272.死亡準備①
翌日の朝、王女とオステオさんは足が6本の馬型のモンスターに2人乗りで帰っていった。
遠征の時に馬車を引っ張っていたモンスターだ。
オステオさんが言うには、そのモンスターは速さよりも持久力が凄いらしい。
「よし。あとは死ぬだけか」
「死んだフリな」
ヒューズさんに突っ込まれた。
「てかダンジョン3人で攻略って正気か?」
「はい。まあゴーレは連れていきます」
「他のテイムモンスターは?」
「うーん。フリードは申し訳ないけど留守番ですかね。ノコとライムを連れていきます。」
「レオはどうする?」
「レオはリリアンさんかクララさんについてもらった方がいいかもしれませんね」
「了解!ちょっと気合い入れないとな」
ヒューズさんは肩を回した。
▽ ▽ ▽
カラッカの店舗は一時閉店させた。
カラッカ商人ギルドのフィーゴ夫妻には何かあったら秘密の通路を使って逃げてきてくれと伝えた。
村の店は宿屋以外、俺達の死亡情報が流れたタイミングで閉店させるつもりだ。
それまではできるだけ営業できるようにする。
ショーグンにお願いして、日中から村の警備を任せている。
今日だけでソブラの依頼で来たと思われる冒険者が2パーティ捕まっていた。
捕まえた冒険者は冒険者ギルド行きだ。
俺はルークとライドンを連れていた。
「なんかライルと2人って久々だね」
「そうかもね。ルークはもう立派な冒険者だしね。訓練することもあんまりないしね」
「そういうことじゃないよ!まあいいや。ところでどこに行くの?」
ギャウギャーウ
「会わせたい人?が居るんだ」
「誰?」
「会ってからのお楽しみ」
俺達は秘密の通路を通り、ヤルクダンジョンの最下層についた。
「おお!でっかいドラゴンだ」
ルークとライドンはヤルクダンジョンのダンジョンボスのセイリューに驚いていた。
「久しぶりだねセイリュー」
「主。暇だぞ」
セイリューは寝ころびながら話していた。
「今日は紹介したい人とお願いがあって」
「紹介したい人?それはそこの子供と子龍のことか?」
「そう!えっ?ライドンって子龍なの?」
ギャウギャーウ
「ああ。ライトニングドラゴンの成龍なら、儂と同じくらいの大きさだ」
「そうなんだ」
俺はセイリューにルークとライドンを紹介した。
「それでお願いとは?」
「その前に聞きたいんだけど、セイリューって大きさ変えられる?」
「ん?可能だが」
そういうとセイリューが光り、ライドンと同じくらいのサイズになった。
「おーすごい」
「ライドンも同じことできる?」
ルークはライドンに問いかけた。
ギャウー
出来ないみたいだ。
「ルークよ。ライドンも成長すれば同じことができるぞ」
「本当?」
「ああ」
ルークはそれを聞くと嬉しそうにしていた。
「主よ。お願いとは?」
「もしかしたら、このダンジョンがある俺の村が襲われるかもしれないんだ。もし何かあったときは助けてほしい。ダンジョンの外に出れるようにしておいたから」
「主は戦わないのか?」
「俺がその場に居れない可能性が高いんだ。だからルークを紹介した。セイリューに力を借りなくてはいけないときはルークの指示を聞いてほしい。ルークが俺の代わりだ」
「え!」
ルークは驚いていた。
「主。ルーク。儂の力が必要な時は全力で助けよう。暇すぎるしのお」
「ありがとう。よろしく頼む」
俺とルークはセイリューに頭を下げた。
ライドンはもっとセイリューと話したいみたいなので、2人を置いてダンジョンを出た。
ダンジョンを出るとゴーレが待っていた。
「マスター。ガルスタンさん達が探しておられます」
「そう?じゃあ鍛冶屋に行くか」
俺はゴーレと共に鍛冶屋に向かった
▽ ▽ ▽
鍛冶屋につくと、ガルスタン達が待っていた。
「どうしたの?カイリ達の装備ができた?」
「いえ。ライル様にこれを渡そうと思いまして」
そういうとガルスタンが装備一式を渡してきた。
「ん?これは?」
「オイラの自信作、鬼将軍シリーズの【鬼速】です」
「鬼将軍シリーズ?」
「はい。ライル様専用に作った装備です。今もずっと普通の革装備を使ってらっしゃいますよね?」
「ああ、そうだね」
「ライル様には立派な鎧を着てほしいと思い、今回勝手ながら作らせていただきました。ぜひ着てみてください」
「ありがとう」
俺はもらった鎧を着てみた。
「まずは鬼速のブーツです。ケルバン達に手伝ってもらい、エルダートレントの繊維とグレートロケットシャークの革をベースに作っています。防御力もしっかりありますし、魔力を込めると脚力が上がるので移動や蹴り技などにうまく使っていただければ」
俺はブーツに魔力を込めてみた。
すると足が軽くなり、動かすと勢いが凄かった。
「いいね。使い方もすぐ慣れそうだよ」
「続いて、鬼速のズボンです。これはシモン様に協力いただきました。シモン布をベースにアイスドラゴンの素材を練りこんでおります。防御力だけではなく、微量ですが疲労回復の能力も付与してます。それに両ポケットにはジャグシェルの歯で作ったナイフが5本ずつ収納されてます」
ポケットが簡易的なマジックバッグのようになっているようだ。
手を入れると投げナイフが入っていた。
「そして鬼速のパーカーです。これは中に着る肌着やTシャツもセットです。防御特化になってます。ハングリーシェルの殻やロングホーンディアの角、ミスリルなどを織り交ぜています。フードを被ると認識阻害の能力が入ります」
「認識阻害はだいぶ助かるよ」
「最後に今回の目玉です。鬼速のグローブです。体術に向いているのはもちろんなんですが、各グローブに1アイテムを収納できます。なので右手に森帝のロッドを入れ、左手に盾などを入れておけば戦闘に役立つと思います」
「わざわざバッグから取り出さなくていいってことか」
「はい。その通りです」
ガルスタンは自信満々に言った。
「最高だよ。本当にありがとう」
「いえいえ。オイラだけでなく、マデリン達の協力があったのでできました。これからも鬼将軍シリーズを作ってもいいですか?」
「逆にお願いしたいよ。弟子達の装備も改造できそうだったらもっとしていいからね」
「はい!任せてください」
ガルスタンは嬉しそうだ。
「ライル様」
「どうしたのマデリン」
「旦那が浮かれていて紹介を忘れているものがあるんですが」
「ん?」
マデリンはブーツを4つ取り出した。
「これはダンジョンで雪が積もったら使ってください。マグマタートルのブーツです。周辺の雪を溶かしてくれる能力があります」
「おー助かるよ!ありがとう」
俺はブーツをバッグにしまった。




