266.バブルドーム
今日はマデリンがうちにやってきた。
「めずらしいね。装備ができたの?」
「そうです。装備がなかなか難しく、その代わりのマジックアイテムなんですが…」
マデリンは筒状のマジックアイテムを取り出した。
「これは?」
「これはライムちゃんに粘液をもらって作ったバブルドームです」
「バブルドーム?」
「はい。風魔法を使ってライムちゃんの粘液で大きなドームを作ります。エンペラースライムの粘液なので、雨や毒液や鉄球などは溶かしてくれます」
「え!凄いじゃん」
俺が褒めるとマデリンは申し訳なさそうな表情になった。
「ですが。ライムちゃんの粘液なので、ドームを維持するのがものすごく大変でこのマジックアイテムの耐久がどれだけ持つかがわかりません」
「なるほど……。タイムリミットがあるってことだね」
「はい…。それに6個しか作れませんでした」
マデリンは申し訳なさそうだ。
「まあこれで一回チャレンジしてみよ」
「すみません」
「全然だよ!こんなすごいのをありがとう」
「ありがとうございます」
「これってどれくらいの大きさのドーム?」
「半径5mくらいですサイズです」
「了解!」
俺はマデリンからバブルドームを預かった。
▽ ▽ ▽
「ダンジョンの攻略許可が早く出ないかなー」
俺はレストランに向かおうとすると、数台の馬車が村に入ってきていた。
「やっぱり人が増えてきたな。対策もできそうだし、もし悪化するようなら導入だな」
レストランに入るとそれなりににぎわっていた。
「ライルくん、ごめんね。少し混んでるけど空いてるところに座ってくれる?」
ブライズさんは調理場からそう言った。
「はーい」
俺はカウンターに座り、トレスにオーダーを伝えた。
数分待つと、すでにメニュー化してあるうどんが運ばれてきた。
俺はそれを一口食べた。
「うん。さすがブライズさんだな。お客さんに提供できるレベルになってる」
美味いうどんが食べれてることに感動し、俺は食事を進めた。
俺はうどんを食べ終わると、レストランに新しいお客さんが4人入ってきた。
たぶん先ほど来た冒険者だろう。
「おい!はやく注文聞きに来い!」
「はい!少々お待ちください」
ブライズさんはいつも通り対応した。
「舐めてんのか?この村のダンジョンを攻略しようと来てやった冒険者にその態度か?」
ドン!
冒険者の1人が椅子を蹴り飛ばす。
他のお客さんに当たりそうになったのをターが身を挺して防いだ。
「気持ち悪いゴーレムだな」
冒険者はターを蹴った。
ターはバランスを崩し倒れた。
さすがの俺も黙って見ていられなかった。
「ゴーレ、やるよ」
「わかりました」
「店を壊したくないから、外に出すよ。壁は俺が直すから思いっきりね」
「わかりました。いまライムとノコがこちらに向かってます」
「え?」
「一応呼んでおきました」
「ははは。やりすぎないようにしなくちゃ」
俺とゴーレは冒険者に向かっていった。
「お兄さん達はダンジョンを攻略してきたの?」
俺は冒険者に話しかけた。
「なんだガキ?」
この反応ってことは、カラッカの冒険者じゃない可能性が高いな。
「お兄さん達のランクは?」
「あ?関係ないだろ。邪魔すんな!こっちは依頼を受けてんだ」
「依頼?詳しく話聞いた方がよさそうだね」
ゴーレは冒険者2人を掴み壁に投げ飛ばした。
壁は破壊され、冒険者2人は外に投げ出された。
「あ?何してんだ?てめぇ」
空いた穴から外に出ようとするゴーレに掴みかかろうとする。
「秘密基地!」
俺はすぐに壁を直し、冒険者達は壁にぶつかった。
「痛って!な、なんだこれ?」
俺はすぐに冒険者に近づいた。
「エアアーム!」
エアアームで2人を掴み、先ほど直した壁に本気で投げ飛ばした。
「は?なんだ?」
冒険者は壁を破壊しながら外に吹き飛ばされた。
「秘密基地!」
素早く壁を直した。
俺は倒れたターの元に行った。
「大丈夫?」
ターは頷いた。
「ブライズさん」
「あ、なんだい?」
ブライズさんはいきなり話しかけられ驚いていた。
「今いるお客さんのお代は無しで、あと好きな料理を1品プレゼントしてあげて」
「ああ!わかったよ」
レストランではなぜか拍手が起きた。
「おい!ここが鬼将軍の店って知らないやつもいるんだな」
「俺初めて見たけど恐ろしいな」
なにか噂話が聞こえてきたが、俺は気にせず外に出た。
▽ ▽ ▽
外に出ると、ライムが4人を拘束していた。
「さすがにゴーレが投げた方は気絶してるね」
「はい。申し訳ございません」
ゴーレは頭を下げた。
「大丈夫。てかこの人達から話を聞きたいんだけど、どうしようかな?」
ライムの身体の中で拘束されているせいか、俺が投げた2人もほとんど意識が無くなっていた。
「うーん。前々から考えてたライル商会スタンピードするか」
「ライル商会スタンピードですか?」
「うん。光剣の輝きみたいなやつが出たときのお仕置きをずっと考えてたんだよね」
「なるほど」
「テイムモンスター達全員学び舎集合で!」
「承知しました」
ゴーレは急いでみんなを呼びに行った。
▽ ▽ ▽
目が覚めると俺の目の前にはいろんな種類のモンスター。
そしてそのモンスターの中心には飯屋で俺に絡んできたガキが居た。
「うっ!なんで動けないんだ?」
俺の身体は縛られていた、仲間も同じように縛られていた。
「お兄さん!」
ガキが話しかけてきた。
「あそこ俺の店なんですよ。それに蹴り飛ばしたゴーレムも僕のなんです」
「そ、それがどうした」
「ぶっちゃけお兄さん達をここで殺してもいいと思ってるんです。人に迷惑をかけるやつは、反省できないじゃないですか」
ガキの目が怖かった。俺達は何も言えず黙ってしまった。
「それでお兄さん達にはチャンスをあげます」
「チャンス?」
「はい。さっきお兄さんが言っていた依頼について話すか、うちのテイムモンスターを全員倒したらお咎めなしで返してあげますよ」
「は?」
俺が見る限り、ドラゴン型に白いストーングリズリー、それに虫型のモンスター複数。
とても俺らじゃ勝つことはできない。
だからといって依頼のことを話したら、俺らは殺される。
やるしかないのか?
「わかった。やってやる」
▽ ▽ ▽
冒険者達はライル商会スタンピードを受け入れた。
だが第1ウェーブで倒れてしまった。
マシュー・イムニ・ロズに装備を壊され、ボコされて終わった。
ちょうど最後の1人が倒れたタイミングでヒューズさんとマリーナさんを呼んできてもらった。
学び舎にゴーレに連れられ2人がやってきた。
「ん?どういう状況なの?」
「また何かしたのか?」
「暇だったんで、冒険者の髪をノコとキリーに切ってもらってたんですよ」
「そのことじゃないわよ。なんで学び舎で冒険者が倒れてるの?」
俺はさっきまでのことを2人に説明をした。
「はー。何やってるの?」
「ほんとにお前は面白い事するな」
マリーナさんは怒って、ヒューズさんは爆笑している。
「まあそういうことで、この冒険者達が何か依頼されてこの村に来たみたいです。ダンジョン攻略の依頼で人呼んでたりしてないですよね?」
「ないわ」
「でもライル商会の物を買って来いって依頼ならあり得るけどな」
「それはないです。この人達はダンジョンを攻略しに来てやったと言ったのに、そのあと依頼がどうのこうのと言ってたんで」
「そうか。じゃあやっぱり直接聞くしかないな」
ヒューズさんは冒険者の1人を叩き起こした。




