274.ライル死亡
「よーし。行きますか」
「「おう!」」
若い姿のヒューズさんとガッツさんは気合満々だった。
俺達はササントに来ていた。
今日から死亡情報を流し始めるので、俺達はポゼッションドールを使ってササントのダンジョンに向かった。
前回上位種がちらほら出てきたが、地下10階層まではたぶん余裕だ。
問題は地下11階層の天気が変わる階層だ。
マデリンの作ってくれたマジックアイテムで上手く対応できればいいのだが。
そしてダンジョンボスがどれぐらい下の階層にいるのだろう。
▽ ▽ ▽
俺の予想通り、余裕で進んだ。
ヒューズさん・ガッツさん・ゴーレ・ノコ・ライムはノリノリでモンスターを倒していった。
やはり過剰戦力だったみたいだ。
「なんか気合入ってません?」
「まあな。前回が初攻略だったからな。今回も必ず攻略してやるよ」
「そういえばそうでしたね」
ヒューズさんはヤルクダンジョンが初めてのダンジョン攻略だった。
「ガッツさんはダンジョン攻略したことは?」
「俺は2回あるぞ。できたばかりの小さなダンジョンだったけどな。まあダンジョンは気合が入るもんだ」
ガッツさんはそう言いながら肩を回した。
「ここも殲滅終了だな。さっさと下の階降りるぞ」
「はーい」
俺達はどんどん進んでいった。
地下10階のモンスターも殲滅した。
さすがに前回弟子達と雷獣の拳と来た時よりは時間がかかったが、この人数と考えるとだいぶ早い。
「問題は次の階だな」
「そうですね。バブルドームが効けばいいんですが」
「楽しみだ」
地下11階層を見ていないヒューズさんだけは楽しそうにしていた。
▽ ▽ ▽
「なんだこれ!」
ヒューズさんは叫んだ。
地下11階層は大量の石の槍が降っていた。
「なかなかめんどそうだな」
「そうですね」
石の槍は地面に刺さると消えた。
どういう仕組みなのか全く理解できなかったが、歩きにくくならないことが救いだった。
「バブルドームを使いましょう。もしダメでも雪以外ならライムが対応できるはずなんで」
「そうだな。やってみてくれ」
俺はバブルドームを取り出し、魔力を込めた。
すると筒の先端から半円の膜が出てきた。
膜はどんどん大きくなり、大きな傘のようになった。
「おお。なんかすごいな」
「狭いけど、この膜の下に居ればモンスターとも戦えるな」
「誰かがこの筒を持ちながら戦わないといけないですけどね」
話し合いの末、俺が筒を持つのが安パイという話になった。
「じゃあ進みますよ」
「「おう!」」
俺達は地下11階層を進んだ。
バブルドームは石の槍をどんどん溶かしていった。
「すげえ。余裕じゃねーか」
「ですね。石の槍の中だとモンスターも出ませんし」
「なんか拍子抜けだな」
「それだけうちのマデリンが優秀ってことです」
なぜか俺は自分のことのように誇らしくなった。
「天候は半日ごとに変わるから、次の天候が面倒なのじゃなきゃいいけどな」
「そうですね。今のところは何が降っても大丈夫そうですけどね」
なんの問題もなく、地下12階層に続く階段を見つけた。
「12階層の天気は普通であってくれ」
ガッツさんは手を合わせていた。
「そうだな。めんどい天候来るときつそうだもんな。さっさと降りて確認するぞ」
ヒューズさんはそう言うと階段を下りて行った。
地下12階層は木々が生い茂り、森が広がっていた。
天候は晴れ。
「おーなんか普通だな」
「そうですね。不安要素が消えてよかったです」
俺とガッツさんがそんなことを話していると、ノコが俺の脚をつついてきた。
「ん?どうした?」
ジジジジジジジジ!
ノコは森を見ろと言わんばかりに頭を動かしていた。
「ん?」
森を見てみるが何にもいない。
「ヒューズさん、ガッツさん。森に何かいます?」
「あ?今のところは居なそうだが?」
「ああ。気配はないな」
ノコは一体何を伝えたいのだろうか。
ノコは俺らに伝わってないと分かると、森の中に飛んで行った。
ノコはものすごいスピードで森を飛び回っていた。
「ノコー何してるんだ?」
ジジジ!
ノコは何かを察知しているのか?
そんなことを思っているとノコが俺らの元へ戻ってきた。
「何かあったのか?」
ジジ!
ノコは俺達の目の前で大顎を閉じた。
すると身体が切断されたサル型のモンスターが現れ、皮に変わった。
ドロップアイテムを『鑑定』で見てみると、ステルスエイプの皮だった。
「ステルスエイプ。たぶん身体を透明にできるモンスターです」
「まじかよ。俺とガッツが気付かないレベルかよ」
ガッツさんは頭を抱えていた。
「地下12階も地下11階と同じくらいめんどくさいな」
俺達は見えない敵に襲われないように構えた。
「全く気配がないですね」
「そうだな。それにサル型相手だと森はきついぞ」
「どう進みます?」
「うーん。とりあえず進んでみない何とも言えないな……」
俺達は悩んだ。
ジジジジジジジ!
ノコが俺の脚をつついた。
「ん?なんか良い案があるのか?」
ジジ!
ノコは俺らから少し離れた。
するとノコの周りにシモン隊とキリー隊とミッツ隊が現れた。
部隊招集を使ったみたいだ。
ジジジジジ!
ノコが何か指示を出すと、ノコ虫軍が森の中に散らばっていった。
シャシャ!
キリー隊は手前から木を切り倒していく。
チチチチチ!
シモン隊は周囲に糸を飛ばしていた。
ブンブンブンブン!
シモン隊の糸が不自然に引っかかっているところに針を飛ばしている。
すると針の刺さったステルスエイプの姿が現れ、地面に倒れていった。
「ハハハ!やばいなこれ。ノコ達が強いのは知ってたが、ここまで優秀だとはな」
ヒューズさんは爆笑していた。
「キリーが木の上からの攻撃を防いで、シモンが敵の位置を探し、ミッツがとどめを刺す。ノコ虫軍強すぎないか」
ガッツさんはノコ虫軍の凄さに若干引いていた。
俺も驚いた。
ノコ虫軍がフルメンバーで戦っているところなんて見たことがなかった。
まさかこんなに圧倒するとは思っていなかった。
ステルスエイプは次々とドロップアイテムになっていった。




