでるようだった。


「ガッツ!終わらせろ」

「任せろ」

ガッツさんは小手に雷を纏わせ、人型モンスターを殴った。


ガッツさんのパンチは風の盾を破壊し、人型モンスターに当たった。

人型モンスターは霧散し、ダンジョンコアが現れた。


「やっと終わりましたね」

「そうだな。ダンジョンコアはもらうんだろ?」

「そのつもりです」

俺はダンジョンコアの回収をした。



その様子を見たヒューズさんが口を開いた。

「これからどうする?」

「そうですね。ポゼッションドールを使って、ササントの家に戻りましょう。アースから何か連絡があるかもしれません」

「なかった場合は?」

「うーん。ソブラに乗り込みます?」

俺がそう言うとヒューズさんは少し考えた。


「そうだな。地上に戻るころには何かしら連絡があるだろ」

「そっか、すぐに戻れないのか」

俺はめんどくさいダンジョンをまた通らなくてはいけないことを思い出した。



▽ ▽ ▽



ダンジョンの外に出たのは、攻略してから2日もかかった。


扉の階層は普通の空間に変わっていて難なく進めたが、天候の変わる階層は猛吹雪だった。

マデリンからもらっていたマグマタートルのブーツが無ければ、天候が変わるのを待ち続けることになっていた。


「さあ。家に帰りましょ。アースからの連絡があるかもしれません」

俺達はポゼッションドールを使い、家に向かった。


すると家にはアースの姿があった。

「ライルさん!」

アースは少し焦っているようだった。


「何があった?」

「ソブラが動きました」

「やっぱり。それでいつ?」

「今日だ。昨日から進軍は始まっている」

想像よりも速い動き出しに俺は焦った。


「みんなには?」

「昨日のうちに伝えた、リリアンさんの指揮で配置は済んでいる」

「わかった。進軍の詳細を聞かせてくれ」

「はい」

俺はアースから進軍の内容を聞いた。


進軍は4部隊でカラッカ・マヌセラ・ササント・ヤルク村を襲う予定の様だ。


「なるほど……」

「申し訳ありません」

アースは頭を下げた。


「どうした?」

「ライルさんに言われていた装置を発見したのですが破壊できませんでした。それに襲撃にその装置を持ち出されました」

「あーこれはちょっとめんどくさくなりそうだな」

魔力を卵に込める装置と注射器はできれば破壊しておきたかった。


「各隊の戦力は?」

「ソブラ領を脱出する前に領主とガスターが話していた内容なので、正確ではないかもしれませんが……」

「問題ない」

俺がそう言うとアースは頷いた。


「カラッカにはソブラ領主が直々に兵士の指揮を執るそうです」

「は?領主が?」

「はい。カラッカ領主を自分の手で殺したいと言ってました。それにカラッカの襲撃を終えたら、そのままダラーガ帝国に亡命するそうです」

「なんで?他国が出てくるんだ?」

俺は首を傾げた。


「ダラーガ帝国はソブラに協力しているそうです。この襲撃のタイミングでダラーガからも兵を出すと言っていました。挟む形でカラッカを完全に潰すつもりの様です」

「どういうことだよ」

俺は意味が分からなかった。


ヒューズさんが口を開いた。

「そういうことか」

「どういうことです?」

「ダラーガ帝国はカラッカ領に面している隣国だ。カラッカがもし敗北すれば、ソブラ領主がカラッカを治める可能性も出てくる。そうなれば今までよりもソブラの手助けがしやすくなり、この国を侵略しやすくなるということだろう」

「まじかよ……」

単なる隣領とのいざこざが、他国も巻き込んだ話になるなんて。


「セフィーナさんから領主にこの話を伝えてもらったので、一部のカラッカの兵士や冒険者は国境に向かっています」

「厳しそうだな……」

ヒューズさんは渋い顔をしていた。



「マヌセラにはガスター商会副商会長のメーサルとガスター商会の従業員。ヤルク村にはグリモスという男が指揮を執るそうです」

「グリモス?」

俺はなぜか聞いたことのあるような気がした。


そんな俺を見ていたゴーレが口を開く。

「アイザック様の前任の方です」

「あーあいつか!ソブラに逃げていたのか」

グリモスは元商人ギルドの職員で、逆恨みで俺を襲撃してきた奴だ。


「そしてササントにはガスターと領民が進軍しています」

「領民?」

「はい」

アースは少し怒っている様子だ。


「ソブラ領はひどい状態です。領民は貧困。商人もガスター商会が仕切っているのでまともな値段で食料を購入できない。それに私が調べた情報よりもだいぶ人口が減っているように感じました」

「え?」

「少しの食糧を報酬にして、ガスター商会が領民を集めていました。その領民を使ってササントを襲撃するようです」

「領民はそこまで切羽詰まってるってこと?」

「はい。それに集められた領民は様子がおかしかったので、ガスター商会に何かやられている可能性があります」

「なるほど……」


アースはソブラが許せないのだろう。

拳を強く握り震えていた。


「俺達が防衛するのは、ササントと戦力が足りなそうな国境?」

俺がそう言うとヒューズさんが口を開いた。


「カラッカも心配だ。性格の悪い方法で攻められたらオステオさん達だけじゃ対応できないかもしれない」

「わかりました。カラッカには俺が行きます。ヒューズさんはノコとアースを連れて国境に、ガッツさんはライムとササントを」

「わかりました。ヒューズさん達は私が影に入れて運びます。その方が馬車なんかよりは断然早いので」

「お願い」

アースは頷いた。


「ヒューズさんとガッツさんも問題ないですか?」

「ああ。すぐ終わらせてお前の手伝いに行く」

「領民は怪我をさせずにちゃんと保護してやる」

「2人共、よろしくお願いします」


俺がそう言うと、ノコとライムが足元にやってきた。

「ノコとライムもよろしくね」

ジジジジジジ!

ポニョ!ポニョ!


俺達は秘密の通路を使い、カラッカに向かった。



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