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264.シモンキリーの冬服

今日は母さんに捕まって裁縫部門の作業場にいる。


「ライル、どんどんお願いね」

「がんばるよ」


昨日家に帰った後に母さんに冬服の話をしたのが原因だった。

何個かデザインを考えてと言われ、今に至る。


「疾風の斧がダンジョン攻略で使ったベンチコートとか、パーカーの裏地を厚くするとかじゃだめだもんね」

「そうねー。新しいのがいいわね」

「うーん」


悩みながらもセーターやマフラー、耳当てやニット帽の絵を描いた。

俺の下手な絵をアリソンがしっかりとしたデザインに落とし込んでいってくれている。

ニットについては何となく口頭で伝えると、マリーさんは目を輝かせた。

多分編み物みたいにやれば作れるんだよな?


「冬服かー。思いつかないなー」


俺は前世で引きこもっていたことを恨んだ。


「母さん。ちょっと外出てくる!」

「どうしたの?」

「ちょっとデザインが思いつかないから、気分転換してくる」

「わかったわ」


俺はそういって作業場を出た。


▽ ▽ ▽


俺はゴーレと共にカラッカの街に来ていた。

まだ街には王女達がいるらしいので、ポゼッションドールで20代の姿になっている。


「ライルもライもダメなのは困っちゃうね」

「そうですね。今のお姿の時はなんとお呼びしましょう」

「そっかマスター呼びはだめだもんね。うーん。イルかな?」

「わかりました。イル様」

「とりあえず、うちの店の様子を見ながら、街を散策しよう」


俺とゴーレはカラッカの店へ向かった。



店はだいぶ繁盛していたが、鬼将軍の宝物庫だけはお客さんが居なかった。

まあ高級品だからしょうがないのだろう。

イルデン曰く、カラッカ近辺に住んでいる貴族が買いに来たりしていて、まったく売れていないわけではないらしい。


「シモンキリーはお客さんが多いな」

シモンキリーの店内には、すでにシモンキリーの服を着ている人も多かった。

みんなが購入しやすいように単価を低めに設定しているのも影響しているのだろう。



「ん?あれは?」

店内にロングコートにハットを被っている中年男性がいた。


「ロングコートとかこの世界にあったのか」


俺がつぶやくと、その中年男性と目が合った。

距離があるから、俺の声は聞こえていないはずだが。


中年男性は俺に会釈をし、店を出て行った。

「なんだったんだ?」

俺は違和感を感じたが、原因がわからなかった。



「ゴーレ、帰ろう。何個かデザインも描けそうだし」

「わかりました。街は見に行かなくてよろしいんですか?」

「時間帯がちょっと微妙だけど、市場だけは見ていくか」

「わかりました」


俺とゴーレはシモンキリーの店を出て、市場に向かった。



市場には目新しいものはなかった。


「うーん。やっぱり時間が遅すぎたかもねー」

「そうですね。どうしますか?帰りますか?」

「帰ろうか」

「承知致しました」


俺とゴーレが家に戻ろうとすると、俺の意識が飛んだ。



目を開けると鳥籠の中に居た。


「あれ?なんでだ?なんかダメージ食らってたのか?」

鳥籠の外からゴーレが覗き込んできた。


「マスター!大丈夫ですか?」

「うん。大丈夫そう」

「いきなりポゼッションドールの姿が戻って驚きました」

ゴーレは少し焦った様子だった。


「なんでだろね?ダメージ食らってたってことかね?」

「どうなんでしょう」

ゴーレも原因がわからないみたいだ。


「どうします?このまま帰りますか?」

「あー。王女の関係者に会いたくないし、このまま連れて行ってもらおうかな?」

「わかりました」


俺は鳥籠に入ったまま、ヤルクの村へ戻った。


▽ ▽ ▽


俺は村に戻り、ロングコートやPコートの絵を描いた。


「こんなのはどう?」

「凄い良いわ。アリソン、すぐに清書おねがい」

「わかりました」


アリソンはすぐに俺の絵の清書を始めた。



「明日はダンジョンで特訓だから、いろいろ準備しておくか」

俺がダンジョンに向かおうとするとゴーレが止めた。


「マスター。レストランで揉め事が起きてるようです」

「え?」


俺はすぐにレストランに向かった。


▽ ▽ ▽


「おい!なんだよ!」

レストランに到着すると、冒険者らしき人がヒューズさんに取り押さえられていた。


「ヒューズさん。大丈夫ですか?」

「ああ。こいつが難癖付けて、レストランで暴れていたからとらえておいた」

「難癖?」

「食事にゴミが入ってたから、金を払わないっていうんだ」

「え?いやそれはうちの落ち度の可能性も…」


ヒューズさんは俺に石を見せてきた。


「この石がパスタに入る可能性はないだろ?」

「ああ。それはないですね」

「とりあえずはこいつを冒険者ギルドに連れていく」

「わかりました。お願いします!」


ヒューズさんは暴れていた冒険者を連れて行った。



俺はすぐにレストランに入ると、暴れていたという割には何も壊れてなかった。


「ブライズさん、大丈夫でした?」

「ははは。驚いたよ」

ブライズさんの様子はいつもと変わらずだった。


「驚いた。こんなに冷静な自分に」

「え?」

「ライル君やフリード達、疾風の斧やダンジョンのモンスター達。ここ最近関わってきた人達が衝撃的すぎて、あれくらいの冒険者だと怯えなくなってしまったよ。まあ戦ったりはできないけどね!毅然な対応ができたよ」

「ははは。まあそうですよね。いつものメンバーの方が強いですし、迫力ありますもんね」

「昔なら怯えてただろうから。そこが一番驚いたよ。まああと、自分の料理に自信があったからね。ゴミなんか入って提供するわけないからね」

「なにも壊れてないですか?」

「うん。大丈夫」


とりあえずブライズさん達もレストランも大丈夫そうだ。



「冒険者が増えて、少し治安が悪くなってるのかな?」

「そうかもしれません」

「対策を考えないとなー」


俺は村の治安維持方法を考えた。




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