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268.暗殺者アース

ロングコート男はナイフや針を投げたり、影を操ったり様々な攻撃をしてくるがギリギリ耐えている。


「そういえば聞いてなかったんですが、お名前ってなんですか?」

「私ですか?こっちではアースと名乗ってます」

「へぇー良い名前ですね」

「ありがとうございます」

アースはまったく手を止めない。


「なんで俺の存在を知ったんですか?この国に居なかったんですよね?」

「私の所に依頼が来たんですよ」

「やっぱり」

「やっぱり?」

「はい。依頼したのはガスター商会かソブラ領の関係者ですよね?」

アースの表情が少し曇った。


「なぜ知ってるんですか?」

「このカラッカ領はソブラ領から嫌がらせを受けてるんです。そして実行犯はガスター商会。そいつらの計画を2つほど潰したので、今この状況です」

「なるほど……」

アースは攻撃の手を止めた。


「詳しく話を聞いてから殺してもいいかもしれませんね」

「聞いてもらえるなら話しますよ」

「お願いします」


俺はアースに奴隷開放して従業員を雇っていることや鬼将軍と呼ばれている理由、ガスター商会やソブラ領とのいざこざについて話した。

話を進めると徐々にアースの頭の位置が低くなっていく。

最終的には地面に膝をつき、頭を下げて土下座スタイルになっていた。


「申し訳ありませんでした!」

アースは頭を地面にこすりつけている。

正直だいぶ年上のアースの土下座は見てられなかった。


「うーん。正直、許せないですよね。カラッカで死んでたかもしれませんし」

「はい。その通りです」

「さすがに同郷だからってお咎めなしはできません」

「わかっております。雰囲気に呑まれすぎていたのかもしれません」

戦闘中とのギャップがありすぎて、まじで見てられない。


「逆に謝罪として何をしてくれます?」

「え?」

「いやアースは俺に何をしてくれるの?」

「え、えーと」


ダンディな中年の土下座、それに脂汗。

さっきまでのかっこいい暗殺者はどこに行った。


「つ、仕えます!」

「え?」

「ライル商会では冒険者も雇ってるんですよね?雇われます!あ!!!!」

アースは何かを思い出したようだ。


「なに?」

「いや、私の仲間が疾風の斧のヒューズと雷獣の拳のガッツの所に行ってます」

「は?暗殺しに?」

「はい」

俺は頭を抱えた。


「アース。殺す相手の下調べはするんじゃなかったの?」

カラッカで下調べをしたなら疾風の斧と雷獣の拳が悪評なわけがない。


「いや、その。ライルさんを調べただけで完全に黒だと思って」

「はぁー。まああの2人には勝てないだろうけど、一応確認するわ」

俺はゴーレに頼んで、確認に行ってもらった。


「終わったか?」

なぜかヒューズさん達が学び舎の庭にやってきていた。

ヒューズさんは肩に気絶した男を背負っていた。


「え?なんで?」

「いやなんでって、家の横で戦闘してたらさすがに気付くわ」

「そうよ!謎の襲撃者もきたし」

学び舎の庭が疾風の斧の家とつながっているのを完全に失念していた。


「それでそこのおっさんは、こいつの仲間なのかなー?」

「たぶんそうです。この人は今は無害なんで、問題ないです」

「そうか。それで一体何なんだ?」

俺は暗殺者達がソブラ領から送られてきたものと説明した。


「はー。殺しの依頼まで来てるのか」

「はい。昼間話したように守りを固めるのもいいと思いますが、少しは何か行動した方がいいかもしれません」

「そうかもな。マヌセラもそろそろ落ち着きそうだし、攻め込むことも考えていいかもな」

「はい」

俺とヒューズさんは悩んだ。


すると、ゴーレがガッツさんと共にやってきた。

「おいおい!襲撃ってどういうことだ?」

ガッツさんは気絶した男性を引きづっていた。

俺はガッツさんに事情を説明した。


「なるほど。今日はもう遅いし、明日こいつらから話を聞こう」

「わかりました」

俺はガッツさんの提案に乗った。


「口裏を合わせられないように俺とヒューズとライルでそれぞれ尋問しよう」

「はい。夜の間は学び舎の庭で拘束しておきます。ゴーレとライムに見張りを頼んでおきます」

「承知しました」


ポニョポニョ

ライムは体を揺らした。


「レオにも見張りを頼んでおくわ」

「ありがとうございます」

そういうと疾風の斧とガッツさんは家へ戻っていった。


俺はアースの元に行き、耳元で話しかけた。

「俺が転生したことは内緒にしてるから、合わせてくれよ」

「わかりました。私も別世界から来たことは言っていませんので」

「明日お前の処分を決めるから、本当に仕えてくれるんなら条件はあるが前向きに検討する」

「わかりました」


俺はその場をゴーレ達に任せて家へ戻った。



▽ ▽ ▽


翌日、俺はアースを家に連れてきた。

部屋には俺とゴーレ、それにノコとライムもいる。


「とりあえず心配なので、あのシキとかいうモンスターの姿を出してもらえます?」

「わかりました。シキ、出ておいで」

アースがそういうと、シキは袖から出てきた。


「この子は私と一緒にこの世界に来たんです」

「え?じゃあモンスターじゃない?」

「いえ、こっちの世界に来てモンスターになりました。たしかステルスニシキスネーク」

「ニシキヘビだったんですね」

「はい」

シキはアースの足元で舌をちろちろしている。


「とりあえず、アースがこっちの世界に来てからの話を聞かせてください」

「わかりました」



アースからいろいろ話を聞いた。

アースの本名は三谷大地。大地だからアースと名乗っているらしい。

年齢は40歳。

自分の家と異世界が繋がっていて、最初はこの世界と元の世界を行き来していたらしい。

その時にエクストラスキル『影操の暗殺者』というスキルを手にした。


だけど異世界での生活にあこがれて、この世界で暮らすことに決めて旅に出たらしい。

冒険者になり活動をしていくうちに、この世界で他種族への差別や奴隷化などがあることを知った。

それがどうしても許せなく、世直しするつもりで暗殺業を始めたらしい。


冒険者ランクはCランク。

パーティはヒューズさんとガッツさんを襲った2人と組んでいる。

2人は獣人だそうだ。


アースが拠点にしているタラモーラ共和国は比較的平和な国だが、隣国のゼネバース皇国がエルフの国を壊滅させ、獣王国から獣人を拉致して他国に売っているらしい。

アースはゼネバース皇国で獣人やエルフを不当に扱うものを暗殺しているらしい。

暗殺業をする上で裏稼業との繋がりは必要で、その繋がりから今回の依頼が来たらしい。


依頼主はソブラ領主。

そして手引きをしたのがガスター商会。



「それでアースはどうする?」

俺はアースに今後について聞いた。


「話を聞く限りライルさんがやっていることが私のやりたいことそのものです」

「まあ人は殺してないけどね」

「す、すみません」

俺は冷たく言ったが、ゼネバース皇国で獣人やエルフを助けるためにはそうするしかなかったのだろう。


「俺にも元の世界の常識が残っている。奴隷や差別は胸糞悪い」

「はい」

「それに同郷の者が仲間に居てくれるのはとても心強い。本気で仲間になるのであれば、俺達を殺そうとしたことを水に流して、仲間として迎え入れよう思うけど」

「ぜひお願いします」

「おっけ。じゃあよろしくアース!」

「よろしくお願いします」


俺はアースと握手をした。




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