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270.労う会

会議が終わり、準備ができるまでアース達は冒険者ギルドで軟禁することになった。

「俺は労う会までにやれることをやるかー」


俺は港を作るときに『小屋作成』で取得したワイン酒造所を作ることにした。

「王女関係の見返りで販売できる酒をご所望だったからな」


いざ作ろうとすると、『秘密基地』のマスを2マス使う大きさで驚いた。

畑を2マス潰し、ワイン酒造所を作成した。


「おーこんな感じかー」

レンガ造りのとてもおしゃれな建物が出来上がった。

「レンガの家とかこの村で初めてだな」


俺はゴーレと共に中に入った。


扉を開けて、中に入ると地面が光った。

「ん?『クリーン』かけられた?」

「はい。そのようです」

「菌とか微生物とかを排除したってことか」


内扉を開けて中に入ると、両サイドに大量の樽が置かれていた。

中央にはマジックアイテムと思われる機械が2つ。

「うわー。元の世界のワイン酒造って絶対こんなんじゃないんだろうなー」


俺は中を細かく見て回った。

大量にある樽には1つずつディスプレイが付いていた。

「これはなんだ?」

「そこでワインの熟成期間などを変更できます」

「え?」

声を発したのは見知らぬゴーレムだった。


「えーっと?」

「私はマネージャーゴーレムのエリムでございます」

マネージャーゴーレムってことは、温泉施設のバントーと同じ種類だ。


「ということはここの管理をしてくれるってこと?」

「はい。私とワイナリーゴーレム10体で管理致します。ただ、私達はこの酒造所から出ることはできませんので、材料の運搬や出来上がったものの運搬などはできません」

「それはたぶん大丈夫なはず」

俺はゴーレを見た。

「はい。問題ありません」


「では、こちらのワイン酒造所の使い方をご説明します」

エリムはそういうと中央のマジックアイテムに案内した。


「こちらはワインにしたい材料をいれる場所です。自動で材料を判別し樽に転送されます」

「え?ここに入れるだけ?」

「はい。そして樽に設置しているディスプレイで熟成期間やアルコール数や甘味や辛みや炭酸などを選択します。数時間もすればワインが完成致します」

「うわー。最初の方に作っておくべきだったな」

序盤から小屋作成にあったのに作らなかったことを後悔した。


「そしてこちらのマジック容器製造機で375mlと750mlのボトルを製造し、私達が出荷状態まで完成させます」

「材料ってブドウだけ?」

「いえ、大半の果物でしたら材料になります。販売されるようでしたら、ラベルのデザインをいただければ付けられます」

「おーすごい。とりあえずなんか作ってみるか」

俺がそういうとゴーレが口開いた。

「いまアカに果物を持ってきてもらっております」

「さすがゴーレ!」


▽ ▽ ▽


ワイン造りは大成功だった。


うちで作っている赤ブドウと白ブドウはもちろんだが、リンゴとレモンとイチゴと桃もワインにできた。

味見はしてないので、味の保証がない。

今日の労う会で試飲してもらおう。


「辛口と甘口はブドウのワインだけでいいかな。他の果物は甘口で」

「わかりました」

「あと作るのは750mlを多めで、持ち運び用で小さいのが好まれるかもしれないけど一旦様子見しようと思う」

「了解致しました」

エリムは頷いた。


「なんかすごい高級品を作りたいんだけど、なんかいい案ないかな?」

「オールドビンテージワインを作るのがいいと思います」

「なにそれ?」

「長年熟成させたワインです。赤ワインですと15年から30年、白ワインですと15年から25年です」

「それをここだとどれくらいで作れるの?」

「10日で作れます」

「よし!貴族向けに高級ワインを作ろう」

「わかりました。作る種類はマスターとゴーレ様と相談して変えていくように致します」

「よろしくね!材料は随時運んでもらうから。あとラベルのデザインも」

「はい。スパークリング用に砂糖もお願いします」

「う、うん。わかった!」

俺にはなんで砂糖が必要かわからなかったが、とりあえず了承した。


▽ ▽ ▽


労う会の時間になった。


レストランにはライル商会の料理人達とセフィーナさんとアイザックさんとマリーナさん。

マジックアイテム作りを頑張ってくれたガルスタンとマデリンとイルデン。

労う会を聞きつけてやってきた疾風の斧と雷獣の拳。

そして現在軟禁中のアース達だ。


「えー今日は食品部門の代表のブライズさんからの提案で、これから大変になる3人に新作料理で労う会になってます!ヒューズさん達もなぜかいますが、美味しい食事を堪能してください」

「居てもいいだろ!俺達は死んだふりして隠れて生活するんだから」

「そうだそうだ!てか軟禁中のアース達が居るほうがおかしいだろ」

ヒューズさん達はヤジを飛ばしてくる。


「いいんですよ!アース達はライル商会に所属するとこんなにいいことがあるって知ってもらわないといけないんだから」

「ここの料理を食ったら裏切れなくなるな」

「そうだな」

ヒューズさんもガッツさんも納得してくれたようだ。


「じゃあどんどん料理が出てくるので、みなさん楽しんでくださいね」

俺がそういうとトレスとターが料理を運び始めた。


▽ ▽ ▽


俺はアースを店の端に呼び出した。

「どうです?うちの料理は」

「いや、感動です。こっちの世界でビールやコーラ、それに醤油にうどんを味わえるなんて」

「どうです?ライル商会に尽くす気になりました?俺を殺しかけた罪の意識ではなく」

「そうですね。罪の意識はまだありますが、この村の状況を見たらライルさんについてくべきだなと思っていますよ」

「それはよかった。そろそろその話し方もやめてもらえます?」

「え?」

「ダンディな暗殺者の喋り方にしてください。その方がかっこいいし」

「わ、わかった」


俺はアースとこれからのことを話した。

「アース達は他に仲間がいるの?」

「拠点に獣人とエルフを10人程匿ってる」

「なるほど。この騒動が落ち着いたら、この村とその拠点を繋げるので安心してください」

「そんなこともできるのか?」

「はい。たぶん余裕です。他国で土地が買えればの話ですが」


俺はアースの能力について聞いてみた。


「私の身に着けてる装備は全部マジックアイテムなんだよ」

「それは凄いな」

「このコートのポケットはマジックバッグになっているから武器をそこから取り出せるし、このハットには弱いけど認識阻害が入っている。ほかの服にも身体能力上昇だったりいろいろ付いている」

「それとスキルと組み合わせて暗殺業を?」

「そうだね。影の中に入ったり、影を操ったりして戦う。ライルさんと戦った時に言ったように正面からの戦闘は苦手だね」

「なるほど。もし何かあったときは逃げ出せます?」

俺がそういうとアースはキョトンとした顔をした。


「この後の作戦のことかい?」

「はい」

「私達のことも心配してくれるんだね」

「当然です」

「たぶん大丈夫だよ。ライルさん達に捕まっても逃げ出せる自信があるよ」

「それならよかったです。相手の出方がわからないので、気を付けてくださいね」

「ああ、わかったよ」

アースは俺を見てにこっと笑った。


「ところで話は変わるんだけど、このレストランには米はないの?」

「えー!?この世界に米があるんですか!!」

俺は驚いて声を荒げた。


「え?ああ、あるよ。タラモーラ共和国の一部の地域には。まあ白米って感じじゃなくタイ米に近い感じだけどね」

「全然いいです!騒動が終わったら連れて行ってください」

「わかったよ」

俺はアースから最高な情報を得ることができた。


▽ ▽ ▽


俺はアースと話を終え、労うべき3人のテーブルへ行った。

「どうです?労う会は」

3人に問いかけるとマリーナさんは口を開いた。


「最高よ」

「それはよかったです。明日からもお願いしますね」

「ライルくんのむちゃぶりには慣れちゃったから大丈夫よ。それに私はカラッカの冒険者ギルドマスターだけ説得するだけだし」

「そうですよ。私とお兄様はお父様と王女への説明があるんですから」

セフィーナさんはうどんをほおばりながら言った。


「セフィーナ。もうこれは逃げられないんだよ。ライルくんに魅了された私達は」

「否定できないのが悔しいです」

セフィーナさんは悔しそうだった。


「3人にはお偉い方の対応を毎回やってもらってるので、本当に助かってますよ」

「ライルさんにお偉い方への対応をさせた方が胃に穴が開いちゃいそうです」

「そうかもしれないですね」

アイザックさんの言った通り、最近は何が沸点か自分でもわからないところでカチンとくる。

前世の影響なのか、子供になった影響なのか。


「いつもお世話になっているアイザックさんに追加のプレゼントです。プレゼントっていうか報酬なんですけどね」

俺は今日作ったワインを取り出した。


「え?これはまさか……」

アイザックさんは目を輝かせた。

「はい。約束の品の販売できるお酒。ワインです」


俺がそういうとガルスタンが近づいてきた。

「ライル様。これでいいですかね?」

ガルスタンの手にはオープナーが。

「ありがとう。急に頼んだのに対応してくれて」

「いえいえ」

「じゃあこれは約束のワイン10本ね」

俺はガルスタンにワインを渡した。


「ありがとうございます!」

ガルスタンはワインを抱えてテーブルに戻っていった。


「とりあえず飲んでみます?」

「は、はい。お願いします」

俺はオープナーでワインを開け、アイザックさんとマリーナさんのコップに注いだ。

2人は恐る恐るワインに口を付けた。


「美味しい!」

「本当だ。飲みやすいし癖がない!」

アイザックさんとマリーナさんは驚いている。


「要望通り、売りに出せるお酒です。それに……」

俺は作ったすべてのワインをテーブルに並べた。


「赤ワインと白ワインは辛口と甘口、その他果物で作ったワインもあります!」

「えー!すごい」

「それに、貴族用の高級ワインも今製作中です」

「素晴らしいです」

「これで頑張れそうですか?」

「はい!まあこれがなくても頑張りますけどね」

アイザックさんは嬉しそうにしていた。


とりあえず労う会は大成功したはずだ。



ガチャ!

レストランの扉が開いた。

「いい匂いがしますわ!あっ、セフィーナ!」

レストランに入ってきたのは、第3王女アイリーン様と黄盾騎士団団長のオステオさんだった。




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