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267.依頼の内容

ヒューズさんの脅しは効いたみたいだ。

ライル商会スタンピードを依頼について吐くまでやらせると言ったら冒険者達はすぐに吐いた。


冒険者が受けた依頼はガスター商会からのものだった。

内容はライル商会への嫌がらせだった。どんな方法でもいいから活動ができないように嫌がらせしろという依頼。

驚いたのは自分達以外にも金に困った冒険者が大量にこの依頼を受けていたそうだ。


「これは…。やりにいってもいいですかね?」

「まだやめておけ」

イライラした俺にヒューズさんは気付いたのか、すぐに止めた。


「まだ依頼を受けてこの村に来る奴がいるなら、そいつら全員捕まえてからの方がいいだろ」

「そうですか?」

「ああ。まだ被害は村だけだが、カラッカの店舗やマヌセラにも嫌がらせする可能性があるだろ?」

「そうですね」

「そいつら全員に対応してからの方がいいんじゃないか?」

「わかりました」

俺はヒューズさんの説得で、全勢力をガスター商会に突っ込むのをやめた。


「とりあえず、俺とマリーナがこいつらから詳しい話を聞いておくから」

「わかりました。マリーナさん、村の防衛についてですけど」

「ん?どうしたの?」

「ショーグン達にお願いしてもいいですか?」

「ショーグンって、ライルダンジョンのボスよね?」

「はい」


俺は昨日、ショーグンとリビングアーマー達に治安維持のためにパトロールをしてくれるか聞いていた。

外に出れる設定にしているため、問題ないそうだ。


「わかったわ。みんなが混乱しないように、村にいる人達に通達するから1日待って。カラッカの街にも情報を流しておくわ」

「よろしくお願いします」

俺は頭を下げた。

マリーナさんとヒューズさんは冒険者を連れてギルドへ向かった。


▽ ▽ ▽


「はー。ヒューズさんに言われたけど、待つだけは嫌なんだよな」

「そうですね」

俺とゴーレは学び舎の庭で座って話していた。


「まあでも全勢力じゃまずいのは分かる」

「では、少数精鋭で行くのはいかがですか?」

「うーん」


疾風の斧を含めた全勢力でガスター商会と全面戦争ならいいが、疾風の斧なしで弟子達を連れていくのはなかなか危険だ。

俺は悩んだ。


すると庭に誰かが来た気配がした。

「ん?あれ?」

振り向くとそこにはカラッカのシモンキリー衣服店に居たロングコートの男だった。


ロングコートの男は俺の顔を見て首を傾げた。

「あれ?ライルさんですよね?この前とお姿が違いますね」


ロングコート男は俺の名前を知っている。

それにポゼッションドールを使った俺を理解している。


「というか毒は平気でした?」

「毒?」

ロングコート男はまた首を傾げた。


「あれ?効いてないのかー。じゃあそっちの正体不明の執事の方にしましょうかね」


俺とゴーレはすぐに距離を取って構えた。


バキッ

ゴーレから何か壊れるような音がした。

「え?」

ゴーレを見ると腕に穴が開いていた。

そしてゴーレはなにか透明なものを掴んでいた。

「マスター。これがポゼッションドールにダメージを与えた原因みたいです」


ゴーレが掴んでいるものを強く握ると、透明なものは姿を現した。

掴んでいたのはヘビのモンスターだった。

その蛇のモンスターは長く、ロングコート男の袖の中から出ていた。


「残念ながら、ゴーレムには毒は効きませんよ」

ゴーレはヘビのモンスターの頭を地面に叩きつけた。

ヘビのモンスターはロングコート男の元に戻っていった。


「なるほど。執事はロボットだったのか。だったら失敗覚悟でライルさんを狙うべきでした」


ん?俺は違和感を感じた。


「次はしっかり殺しに来ますよ。君みたいにエルフや獣人を不当に扱うのは許せないですからね」

そういうとロングコート男は地面に手を触れた。

すると大量の黒い煙が現れ、ロングコート男は居なくなった。


「なんだったんだ?」

「マスターを殺しに来た?」

「みたいだね。てかたぶん初めて会ったとき、ポゼッションドールじゃなきゃ死んでたかも」

「そうですね」


俺はゴーレの腕を見た。

「怪我は治せる?」

「はい。これくらいでしたらすぐ治せます」

俺はゴーレと共に家に戻った。


▽ ▽ ▽


ゴーレの腕は問題なく治った。


そして俺は違和感を確認するために真夜中に学び舎へ向かった。


ゴーレが絶対に付いて行くというのでしょうがなく同行させた。

そして毒対策でライムを服の中に隠している。


庭で数分待っていると、ロングコート男がやってきた。

「もしかして私をお待ちですか?」

「そうですよ。やっぱりずっと俺を監視してました?」

「はい。殺せるタイミングを探ってましたよ」

ロングコート男は無表情だ。


「やっぱり監視にはアンパンと牛乳ですか?」

「それは張り込みの定番じゃないですか?」

「やっぱり」

「あれ?」

ロングコート男は何かに気づいたようだ。


「ライルさん。あなたもしかして……」

「はい。転生してこの世界に来ました。元の世界では日本で暮らしてました。あなたもですよね?」

「ははは。なるほど、そうでしたか」

ロングコート男は笑った。


「同郷の者を殺さないといけないのは悲しいですね。シキ、あの執事の方はお願いしますね」

ロングコート男がそういうと袖からヘビが出てきて、巨大化した。


「じゃあライルさん、恨まないでくださいね」

ロングコート男は目の前からいなくなり、俺の背後に移動した。


「ワープ!」

俺はすぐに距離を取り、森帝のロッドを取り出す。

「ははは。あなたもすごい力をお持ちなんですか?」

「そんなことはないですよ」


ロングコート男はしゃべりながらナイフを投げてくる。

そのナイフを俺は必死に弾く。


「そういえば、俺がエルフと獣人を不当に扱うってどういうことですか?」

「ライルさんのお店、見せていただきました。私のこのコンタクトレンズは人の名前と種族が見えるんです」

「ほーそれは凄い」

「人間のふりをさせてエルフを働かせてますよね?」

「いやそれはうちの従業員なんで…」

ナイフで切り付けてくるのを防ぎながら話し続ける。


「私がこの世界にやってきて、初めて訪れた国はとても平和でした」

「そうなんですね」

「ですが隣国ではエルフの国を亡ぼしたり、獣人を拉致したりひどい行為が行われてたんです」

「それが一体なんなんですか?」

「私はそれが許せなかった。なので表は冒険者として働き、裏では暗殺業を始めました」

「なるほど。人を殺すのに慣れてるんですね」

「残念なことに慣れてしまいました。ですが殺すのはあなたのような悪人だけですよ!」

「ワープ!」

俺はロングコート男からの攻撃を避けて、距離を取る。


「俺が悪人っていうのはエルフや獣人を雇っているからですか」

「まあそうなりますね」

「みんな楽しそうに働いてますよ?」

「悪人はみんなそういうんですよ」

「ははは。まあそうですね」

「それに私は悪人以外殺さない。ちゃんと下調べをするんです」

「だとしたら下調べ不足ですね」

「鬼将軍が何を言ってるんですか」

「なるほど」

カラッカで下調べをしていたら、俺の悪評のような話を聞いてもおかしくない。


「殺したと思ってたのに生きてることに驚きましたよ。村に確認に来たら子供になってるんですもん」

「ははは。こっちが本当の姿なんですよ」

「まあ転生したということなら、納得です」

「そうですか」

このまま防いでいても埒が明かない。

戦うしかないな。


「いったん落ち着いてもらって、うちの従業員の話を聞いてもらいましょうかね。エアアーム!」

俺はエアアームでロングコート男を殴り飛ばした。

だがうまく後ろに飛んで衝撃を減らされた。


「ウィンドカッター!」

「おお!魔法まで使うんですね」

ロングコート男はウィンドカッターをナイフで弾く。


「正面からの戦闘はあまり得意じゃないんです。なのでみなさんの影をお借りしますね。シャドウドール」


俺とゴーレの影が動き出し、立体的になり目の前に現れた。

「自分と戦うのはどうです?シキ、君の分の影も出しておくね」

そういうと蛇のモンスターの影も立体的になって現れた。


俺の影は俺と同じように棒術で攻撃してくる。

ロングコート男は隙を狙って、後ろに回り込むようにしてくる。


「どうです?」

「ピンチですね。普通なら」

「ん?」

「ライム!飲み込め」

服の中からライムが飛び出て、俺の影とヘビのモンスターの影を飲み込んだ。


「うーん。なかなか大変そうだ」




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