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277.ワニワニパニック

扉の中に入ると半裸のガッツさんとライムとノコがいた。


「ライル!なんだその姿。汚すぎだぞ」

「しょうがないじゃないですか!クリーン」

身体が綺麗になった俺の周りをライムとノコは飛んだり跳ねたりしていた。

怪我をせずここまで来れていて安心した。


「ガッツさんが入った扉はどんなところだったんですか?」

「ああ。海だったよ。大量のモンスターが居る海。必死で泳いだわ」

「うわーそれは辛そうですね」

「てか扉入った瞬間お前らが居なくなったから焦ったぞ」

「それに関しては勝手に入ったガッツさんが悪いです」

俺はガッツさんに説教をした。


説教をしていると、俺達がいる空間に扉が現れた。

その扉から出てきたのはゴーレだった。


「大丈夫だった?」

「問題ありません。私を眠らせようとしてくるモンスターが大量にいましたが、私は寝ません」

「ゴーレ以外だったら危なかったね」

「そうかもしれません」

ゴーレの服が少し汚れていたので『クリーン』をかけてあげた。


「あとはヒューズさんか……」

「あいつなら大丈夫だろ」

「それならいいんですけどね。扉の中が結構尖ってるじゃないですか、ヒューズさんって案外バランス型だから苦戦しそうだなと」

「あーそれはそうかもな」


俺達はヒューズさんの到着を待ったが、一向に現れなかった。


▽ ▽ ▽


半日以上待ったが、ヒューズさんは現れなかった。


「さすがに遅いですよね」

「そうだな。俺も少し心配になってきた」

「まだ待ちますよね?」

俺がそう問いかけると、ガッツさんは難しい表情をした。


「あと半日だけ待とう。それで来なかったら先に進む」

「え!?」

「大丈夫だ。ヒューズなら必ず来るから」

「ですよね……」


ガッツさんはそう言いながらも不安そうだった。




4時間ほど経った。

ガッツさんはうろうろし始めた。

不安なのだろう。


「マスター!」

ゴーレの横に扉が現れていた。


扉が開き、その中からボロボロになったヒューズさんが出てきた。


「ヒューズさん!」

「みんな合流してるってことは俺が最後か。すまん遅くなった」

「大丈夫なんですか?」

「ああ。ちょっとめんどくさかったが、少し休めば大丈夫だ」

そう言ってヒューズさんは地面に座った。


「癒やしの風!クリーン!」

俺はヒューズさんを回復させた。


「どんな場所だったんですか?」

「壁が大量にある洞窟だ」

ヒューズさんは完全に疲れ切っていた。


「なんでこんなに時間がかかったんですか?」

「壁を壊して進むとまた壁があって、それを壊して進んでもまた壁がある」

「なるほど。でもそれだけじゃこんなにボロボロにならなそうですけど」

「2000個も壁を壊したんだ。それに壊すたびに壁の厚さが増していた」

「うわーえぐい」


もし俺がその扉を選んでいたら、ヒューズさんの5倍は時間がかかっていたかもしれない。


「悪いけどさすがに疲れた。一回寝させてくれ」

「わかりました。ヒューズさんが回復するまではここで休憩にしましょう」

「悪いな」


そう言うとヒューズさんは横になった。


▽ ▽ ▽


「あー回復したぞ!」

ヒューズさんは起き上がりながらそう言った。


「大丈夫そうですか?」

「問題ない!ドラゴンが出てきても余裕だ」

「ドラゴンは勘弁してほしいんですけど……」


ヒューズさんはちゃんと回復できたようだ。


「次もどうせめんどくさいんだろ」

「ガッツ、お前は勝手に動くなよ」

「わかってる。お前が合流する前に、雇い主にすこぶる怒られた」

「あたりまえだ」

ガッツさんへの説教は意味があったようだ。



「じゃあ降りるぞ。先頭は俺が行く」

「お願いします!」

俺達は地下16階層に向かった。




地下16階層は沼地のようだ。


「今のところは普通だな」

「そうですね。でも絶対めんどくさくなりますよ」

「だな。気を引き締めていくぞ」

「はい!」

「おう!」


ヒューズさんはそう言って沼に踏み入れた。

すると沼の中から小型犬サイズのワニが飛び出してきた。


飛び出してきたワニをヒューズさんは斬り捨てた。

「トラップアリゲーターだ。俺が歩いた場所と同じところを歩いてこい」

「わかりました」


ヒューズさんが歩くたびに沼からトラップアリゲーター飛び出てきた。

「この沼全部にトラップアリゲーターが居ると思った方がいい。俺が歩いてないところを絶対に踏むな」

「は、はい」

「それとノコに階段の位置を探してきてもらってくれ。できるだけ最短距離で行きたい」

「わかりました。ノコお願い!」

ジジジジジ!

ノコは頷いて飛んで行った。



俺達は慎重に1歩ずつ歩いて進む。

トラップアリゲーターは歩くたびに地面から飛び出てくる。

それを1匹ずつ倒して進んでいく。


ジジジジジジジ!

ノコが戻ってきた。


「ノコ、階段はあった?」

ジジジ!

ノコは飛びながら階段の方向を示してくれた。


それを見たヒューズさんが口を開いた。

「よし。このままノコに付いて行くぞ」

「はい!」


俺達は進んだ。



▽ ▽ ▽



地下17~20階層も沼地エリアだった。

トラップアリゲーターとボストラップアリゲーターしかいない階層だったが、歩くたびに飛び出る習性はめんどくさく、だいぶ時間がかかった。

俺も少しは戦ったが、基本的に先頭を歩くヒューズさんが戦った。


地下21階層に続く階段で俺達は休むことにした。


「はぁー」

「なんかしんどいな」

「初期のヤルクダンジョンはシンプルだったが、このダンジョンはライルが作ったダンジョンみたいだ」

「何が言いたいんですか?」

「性格が悪くてめんどくさい」

俺はヒューズさんを殴ったが、全く効いていない。


「ダンジョンに入ってどれくらい経ちましたっけ?」

「うーん。大体丸2日だな」

「まだそれだけしか経ってないのか……」

あまりにもだるい階層が多すぎて、1週間くらい籠ってる気分だった。


「俺らが死亡したって情報が広がるまで時間がかかるし、気長に攻略を進めようぜ」

「そうですね」



俺達は階段を降り、地下21階層に降りた。


地下21階層は広めの洞窟で、1体のモンスターが居た。

首が2つのワニでフリードよりも大きい。


「あのモンスターは?」

「知らないな」

「俺もだ」

ヒューズさんとガッツさんは首を傾げた。


「ちょっと見てみますね」

俺は『鑑定』を使った。


○鑑定結果不明

鑑定結果不明


「あ?」

目の前にいるワニのモンスターは、あのオーク達と同じく『鑑定』ができなかった。


「ヒューズさん、ガッツさん。鑑定結果が不明って出ました。そのモンスター厄介かもです」

「あーまじか」

「ちょっと楽しくなってきたな。ヒューズ、俺にやらせてくれ」

ガッツさんは一歩前に出た。


「いいけど無理するなよ?」

「ああ」

そう言うと小手に雷を纏いながらワニのモンスターに向かって行った。


「行くぞー!」

雷は拳だけではなく、身体全体に纏い始めた。


バギャアアアア!

ワニのモンスターはガッツさんを見つけ、叫んだ。


ガッツさんはものすごいスピードでワニの横に回り、腹を殴りつけた。

「くっ!硬ぇな!」

何発も殴り続けるが、ワニはビクともしない。


バギャアア!

ワニはガッツさんを尻尾で弾き飛ばした。


「ぐっ!」

ガッツさんは壁にぶつかった。



「ヒューズさん!大丈夫なんですか?」

「たぶん大丈夫だ。なんかあったら俺が行く。それにあんまりガッツを舐めるなよ、ソロでBランクまでいった男だぞ」

ヒューズさんは黙ってガッツさんの戦いをじっと見ていた。



「ははは!ダモンとパリスが居るから危ない依頼を避けてたんだ。久々に楽しくなってきた!」

ガッツさんが纏う雷が一層激しくなった。


ガッツさんはさっきよりもスピードが速くなり、ワニを殴り続けている。

だがワニはビクともしない。


ワニは頭を振ってガッツさんに頭突きをする。

「がっ!」

ガッツさんは攻撃を防いだが、勢いを殺せず吹き飛んだ。



「本当に大丈夫なんですか?」

「大丈夫だ。見てみろ!」

「え?」

吹き飛ばされたガッツさんを見ると、身体に纏っていた雷がさらに激しくなった。


「あれはなんなんですか?」

「ガッツは攻撃を食らうたびに、身体に纏う雷の威力が増すんだよ」

「え?」

ガッツさんの周りに落ちている岩が纏っている雷にぶつかって粉々に弾けた。


「それにガッツはまだ本気を出してない」

ヒューズさんはニヤニヤしていた。



バギャアア!

ワニは向かってくるガッツさんに飛び掛かり、二つの頭で噛みついた。


纏っている雷がワニの身体に当たりバチバチと音を立てている。

絶対ダメージが入っているのに、ワニは全く動じていない。


噛みつかれているガッツさんを纏っている雷はどんどん激しくなる。

どう考えても歯が身体に食い込んでいるのに、ガッツさんは笑顔になっている。


「雷虎纏い!」


ガッツさんが叫ぶと身体に纏っていた雷の激しさが落ち着いたが様子がおかしい。

ガッツさんの坊主に近い頭には雷でできた耳、尻には雷でできた尻尾がついていた。



「え?どういうこと?」

俺が戸惑っていると、ヒューズさんが口を開いた。

「あいつは『雷虎に護られし者』っていうスキルを持ってて、今のガッツは雷虎を身体に纏ってる」

「何!かっこいい!」

「だけど雷虎の力を使うためには大量の雷が必要で、『蓄電』ってスキルを使ってわざと攻撃を受けて身体に雷を貯めてたんだ」

「なるほど」

「ここからがガッツの本気だ」

ヒューズさんは変わらずニヤニヤしている。



ガッツさんはものすごい高さまで跳び上がり、ワニの背中に乗った。

「これは痛いぞ」


ガッツさんの手は雷でできた大きな爪が現れていた。

その爪をワニの背中に刺した。


ワニの身体からバチバチと激しい音が鳴った。


ギャグアアアアア!

ワニが苦しむように叫び始めた。


ガッツさんを振り払うように身体を振るが、ガッツさんはワニから飛び降りてワニの胴体に爪を何度も突き刺す。

ギャグアアア!

ワニは叫んでいる。


「よーし。ストレス解消できたから、これくらいで終わりにするか」


ガッツさんが拳を突き出すと、身体に纏っていた雷が全て拳から放たれた。

雷は虎の姿に変わり、地面を駆け回りながらワニに向かって行った。


ギャグアアアアアアアアア!

雷虎はワニに噛みつき、ワニの身体を雷が包んだ。


真っ黒こげになったワニは姿を消した。

しかしドロップアイテムは出てこなかった。



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